二酸化炭素(CO 2)による「蓄冷冷凍システム」の開発について
ドライアイスを使った超低温蓄冷の実用システムを開発。
マイナス56℃もの低温蓄冷実用技術は世界初。
平成7年6月26日
東洋エンジニアリング株式会社
東京電力株式会社
東京電力(株)と東洋エンジニアリング(株)はこのたび、夜間にCO 2を
マイナス56℃という超低温に冷却してドライアイスの形で蓄冷し、昼間にその
超低温を利用するという「蓄冷冷凍システム」の実用技術を開発しました。
このシステムは、昼間の冷凍機の消費電力のピークを大幅に削減し(一般に
5割程度削減)、その分を夜間に移行するもので、大幅な電力需要のピーク
シフト実現が期待できます。
また、マイナス56℃という超低温を利用できるため、冷凍食品加工をは
じめ、医薬品製造、製品低温試験、フリーズドライ食品製造など、これま
で蓄冷技術の導入が困難であった幅広い産業分野での活用が見込まれます。
今回開発したシステムは、CO 2が固体・液体・気体の全ての状態で
存在する温度(3重点)が、マイナス56℃という低温であることに着目し、
その潜熱を利用するもので、夜間の割安な電力を利用してドライアイス
(固体のCO 2)をつくりだし、その状態で蓄冷しておき、その冷熱を
昼間に行われる冷凍工程などに利用するものです。
これまで、無機塩といわれる物質(塩化ナトリウムなど酸とアルカリが
反応したもの)などを蓄冷材として利用した「マイナス20℃」程度の蓄冷
技術は、実用化されていますが、このたび開発した「マイナス56℃」とい
うさらに低温域の蓄冷実用技術は世界で初めてのものです。
このシステムは、次のような特徴を持っています。
1)割安な夜間電力による蓄冷運転を行って、ドライアイスに冷熱を蓄え、
昼間の冷凍食品の製造などに利用するので、従来と比べて冷凍機の容量
(コンプレッサー容量)を抑えることができ、それに伴って契約電力
の減少、電気の基本料金の低減につながります。
2)料金の割安な夜間電力を利用するとともに、冷凍機の運転が効率の良
いフラット運転になるので、電力消費量が減少し、ランニングコストが
3割程度低減できます。
[1)と2)の経済的メリットによって、従来の非蓄熱式システム(冷凍機
能力33冷凍t、冷凍食品製造能力約1t/時間のケースで)と比べた場
合のイニシャルコストの増分は、4年程度で回収できるものと見込まれます。]
3)二酸化炭素という無色・無臭・無毒・非腐食性・非磨耗性・非爆発性
・不燃性の、自然に存在する安全な化合物を利用するので、直接食品
に接するような用途にも導入でき、しかも簡単な操作で自動制御運転が
できます。
4)新規設置の段階で導入することのほか、既設の冷凍設備に蓄冷装置を
追加設置できます。その場合、冷凍能力を大幅に向上することが可能と
なります。
これまでCO2に関しては、「単位体積あたりの蓄冷密度が大きい」
「長期の耐久性に優れる」「金属を腐食させない」「コストが低廉である」
など、蓄冷材としての基本性能に優れていることを確認していましたが、
1)蓄冷・放冷を通じたCO 2の状態変化の把握と、それに対応した
装置設計
2)自動制御技術の確立
などの課題が残されていました。
このたびの開発は、約3年にわたる共同研究の結果、これらの課題解決
に成功し実用化の目途がついたものです。
なお、昨年10月から今年6月までプリマ食品(株)東松山工場で行った実
証試験では、冷凍食品製造の実工程に導入し、所期の性能を発揮すること
を確認しており、今後は早ければ今年中に東洋エンジニアリング(株)が商
品化し、販売を開始する予定です。
以 上
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