-蓄熱式空調システムの普及に向けて、経済的かつ効率的に蓄熱槽を施工する新工法-
平成8年4月25日
東京電力株式会社
鹿島建設株式会社
当社は鹿島建設株式会社と共同で、蓄熱式空調システムで使用する蓄熱
槽を経済的かつ効率的に施工できる「断熱材兼用コンクリート型枠工法」
を開発し、このたび鹿島建設株式会社が施工を担当する(財)電力中央研究
所 我孫子研究所 生物科学研究棟(千葉県我孫子市)の工事に初めて適用い
たしました。
蓄熱槽の建築工事は、従来、南洋材の合板を型枠に用い、そこへコンク
リートを流し込んで固形後、型枠を取り外し、断熱防水工事を実施してお
ります。このたびの新工法は、工場で生産された規格品であるフォームポ
リスチレン製(注)のブロックパネルを支持パイプで固定させ型枠
として用い、コンクリートを流し込んだ後、パネルをそのまま断熱材とし
て使用するものです。このため、従来工法で型枠工事とは別に施工してい
た断熱材の工事が不要になるとともに、型枠を外す作業も省略されます。
また、規格化された材料を使用することにより、現場では単純な組立作業
が中心となり、これまで行っていた型枠の寸法の測定や加工などといった
複雑な作業が不要になります。これらにより、従来工法と比較して約30%
の作業の省力化と、約10%の工事費の削減が可能になります。
さらに、本工法により、簡便化・規格化が図れることから、作業員の能
力の個人差に影響されることなく、質の高い蓄熱槽をどこでも同じように
建設することが可能となることも特徴の一つです。
蓄熱式空調システムは、ヒートポンプと蓄熱槽を組み合わせた空調シス
テムで、割安な夜間電力の利用や設備容量の低減に伴う契約電力の軽減な
どによりお客さまのメリットになるとともに、電力の負荷平準化にもつな
がるため、当社では、従来から当システムの普及拡大を図ってきておりま
す。当システムの設置にあたっては、蓄熱式以外の空調システムに比べる
と熱源機部分のコストは低減しますが、一方では蓄熱槽の建設費用が必要
となります。このたび開発した新工法は、この蓄熱槽の建設費の抑制を目
的として開発したものです。
当社では、こうした工法の開発が、蓄熱式空調システム普及の一助にな
るものと期待しております。
以 上
(注)フォームポリスチレン製
ビーズ状に発泡させたポリスチレン樹脂を金型に詰め、加熱して二
次発泡させた製品。
主な用途としては、
・工業用の保温材、保冷材
・冷蔵庫の周囲に貼る断熱材
・クーラーボックスの周囲に貼る断熱材
・鮮魚等の氷漬けに使用する断熱箱
・電化製品等の緩衝材
・鮮魚(刺身)のトレイ など
<参 考>
[断熱材兼用コンクリート型枠工法の概要]
本工法は、コンクリート型枠としてフォームポリスチレン製のパネル
(寸法が幅1,000mm×高250mm×厚100mmのブロック形状)を用い、それを外
さずにそのまま断熱材として用い、表面に塗膜防水施工を行い蓄熱槽を構
築するものです。建物の地下スペースを利用した蓄熱槽の建築仕上工事
(断熱・防水工事)の合理化、工事費の削減を目指して開発された工法で
あり、合板型枠でコンクリートを打設し、コンクリート強度発現後に合板
を外して断熱材を取り付ける従来からの工法とは大きく異なるものです。
[本工法で使用する部品(材料)の概要]
*型枠用パネル :フォームポリスチレン製
幅1,000mm×高250mm×厚100mm
*ランナー :鉄製 幅100mm×高50mm
*型枠支持パイプ:VP(塩化ビニールパイプ) 30A
*セパレーター :鉄製連結棒(市販品)
*プラリング :ジュラコン(ポリアセタール樹脂)ボード間接続用リング
*塗膜防水材 :無溶剤型ウレタン樹脂(吹付施工)
[開発体制の概要]
1.開発主体 <当開発での役割>
○東京電力株式会社
<試作モデルによる施工性の比較検討,経済性評価>
・所在地:東京都千代田区内幸町1-1-3 TEL 3501-8111
・社 長:荒木 浩
○鹿島建設株式会社
<型枠断熱防水工法のコスト・作業工程の低減策の検討,材質の断
熱性能・強度等の検討>
・所在地:東京都港区元赤坂1-2-7 TEL 3404-3311
・社 長:宮崎 明
2.開発期間
平成6年8月~平成7年3月
3.開発費用
約2,900万円(東京電力負担分)
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