平成10年1月20日
東京電力株式会社
すでにお知らせしましたとおり、当社・福島第二原子力発電所1号機
(沸騰水型、定格出力110万キロワット)は、12月5日、制御棒パターン
調整を行っていたところ(出力約97万キロワット)、制御棒1本に動作不
調が発生しました。そのため原子炉を手動停止し、制御棒および制御棒駆
動系の点検および調査を行ってまいりました。(12月5日発表済)
動作不調の生じた制御棒を点検した結果、制御棒ブレード4枚のうち1
枚の一部に膨れがあり、燃料集合体のチャンネルボックスと接触していた
ことと当該制御棒ブレードに微小な割れ等が確認されました。(12月15日
発表済)
(原因について)
現地における詳細な調査と試験施設にサンプルを持ち込んで調査を進め
た結果、制御棒動作不調の原因は、以下の通りと推定されます。
1. 当該制御棒のブレードは、製造時に先端部の曲げ加工や溶接、また
ブレード全体の曲がりの矯正加工を行っております。これにより、局
部的な加工ひずみや残留応力がブレード上下の両端部付近に生じてい
たと考えられます。
このため、運転中に中性子照射量の比較的多いブレード上部に、中
性子の照射により誘発される応力腐食割れ(IASCC)が発生し、
ここからブレード内に炉水(蒸気)が入り込みました。
2. 制御棒ブレード内に入り込んだ水は、中性子吸収材(ボロンカーバ
イト、ハフニウム)と化学的に反応するなどして、内部の膨張をまね
き、新たにIASCC(二次的な割れ)を生じました。
3. その後、原子炉停止時にブレード内に浸入した炉水とボロンカーバ
イト等との反応で生じた化合物が、原子炉の起動の過程で固まり、ブ
レード内が閉塞され、発生した気体が内部に閉じこめられる結果とな
り、ブレードを膨らませました。
4. ブレードが膨れたため、隣り合わせにある燃料集合体のチャンネル
ボックス(下部タイプレート付近)と接触してしまい、制御棒の動作
が不調になりました。
(対策について)
今回の対策としては、不具合の発生した当該制御棒及び同型の制御棒を、
不具合が生ずるおそれのない新品の制御棒に取り替えることといたします。
加えて、新型の制御棒の導入に当たっての品質保証活動を強化することと
しました。また、接触痕のあった当該チャンネルボックスも取り替えるこ
ととします。
また、今回の制御棒の膨らみについては、起動後間もない段階で発生す
ること、さらに、割れや膨らみについては、中性子の照射量に依存するこ
とが明らかになりましたので、運転中の他のプラントでは、同型の制御棒
も正常に動作することを確認しておりますが、今後、中性子を受ける量を
抑え、割れや膨らみの進展を防止するため、同型の制御棒は全て全引き抜
き状態で運転することといたしました。
なお、運転中の他のプラントの同型の制御棒については、至近の定期検
査で、同様に取り替えることとします。
また、資源エネルギー庁による国際原子力事象評価尺度(INES)
暫定評価では、1とされております。
以 上
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