柏崎刈羽原子力発電所における緊急安全対策に関する経済産業省原子力安全・保安院への報告について
平成23年4月21日
東京電力株式会社
本年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震にともなう津波の影響で、当社福
島第一原子力発電所において発生した事故や放射性物質の漏えいにより、発電所の
周辺地域の皆さまをはじめ、福島県民の皆さま、さらに広く社会の皆さまに大変な
ご心配とご迷惑をおかけし、心より深くお詫び申し上げます。
当社柏崎刈羽原子力発電所では、福島第一原子力発電所の事故をふまえ、地震発
生後に、津波により3つの機能(交流電源を供給する全ての設備の機能、海水を使
用して原子炉施設を冷却する全ての設備の機能及び使用済燃料プールを冷却する全
ての設備の機能)を同時に全て喪失した場合においても、炉心や使用済燃料の損傷
を防止し、放射性物質の放出を抑制しつつ冷却機能の速やかな回復を図るため、以
下の緊急安全対策を講じてまいりました。
こうした中、当社は、3月30日に経済産業大臣から原子力発電所の緊急安全対策
に関する指示文書*を受領し、これに基づき、柏崎刈羽原子力発電所の緊急安全対
策に加え、津波による浸水を防止し、更なる安全性を確保するために計画している
今後の対策についてとりまとめて、本日、経済産業大臣へ報告いたしましたのでお
知らせします。
【1.緊急安全対策の実施】
I.福島第一原子力発電所の事故を踏まえて、平成23年4月20日までに、3つの
機能を喪失した場合における対応手順を策定しました。
(1)全交流電源喪失時の電源の確保
(2)原子炉の注水・冷却機能強化
(3)淡水水源の確保
(4)原子炉格納容器の減圧機能の確保
(5)使用済燃料プールの注水・冷却機能強化
(6)代替海水ポンプによる原子炉や使用済燃料プールの除熱機能強化
II.津波の影響で3つの機能が喪失した場合でも、炉心の損傷や使用済燃料の損
傷を防止するために、平成23年4月20日までに、以下の緊急安全対策を実施し
ました。
(1)緊急点検の実施
a.安全上重要な設備の定例試験等による確認
b.緊急時対応のための機器及び設備の点検
(2)緊急時対応計画の点検及び訓練の実施
a.緊急時の対応計画(マニュアル)の整備
b.緊急時を想定した訓練の実施
(3)緊急時の電源確保
全交流電源喪失時に、原子炉へ注水するポンプ等に電力を供給するための電
源車等や機器類を配備
(4)緊急時の最終的な除熱機能の確保
a.全交流電源を喪失し非常用炉心冷却系ポンプが使用できなくなった場合に
備え、電源車等から補給水ポンプ、ほう酸水注入系ポンプ等に電源を供給
して原子炉への注水機能の確保(消防車からのバックアップも可能)
b.純水タンクやろ過水タンクからの補給により、原子炉に注水するための水
源の確保
c.全交流電源が喪失し圧縮空気の供給が停止した場合に備えて、予備の窒素
ボンベを準備し、原子炉格納容器の減圧に使用する空気作動弁に窒素を供
給する機能の確保
d.可搬式の水中ポンプによる除熱機能の確保
(5)緊急時の使用済燃料プールの冷却確保
a.注水・冷却を継続するための代替注水の手順の策定
b.必要となる資機材の配備
(6)発電所の構造等を踏まえた当面必要となる対応策の実施
a.安全上重要な設備が設置されている建屋の防水性の改善
b.構内道路等のアクセス性を確保するための重機類の配備
【2.今後の対策】
津波による浸水を防止し、更なる安全性を確保するための今後の津波対策につい
て、以下の考え方を基に進めてまいります。
I.防潮堤の設置
海岸前面に設置する防潮堤により津波の浸入・衝撃を回避し、敷地内にある
軽油タンクや建物・構築物等を防御する。
II.建屋への浸水防止
津波が敷地内に浸入した場合に、安全上重要な設備が設置されている建屋内
への浸水を防ぐため、防潮壁の設置や扉の水密化を行う。
(1)原子炉建屋の防潮壁の設置
安全上重要な機器が設置されている原子炉建屋に防潮壁を設置し、津波に
よる電源設備や非常用ディーゼル発電機などへの浸水を防ぎ、発電所の安全
性を確保する。
(2)原子炉建屋等の水密扉化
原子炉建屋等の扉を水密化することにより、建屋内の機器の水没を防止す
る。
III.除熱・冷却機能の更なる強化等
安全確保に万全を期すため、除熱・冷却機能については、常設設備に加えて
移動可能な機器による代替設備も備える。
(1)水源の設置
発電所敷地構内に緊急時の水源となる淡水の貯水池を増設し、原子炉や使
用済燃料プールへの冷却水の安定的な供給を確保する。
(2)ガスタービン発電機車等の追加配備
大容量ガスタービン発電機車等を追加配備して、全ての交流電源を喪失し
た場合でも、残留熱除去系ポンプを運転できるようにする。
(3)緊急用の高圧配電盤の設置と原子炉建屋への常設ケーブルの布設
緊急用の高圧配電盤を設置するとともに、原子炉建屋への常設ケーブルを
布設することにより、全交流電源喪失時における電源供給ラインを常時確保
