平成8年9月2日
東京電力株式会社
当社は、平成元年7月から、翌日や当日の最大電力をコンピューターで
予測して日々の需給運用に役立てておりますが、このたび、新たな統計要
素を組み込んだ、高精度の「改良型最大電力予測支援システム」を開発し
、今年度より活用しております。
当社の最大電力は、夏の冷房需要を中心として大きく伸び続けており、
平成2年からの5年間で埼玉県と山梨県をあわせた全地域の需要に相当す
る935万 kW増加しています。猛暑時には、最大電力の4割近くを家庭用や
業務用のエアコンなどの冷房需要が占め、1℃の気温の変化で150~160万
kW(大型の発電機1~2基分)もの需要が変動しますので、電気を安定的
に効率よくお送りするためには日々の最大電力をできるだけ正確に予測し
、的確に電力の需給運用を行うことが欠かせません。
これまでの需要予測支援システムでは、主に予測日直前の気象と電力需
要のデータを使って重回帰分析を行っておりましたが、このたび開発した
システムでは、より精度を向上させるため、予測日直前のデータの他に同
じ時期の過去4年間のデータを使って重回帰分析を行うことといたしまし
た。このほか、予測日と気象状況や曜日が似ている過去のデータを検索し
、その需要実績から予測を行う方法など、新たに3つの予測方式を加え、
これにより算出される9つの予測値をもとに多様な視点から総合的に最大
電力の予測を行うことといたしました。
これにより、予報気象が的中した場合、従来のシステムに比べより高い
予測精度(平均誤差率:約1.6%→1.2%)を達成できる見通しとなりまし
た。
このシステムは、次のような特長をもっています。
*4種類の予測方式から、9つの予測値を算出する。
1)重回帰予測…電力需要と気象(気温、湿度)の関係を過去のデータか
ら解析して予測する手法。従来までは、予測日の直前15
日間の気象と電力需要のデータを使っていたが、改良型
のシステムでは、より精度を向上させるため、同じ時期
の過去4年間のデータを使うこととした。(予測値数2
)
2)代表日前日予測…予測日前日の需要実績および気象データ(気温、湿
度)を使って、予測する手法(予測値数1)
3)代表日類似日予測…予測日と気象状況(気温、湿度、天候)や曜日が
似ている過去4年間のデータを検索し、その需要
実績から予測を行う手法。(予測値数3)
4)需要比予測…過去4年間の、朝8時の需要と同日の最大需要の関係か
ら、予測日当日に需要を再予測する手法。(予測値数3
)
*データを時系列グラフや相関グラフで表示でき、予測結果を理解しやす
い。
*実用性に優れ、ボタン一つで操作が可能である。
現在、日々の需要予測では、長年の経験を積んだ担当者が、このシステ
ムで算出された予測値を参考に、経済・社会動向などを勘案したうえで決
定しておりますが、今後もこれら担当者がより精度の高い予測をだせるよ
うシステムに改良を加えてまいりたいと考えています。
また、発電機の効率運用に役立つ一週間単位の需要曲線を予測する手法
や、それに基づく需給運用計画の手法等についても研究開発を進め、電力
の安定供給に努めつつコストダウンにも実効を上げてまいりたいと考えて
おります。
以 上
(注)実際の最大電力の予測値は、このシステムで算出された予測値に加
え、経済、社会などの動向を考慮したうえで最終的に決定しています
。(予測は朝夕2回実施しており、前日の夕方に翌日の最大電力を予
測し、さらに当日の朝にも当日の最大電力を再予測します。)
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