柏崎刈羽原子力発電所5号機における保安規定違反の原因と対策に関する経済産業省原子力安全・保安院への報告について
平成24年8月13日
東京電力株式会社
当社は、平成24年3月2日、定期検査中の柏崎刈羽原子力発電所5号機(沸騰水型、定格出力110万キロワット)において、平成24年2月に原子炉建屋内で照射された燃料に係る作業(以下、照射燃料作業)を実施した際、保安規定で2系列が動作可能であることが要求される中央制御室非常用換気空調系*1のうち、1系列の外気隔離ダンパ(弁)が定例の点検作業により全開状態で閉動作できない安全処置がなされていたため、一時的に運転上の制限*2を満足していない状態となっていたことを確認いたしました。
本事象については、平成24年3月16日に原子力安全・保安院より保安規定に違反すると判断されました。
その後、保安規定違反が発生した直接原因や組織体制に起因する根本原因や再発防止対策について、経済産業省原子力安全・保安院へ報告いたしましたが、5月16日、同院より「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所第5号機中央制御室非常用換気空調系の運転上の制限の不遵守に係る保安規定違反に対する根本原因分析について(追加指示)」の指示文書*3を受領いたしました。この指示文書に基づき、当該事象の根本原因分析を改めて実施してまいりましたが、業務プロセス毎の問題点を具体的に抽出する作業に時間を要したことから、7月17日に報告期限延期(8月13日までに報告を行う)の申請を行いました。
当社は、本日、当該事象の根本原因分析の結果と再発防止対策について、経済産業省原子力安全・保安院へ報告いたしましたのでお知らせいたします。
追加の指示文書受領後、当社は、本件の背景的な要因を広く分析し、問題点をより具体的にする観点から、保安規定条文の導入の検討を開始した平成12年2月に遡り、業務のプロセス毎に事実関係の追加調査・再整理を行った結果、前回の報告内容を具体化した、以下のような直接的な問題点を抽出しました。
・保安規定の要求対象である機器名称について、保安規定の下部規程で明確化していなかったため、関係者が正しい認識をもつことができなかった(複数のマニュアル類にて不明確な記述となっていた)。
・明確化が不足した部分について、運用を通じての見直しや、教育が不足した。
・保安規定を満足する定期検査工程であることの確認について、工程作成部門以外による確認が十分に機能しなかった。
当社はこれまでに、本件について社内の関係者に対して注意喚起を図るとともに、保安規定の正確な判断を補助するために社内で定めた「保安規定運用ガイド」等を改訂し保安規定の更なる理解向上に努めるなどの対策を講じてきておりますが、今回抽出した直接的な問題点に対する実効的な再発防止対策として、改めて以下の対策を講じてまいります。
・機器名称の記載が不足した部分について、記載を明確化するとともに、当該機器が対象となる理由と合わせて、関係者の教育を行う。また、今回、正しい認識をもつことができなかった設備は、通常使用する設備と非常時に使用する設備が混在しており、保安規定の要求対象となる範囲に迷いを生じやすいものであったことから、類似の迷いを生じやすい箇所についても、記載を明確にする。(前回報告済み)
・定期検査工程を作成する部門以外の組織にて、定期検査工程の妥当性の確認を確実に行えるようにするため、情報共有や連絡の仕組みを構築する。(前回報告済み)
・今回、記載が不明確であったマニュアル類が複数あったことから、これら関連するマニュアル類の記載内容について、相互に不整合が生じない管理を行う。(前回報告済み)
また、前回の報告では、組織要因として、業務の標準化や改善、問いかける姿勢が必ずしも十分ではなかったとしておりましたが、今回の直接的な問題点を踏まえつつ、前回の報告内容を具体化した3つの組織要因を抽出しました。
・保安規定や体系化された図書の中で要求事項を明確にする仕組みが不十分であった。
・保安規定の下部規程作成後の見直しにおいて、実務者が抱えている問題点を集約して見直しにつなげる仕組みが不十分であった。
・設備保全部門と保安規定を管理する部門の、保安規定遵守状況の確認において、両者の間で適切な情報を共有する仕組みが不十分であった。
組織要因に対する再発防止対策として、以下を実施してまいります。
・保安規定の要求事項が不明確になっていないかについて、保安規定及びマニュアル類全体を再確認し、問題点が明らかとなった場合にはこれら規定類の見直しを行うとともに、これら見直しが継続的に行われる仕組みを構築する。
・設備保全部門と保安規定を管理する部門が保安規定に関連する業務についての役割の再確認を行い、適切に情報を共有する等の仕組みを構築する。
○添付資料
柏崎刈羽原子力発電所第5号機中央制御室非常用換気空調系の運転に係る保安規定違反に関する直接原因,組織体制に起因する根本原因及び再発防止策について(PDF 400KB)
*1 中央制御室非常用換気空調系
事故時に当直員が過度な被ばくを受けることなく、中央制御室で必要な操作・措置がとれるように独立して設置された空調設備。2系列あり、1系列で100%の容量を有している。
*2 運転上の制限
保安規定では原子炉の運転に関し、「運転上の制限」が定められており、今回の場合、照射された燃料に係る作業を実施する際に、中央制御室非常用換気空調系2系列(ファン2台、フィルタ1基および必要なダンパ(弁)、ダクト)が動作可能であることが求められている。
*3 指示文書
「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所第5号機中央制御室非常用換気空調系の運転上の制限の不遵守に係る保安規定違反に対する根本原因分析について(追加指示)」
(平成24・05・15原院第20号)
原子力安全・保安院(以下「当院」という。)は、「東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所第5号機中央制御室非常用換気空調系の運転に係る保安規定違反について(指示)」(平成24年3月16日付け平成24・03・15原院第3号)に基づき、平成24年4月16日に、貴社から根本原因分析結果等についての報告書を受領しました。
しかしながら、当院としては、当該報告書に記載された根本原因の分析結果及び再発防止対策について、「事業者の根本原因分析実施内容を規制当局が評価するガイドライン」(平成22年11月10日付け平成22・11・10原院第4号。以下「ガイド」という。)に基づき報告書を評価したところ、事実関係の時系列の整理が不十分等のガイドに適合しない項目が多数あったことから、適切に根本原因分析が行われていないと評価しました。
このため、当院は、貴社に対し、ガイドの要求を満たすよう、「原子力発電所における安全のための品質保証規程」(JEAC4111-2009)に沿って根本原因分析をやり直し、その結果について平成24年7月17日までに当院に対し報告するよう求めます。