し、残留熱除去系ポンプ等に電力を安定供給できるようにする。
(4)代替水中ポンプ及び代替海水熱交換器設備の配備
代替の水中ポンプと海水熱交換器設備を配備し、海水系の冷却機能が喪失
した場合においても残留熱除去系を運転できるようにする。
(5)原子炉建屋トップベント設備の設置
トップベント設備を設置して、原子炉建屋内での水素の滞留を防止する。
(6)環境モニタリング設備等の増強
環境モニタリング設備や通信設備、監視計器用の蓄電池等の追加配備を行
い、緊急時の環境影響や情報収集に万全を期す。
(7)高台への緊急時用資機材倉庫の設置
高台に緊急時用資機材倉庫を設置し、津波により緊急時に必要な資機材の
喪失を防止する。
当社は、引き続き、福島第一原子力発電所の事故の収束に向けて、政府・関係各
省庁、自治体のご支援とご協力を仰ぎながら、緊密に連携をはかりつつ、事態の一
日も早い収束に向けて、全力を挙げて取り組んでまいります。
また、今後、事故の原因の分析や評価を行う過程で、柏崎刈羽原子力発電所の津
波対策へ反映すべき事項が確認された場合には、速やかに必要な対策を講じてまい
ります。
以 上
添付資料1:柏崎刈羽原子力発電所における緊急安全対策の概要(PDF 1.24KB)
添付資料2:柏崎刈羽原子力発電所における今後の対策の概要(PDF 468KB)
参 考:柏崎刈羽原子力発電所における緊急安全対策について(実施状況報告)
(PDF 2.10MB)
* 指示文書
「平成23年福島第一・第二原子力発電所事故を踏まえた他の発電所の緊急安全対
策の実施について(指示)」
(平成23・03・28原 第7号)
今般の平成23年東北地方太平洋沖地震による津波に起因する福島第一原子力発電
所事故は、我が国において未曾有の原子力災害をもたらしており、現在、同発電所
等において、事業者である東京電力株式会社はもちろんのこと、国、地方公共団体
等の関係機関が一体となって、この原子力災害の拡大の防止及び復旧のために懸命
に努力しているところである。
原子力安全・保安院においては、当該事故対策に引き続き全力で対応しつつ、今
後、今般の津波の発生メカニズムを含め、当該事故の全体像の把握及びその分析・
評価を行い、当該事故に係る原因究明及び抜本的な対策を講じることとする。
他方、今回のような巨大地震による極めて大きな津波については、その発生頻度
は相当に小さいと考えられるものの、それによる原子力発電所への被害は極めて甚
大となる可能性がある。これに鑑み、福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発
電所以外の原子力発電所に対して、まずは現在判明している知見に基づき、津波に
よる電源機能等喪失時においても放射性物質の放出を抑制しつつ原子炉施設の冷却
機能を回復することを可能とするための緊急安全対策を講じることとし、緊急安全
対策に電気事業者等が適切に取り組み、原子力安全・保安院がこれを検査等により
確認することにより、津波による電源機能等喪失時における炉心損傷等を防止し、
原子力災害の発生を防止することとする。
ついては、津波が発生した場合における原子炉施設の保全のための活動を行う体
制の整備及びこれに伴う保安規定の整備を要求事項とする改正後の実用発電用原子
炉の設置、運転等に関する規則等に従い、下記の緊急安全対策に直ちに取り組むと
ともに、これらの緊急安全対策の実施状況を早急に報告することを求める。
記
津波により3つの機能(交流電源を供給する全ての設備の機能、海水を使用して
原子炉施設を冷却する全ての設備の機能及び使用済燃料貯蔵槽を冷却する全ての設
備の機能)を喪失したとしても、炉心損傷及び使用済燃料の損傷を防止し、放射性
物質の放出を抑制しつつ原子炉施設の冷却機能の回復を図るために、緊急安全対策
として、以下の対策を講じるとともに、今般の実用発電用原子炉の設置、運転等に
関する規則等の改正に従い保安規定を整備し、保安規定の変更の認可を申請するこ
と。
a.緊急点検の実施
津波に起因する緊急時対応のための機器及び設備の緊急点検の実施
b.緊急時対応計画の点検及び訓練の実施
交流電源を供給する全ての設備の機能、海水により原子炉施設を冷却する全て
の設備の機能及び使用済燃料貯蔵槽を冷却する全ての設備の機能の喪失を想定
した緊急時対応計画の点検及び訓練の実施
c.緊急時の電源確保
原子力発電所内の電源が喪失し、緊急時の電源が確保できない場合に、必要な
電力を機動的に供給する代替電源の確保
d.緊急時の最終的な除熱機能の確保
海水系施設又はその機能が喪失した場合を想定した機動的な除熱機能の復旧対
策の準備
e.緊急時の使用済燃料貯蔵槽の冷却確保
使用済燃料貯蔵槽の冷却及び使用済燃料貯蔵槽への通常の原子力発電所内の水
供給が停止した際に、機動的に冷却水を供給する対策の実施
f.各原子力発電所における構造等を踏まえた当面必要となる対応策の実施
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