プレスリリース 2009年

当社柏崎刈羽原子力発電所1号機における水位計装配管取替工事に関する調査状況について

                             平成21年6月16日
                             東京電力株式会社

 当社は、平成21年2月13日以降、新潟県ならびに経済産業省から当社柏崎刈羽原
子力発電所1号機の原子炉圧力容器計装ノズル(以下、計装ノズル)に関する調査
の指示等*1をいただいたことから、対応を進めてまいりました。
                     (平成21年3月13日お知らせ済み)

 本日、当社は、経済産業省原子力安全・保安院から本件に関する追加の指示を受
領いたしました。本件については、当社は継続的に対応を進めておりましたが、こ
れまでの調査状況についてお知らせいたします。(同院に対しては2月25日、3月
2日、3月31日、4月28日に関係資料を適宜提出)

1.調査体制
  調査にあたっては、「柏崎刈羽原子力発電所1号機 水位計装配管取替工事に
 関する調査検討委員会」を設置し、工事報告書、検査記録等の関連文書の確認や
 聞き取り等を行いました。
  なお、調査の透明性確保のため、当社は社外弁護士に事実関係の調査を依頼す
 るとともに、工事元請会社および工事下請会社の調査結果等もふまえ、事実関係
 の認定をいたしました。

2.調査結果
  今回の調査によって判明した調査結果は、以下の通りです。
  ・柏崎刈羽原子力発電所1号機において、第10回定期検査(平成10年10月から
   平成11年1月)時に、計画的な工事として、原子炉水位計装配管の取替工事
   が行われた。
  ・工事開始後、工事担当グループは、工事元請会社から、N14ノズルの切断面
   (全4カ所中3カ所)にひびが存在している旨の報告を受け、担当者を現地
   確認に向かわせ、浸透探傷試験*2を行った結果、指示模様(ひびの存在)
   を確認した。その結果は、工事担当グループのマネージャー(以下、GM)
   に報告された。
  ・GMは、工事元請会社との協議を踏まえ、上記ひびについては、N14ノズル
   の開先加工*3をすることによりなくなるかどうかを確認し、ひびがなくな
   れば、そのまま工事を続行することに問題はないと判断し、当該の方針を工
   事元請会社に伝えた。また、同時に、この段階では国への報告を要する事案
   ではないと判断した。
  ・工事下請会社が、浸透探傷試験により指示模様が確認されたN14ノズルの先
   端をリング状に切断し、当社の担当者立ち会いのもとで、切断面の浸透探傷
   試験を実施した結果、ひびの存在は認められなかったため、GMは、配管取
   替工事を続行することを決定した。また、ひびが除去されたことから、国へ
   の報告を要する事案ではないと判断した。
  ・GMは、ひびの存在が判明した直後の段階から、N14ノズルの素材である低
   炭素ステンレス鋼の性質(応力腐食割れを起こしにくい)や使用部位(液体
   との接触がなく振動も少ない)から、ひびの原因については、疲労や応力に
   よる腐食ではなく、溶接作業時の施工不良(溶接割れ*4)である可能性が
   高いと考えていた。
  ・上記のとおり、ひびの原因は、当初の段階から、溶接作業時の施工不良に起
   因するものと考えられていたが、万が一、異なる原因によるものであった場
   合には、別途何らかの対応が必要となる可能性があることから、GMおよび
   担当者と工事元請会社は、協議の上、慎重を期して、工事元請会社において
   工事と並行して詳細な原因調査を実施することとした。
  ・その結果、第10回定期検査終了前に、溶接作業時の施工不良に起因するひび
   であり、進展性も認められないことが再確認され、その旨が工事元請会社か
   ら報告された。そこでGMは、ひびの原因は溶接割れであると自らが判断し
   たことに誤りはなかったと再認識した。

