-500キロワットNaS電池の試験開始- 平成7年8月28日
東京電力株式会社
当社は、昭和59年度から日本ガイシ(株)と共同して、電力貯蔵密度が
鉛電池に比べて約3倍と高く、コンパクトな「ナトリウム-硫黄電池」
(NaS電池)の研究開発を進めておりますが、本日から、川崎電力貯蔵
連系試験場にて、500キロワットNaS電池を実際の配電線に系統連系した実証
試験を開始しました。
NaS電池は、コンパクトに設置することができるという特徴を活かし、
都市部などの需要地、もしくはその近傍に設置して深夜に充電・貯蔵し、
昼間のピーク時などに発電(放電)を行います。いわば、都市部など需
要地において、揚水式水力発電所と同様な機能を持つことができるように
なったといえます。この電池が実用化されれば、昼夜間の格差が大きい電
力需要の平準化に役立ち、電力設備の効率的運用、設備投資の抑制につな
がります。
今回実証試験を開始したシステムは12.5キロワットのモジュール電池40台と
交直変換装置等で構成しています。1台のモジュール電池には単電池(約
300キロワット)を336本、40台のモジュール電池合計で13,440本の単電池が収
納されています。この設備は、電力会社が変電所等に設置し、一般の電力
需要に応じて運転することを想定したシステムで、主として負荷平準化機
能を検証するため、昼間に500キロワット時間の放電を行い、充電は電力需
要の少ない夜間に10時間程度行います。
なお、NaS電池システムの容量や設置スペースは、モジュール電池数
の増減により、柔軟に変化させることができます。このため、将来、本格
的にこの電池を変電所等に設置する場合には、個々の場所の設置スペース
や負荷の状況に応じて、適切なシステム設計を行うことができます。
今後は、電池・システム機器自体のコスト低減を図る技術改良に加え、
お客さまご自身にも設置していただくなど、幅広い使用形態に柔軟に対応
できるよう、50キロワット、200キロワット、250キロワットの各種電池シ
ステムの実証試験も順次行い、平成10年度頃の実用化を目指しています。
資料-1
開発体制等 - 開発主体<当開発での役割>
- 東京電力株式会社
<開発目標・仕様の決定、実証試験の実施、成果の評価>
・住所:〒100 東京都千代田区内幸町1-1-3
・電話03-3501-8111
・社長:荒木 浩
- 日本ガイシ株式会社
<開発仕様にもとづいた単電池、モジュール電池の開発>
・住所:〒467 愛知県名古屋市瑞穂区須田町2-56
・電話052-872-7181
・社長:柴田 昌治
- 実用化目標時期:平成10年度頃と想定
- 建設費 約15億円
- 実証試験場所
川崎電力貯蔵連系試験場
〒210 神奈川県川崎市幸区柳町68-2
<参 考> - これまでの研究開発状況
・第一・二期開発段階(平成2年~)において、工場での試作・試験に
加え、単電池(約60ワットアワー)を1,320本組み込んだ「10キロワット
モジュール電池試験」を行い、つづいて、1台に同じ容量の単電池270本を組
み込んだモジュール電池を25台組み合わせた「100キロワット電池システム
の試験」を実施。
・第三期開発段階(平成4年~)においては、平成4年12月から、実用
化を想定した原型機として、単電池(約300ワットアワー)を324本組み込ん
だ12.5キロワットモジュール電池を4台組み合わせた「50キロワット電池」を系
統に連系した試験を実施。
- NaS電池の特徴
NaS電池は、負極に「ナトリウム」、正極に「硫黄」を用い、両極
のイオン電導の働きをする電解質に「ベータアルミナ」を用います。こ
のベータアルミナは、ナトリウムイオンのみを通すファインセラミック
スの一種で、高性能で耐久性に優れた固体電解質です。また、通常の鉛
電池は、両極が「固体」、電解質が「液体」となっていますが、NaS
電池はこれと逆で、両極が「液体」で電解質は「固体」となっています。
- この結果、NaS電池は鉛電池に比べて、
- a.電池体積あたり約3倍ものエネルギーを蓄えることができ、コンパク
- 性に優れた電力貯蔵システム。(活性度の高いナトリウムと硫黄を
- 使用)
- b.電解質が固体のため自己放電がない。
- c.電気抵抗の小さなベータアルミナを使用するため電池の充放電効率が
- 高い。(90%程度、一方鉛電池は80%程度)
- d.充放電操作は、高温(300~350℃)で行う。
- などの特徴を有するエネルギー密度の高いコンパクトな電池です。
以 上 |