福島第一原子力発電所における保安規定違反に関する経済産業省原子力安全・保安院からの追加指示文書の受領について
平成24年6月21日
東京電力株式会社
当社は、福島第一原子力発電所の原子炉圧力容器・格納容器注水設備等の安定的な冷温停止状態を維持するための主要設備(7設備)*1に対する保守管理において、設備毎の点検頻度、点検内容等の計画を定める保全計画の一部を策定していなかったこと等から、経済産業省原子力安全・保安院による平成23年度の保安検査において、保安規定第132条(保守管理)に違反していることが指摘され、3月19日、同院より、指示文書*2を受領いたしました。
今回指摘された違反事項は以下のとおりです。
保安規定第132条では、マニュアルに基づき、設備または機器の単位ごとに保全方式および保全方法を定めた保全計画(必要に応じて消耗品等の準備を含む)を策定することが規定されております。
今回の保安検査では、原子炉圧力容器・格納容器注水設備等の安定的な冷温停止状態を維持するための主要設備において、保安規定で要求される設備または機器毎の保全計画を一部策定していなかったことや、消耗品・予備品管理の不備等が確認され、7設備の維持管理を行う上で重要な保安活動が実施されておらず、保安規定に違反していると判断されました。
その後、当社は、保安規定に違反した原因の究明ならびに再発防止対策の策定を行い、その結果を取りまとめたことから、4月19日に、同院へ報告いたしました。
当社は、本日、経済産業省原子力安全・保安院より「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における平成23年度第1回保安検査に係る保安規定違反について(追加指示)」の指示文書*3を受領いたしました。
当社といたしましては、今回の指示を真摯に受け止め、本日受領した指示文書に基づき、今後、適切に対応してまいります。
以 上
*1 主要設備(7設備)
(1)原子炉圧力容器・格納容器注水設備
(2)原子炉格納容器のうち水素爆発を防止することができる機能
(3)使用済燃料プール等
(4)原子炉圧力容器・格納容器ホウ酸水注入設備
(5)高レベル放射性汚染水処理設備、貯留設備(タンク等)、廃スラッジ貯蔵施設、使用済セシウム吸着塔保管施設及び関連施設(移送配管、移送ポンプ等)
(6)高レベル放射性汚染水を貯留している(滞留している場合も含む)建屋等
(7)電気系統
*2 指示文書
東京電力株式会社福島第一原子力発電所における平成23年度第1回保安検査に係る保安規定違反について(指示)
(平成24・03・15原院第4号)
原子力安全・保安院(以下「当院」という。)は、平成24年2月6日から同年2月24日まで、貴社福島第一原子力発電所に対して保安検査を実施しました。
その結果、福島第一原子力発電所原子炉施設保安規定(以下「保安規定」という。)第132条では、福島第一安定化センター各グループマネージャー又は同発電所の各グループマネージャーは、設備又は機器の単位ごとに保全方式及び保全方法を定めた保全計画を策定することが規定されていますが、今回の保安検査において、高レベル放射性汚染水を貯留している建屋、高レベル放射性滞留水処理関連設備及び免震重要棟電気設備等の保全計画が策定されていないことが確認されました。
また、保安規定同条に規定されているマニュアルに基づき、保全に必要な交換部品等のリストを策定すべきところ、前述の設備に加えて、原子炉圧力容器・格納容器注水設備、原子炉格納容器窒素封入設備、使用済燃料プール等、原子炉圧力容器・格納容器ほう酸水注入設備及び電気設備において、当該リストが策定されていないことが確認されました。
本件は、いずれも保安規定の同条項に違反すると判断しました。これを踏まえ、貴社に対し、厳重注意するとともに保安規定違反に関し、違反が発生した原因を究明し、再発防止策を策定の上、4月19日までに報告することを求めます。
*3 指示文書
東京電力株式会社福島第一原子力発電所における平成23年度第1回保安検査に係る保安規定違反について(追加指示)
(平成24・06・19原院2号)
原子力安全・保安院(以下「当院」という。)は、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における平成23年度第1回保安検査に係る保安規定違反について(指示)」(平成24年3月19日付け平成24・03・15原院第4号)に基づき、平成24年4月19日に、貴社から原因分析等の報告書を受領しました。
当該報告書について、保安活動に対する再発防止対策の実効性が不明確であることや原因分析において、経営層によるマネジメントの関与が触れられていない点がありました。当院において評価した結果、再発防止対策を更に強化する必要があると判断しましたので、下記のとおり対応するよう指示します。
なお、指示事項の実施状況については、今後の保安検査等で確認していくこととします。
記
1.保安活動に必要な人員及び体制の確保
保全計画等の策定が適切に行われなかったことなど、保安規定の遵守に必要な体制の構築等適切な対応をとれなかったことから、保安活動に必要な人員及び体制が十分に確保されるよう対策を講ずること。
2.保全計画の策定等に必要な仕組みの構築
品質保証部門において、保全計画の変更内容等の周知徹底及び保全計画の策定状況確認のための仕組みを構築するとされているが、保全計画の策定等の確認・評価に係る具体的な時期や方法が不明確であることから、同部門における確認・評価の具体的な実施方法・時期やその確認・評価結果を確実に改善につなげることが出来る仕組みを構築すること。
3.保安規定変更に必要な仕組みの構築
品質保証部門が、所管各グループに対して、改訂された保安規定に対応するための準備状況を確認するよう適切な時期に指示し継続的に確認していくとしているが、具体的な仕組みについては未だ不明確である。このため、全社的に保安規定変更等に係る状況を確認及び適切に管理できる仕組みを構築し、同部門を通じて関係各グループ要員に保安規定変更等の内容を周知するとともに、各要員の理解向上を図り、保安活動を確実に実施させること。
4.経営層によるマネジメントについて
東京電力株式会社により示された原因及び再発防止対策については、所管各グループにおける限定的な範囲での分析及び対策の立案に留まっている。特に、経営層によるマネジメントが適切に実施されたかといった組織の体制に係る分析が行われていない。福島第一原子力発電所の保安活動に対する経営層の関与が必ずしも明確になっていないことが今回の違反や原因分析が不十分であることの背景にあると考えられることから、上記の1.から3.の保安活動の改善指示に的確に対応するとともに、再発防止対策を確実に実施するために、経営層がイニシアティブを持ち、保安活動の改善に関する社としての方針を明確化し、その実施を徹底するために経営層自らがその活動状況を確認する仕組みを構築すること。