3.偽装、隠蔽の有無に対する評価
  調査結果から、ひびは隠蔽されたものではなく、通常通り、工事元請会社と当
 社の間で原因究明や処置方法が検討されたものであり、加えて、工事下請会社へ
 隠蔽作業を強要したという事実も確認されませんでした。
  また、本件の原因調査結果に関する書類については、当社には保管されていま
 せんでした。当社は調査のための費用を支払う契約の変更を行っておらず、この
 ため、契約に基づき正式な書類として提出されなかった可能性が高く、当該書類
 を意図的に破棄、隠蔽したことを裏付ける事実は認められませんでした。

4.国への報告の必要性に対する評価
  通産省令第77号(平成8年7月12日改正当時)における原子炉設置者が負う大
 臣への報告義務は、「原子炉の運転停止中において、原子炉の運転に支障を及ぼ
 すおそれのある原子炉施設の故障があったとき」に課されていましたが、計装ノ
 ズルから蒸気漏れが生じていたような場合であれば、「原子炉の運転に支障を及
 ぼすおそれのある故障」に該当すると解されます。
  しかし、本件については、当該ひびの発生原因が溶接時の施工不良(溶接割れ)
 による可能性が高く、当該ひびは進展性がないと認められるものでした。仮に当
 該ひびを放置したまま原子炉の運転を再開したとしても、当該ひびが更に進展し
 て貫通に至り、蒸気漏れを生じる不具合を起こす可能性はないと考えられたこと
 から、本件については、「原子炉の運転を停止する必要が生じるおそれのある故
 障」には該当しないと解されます。
  一方、本件については、計装配管の取替工事の過程で発見された指示模様であ
 り、その後の開先加工により除去されたこと、また、原因調査の結果、溶接割れ
 の可能性が高いと考えられたことから、停止中であった1号機の同様の箇所のみ、
 念のため、対策を実施するにとどまり、「原子力発電所における安全確保対策の
 強化について」(昭和52年3月3日 通産大臣通達)にもとづく報告を含め、社
 内外で情報を共有する措置をとらなかったものです。
  しかしながら、本事例は、当時、使用実績の少ない低炭素ステンレス鋼にひび
 が発生した事象であったことを鑑みれば、通産大臣通達にもとづく報告義務の有
 無に関わらず、行政当局に対して情報提供や相談を行うなどの積極的な対応を行
 うとともに、原因究明結果も含めて、当社はもとより、他事業者に対しても情報
 を共有する措置をとることが望ましかったと考えられます。

5.健全性評価結果
  当該部位について、目視試験や放射線透過試験*5等を実施した結果、現時点
 において有意な欠陥はなく、適正な溶接が行われていることを確認しました。
  当社としては、これらの結果を踏まえ、当該部位については現時点において健
 全性が確保されているものと判断しました。
  なお、念のため、1号機のN14ノズルセーフエンドと同様の形状であるN12、
 N13ノズルセーフエンドについても放射線透過試験等を行い健全であること、お
 よびセーフエンドの寸法確認を行い、N14ノズルセーフエンドと同様なひび除去
 のための加工が行われていないことを確認しました。

6.まとめ
  1号機の第10回定期検査時に、計画的に行った水位計装配管取替工事において、
 計装ノズルに接続する配管を接続部分で切断したところ、切断面にひびを確認し、
 ひびの除去作業を実施しておりましたが、偽装や隠蔽、法令違反などの事実は確
 認されませんでした。
  しかしながら、詳細な原因調査等を行っていること、当時使用実績の少ない低
 炭素ステンレス鋼にひびが発生した事象であったことから、行政当局に対して情
 報提供や相談を行うなどの積極的な対応を行うとともに、原因究明結果も含めて
 不具合情報を記録・保管して社内外に対して情報共有を行うことが望ましい事象
 であったものと真摯に反省しております。
  また、このたびの調査にあわせ当該部位の健全性評価を行い、健全性が確保さ
 れていることを確認いたしました。

  現状においては、平成14年に判明した点検・補修作業に係る不適切な取扱いの
 再発防止策として不適合管理プロセスが確立しており、軽微な事象であっても不
 適合管理委員会*6で取扱いを決め、法令報告の対象ではない事象であっても、
 発電所に常駐する保安検査官へ報告することとしております。
  また、不適合事象は、当社の公表基準に基づき適宜公表しておりますが、必要
 に応じて原子力施設情報公開ライブラリー(「ニューシア」)*7等による事業
 者間の情報共有を図っており、品質・安全のより一層の向上の観点から、当時と
 比べて改善が進んだものと考えております。

  当社といたしましては、今後とも、不適合管理の適切な運用に努め、透明性を
 確保し、一層の品質向上を目指して取り組んでまいります。

                                  以 上

*1 調査の指示等

  [新潟県からの調査依頼]
   平成21年2月13日新潟県から当社へ調査依頼
   (新潟県への通報内容)
   ○発生の日時   平成10年1月頃
   ○1号機の原子炉圧力容器計装ノズルにおいて、供用期間中検査で亀裂が見
    つかったが、A社の課長は亀裂がはじめから存在しなかった偽装を決定し、
    B社に隠蔽作業を強要した。
   ○B社は亀裂を削り除去した後で、溶接で肉盛し隠蔽作業を完成した。
   ○営業でなく技術主導で重大事故を隠蔽して、国への報告義務を無視した。
   ○安全に運転できるのか。
   ○原子炉の亀裂を電力会社が隠蔽した問題は、一大社会問題となり運転停止
    となったが、A社主導の本件は隠蔽されたままであり、このままの運転は
    危険ではないのか。
   ○事実かどうかは、問題の個所を調査すれば直判る。
   ○本件については他に東京電力のC氏、A社のD氏が知っている。

  [経済産業省からの指示]
   「柏崎刈羽原子力発電所1号機において平成10年に確認されたき裂に関する
   報告について(指示)」         (平成21・03・13原院第3号)
    平成21年3月13日、原子力安全・保安院は、貴社から、平成10年の柏崎刈
   羽原子力発電所第1号機の第10回定期検査において、原子炉圧力容器計装ノ
   ズルのセーフエンドでき裂が確認され、補修工事を行ったが、その確認され
   たき裂について当時の通商産業省への報告を行わなかった事実を確認した旨
   の連絡を受けました。
    ついては、下記の事項について報告するよう指示します。

                  記

   1.当該ノズルのセーフエンドに係る非破壊検査等による点検や構造健全性
     に関する評価などによる現時点における技術基準適合性の確認結果
   2.当該ノズルのセーフエンドに対する補修等の措置に係る当時の施工状況
   3.平成10年当時の本件に係る不適合管理の状況及びこれまで当院に報告が
     行われなかった理由
   4.当該ノズルのセーフエンドにおいて当時確認されたき裂について、当該
     き裂の種類・形状・大きさ、き裂の発生要因の特性等に関する技術情報
     や技術的評価検討の結果

*2 浸透探傷試験
   非破壊検査の一つ。試験体表面に赤色や蛍光の浸透性のよい検査液を塗布し、
   指示模様を観察することによりひびなどの欠陥を調査する試験方法。

*3 開先加工
   溶接前に実施する母材部の削り加工。

*4 溶接割れ
   溶接割れには幾つか種類があるが、ここでは、溶接部近傍の熱影響部の高温
   割れを意味する。つまり、溶接時の熱により近傍の金属組織が高温の内に割
   れること。

*5 放射線透過試験
   非破壊検査の一つ。エックス線、ガンマ線(放射線)は物体の中を透過する
   ので、一様な強さの放射線を照射すれば、欠陥により放射線の吸収に差が生
   じ、写真フィルムに撮影することができる。この特性を利用して欠陥を調査
   する試験方法。

*6 不適合管理委員会
   発生した不適合を適切に管理することはもとより、是正処置・予防処置を通
   しての「計画、実施、評価、改善」というPDCAを確実に回し、設備や業
   務の安全性及び信頼性を確保・向上することを目的とした社内委員会。
   (平成15年に設置)

*7 原子力施設情報公開ライブラリー(「ニューシア」)
   「有限責任中間法人 日本原子力技術協会」が運営する原子力施設の事故故
   障や、事故故障に至らない軽微な事象の情報、ならびに信頼性に関する情報
   を共有するためのインターネット・ホームページ。


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