平成18年3月23日
東京電力株式会社
当社は、福島第二原子力発電所3号機で使用していた原子炉再循環系の旧配
管に新たにひびが確認された事象注1について、経済産業省原子力安全・保安
院からの指示注2にもとづき、これまで事実関係等の確認および再発防止策の
検討を行っておりましたが、本日、内容をとりまとめ、経済産業省原子力安全・
保安院に報告書を提出いたしましたのでお知らせいたします。
報告書の概要は以下のとおりです。
1.新たに見つかったき裂を定期検査期間中の超音波探傷検査で特定
できなかった経緯、誤認要因等の事実関係
以下の要因により、当該部で確認されていた信号を配管溶接時に内面に
生じる形状変化部注3(以下「裏波部」)と判断していました。
(1)2次クリーピング波法注4により全周からの信号を検知していた
ものの、溶接中心注5が不明確であったため、溶接中心付近の裏波
部に通常確認される信号との区別がつかなかった。
(2)建設時の放射線透過試験における情報(裏波部が凹んでおり信号
を反射しやすい)の重視や、これまでの経験から全周にわたるよう
なひびは発生しにくいという検査員の先入観があった。
(3)今回(第13回定期検査)検査した検査員は、前々回の検査(第11
回定期検査)と同一の検査員であり、今回の判断に際して前回検査
(第12回定期検査)と前々回検査との信号に有意な差異がないこと
から、今回も裏波部と考えてしまった。
2.誤認の再発防止策
以下の対策を講じることで、再発防止を図ってまいります。
(1)溶接中心が不明確な場合には、詳細な内面形状の調査を実施して
裏波部からの信号か否かの確認を行う。
(2)今回の事例を今後の検査に活用するため、当社および検査会社に
て事例集を作成し、日本電気協会等への情報提供を行う。
(3)2次クリーピング波法にて信号が確認された場合には、判断に偏
りが生じないよう、当社および担当検査会社に第三者(他の検査会
社等)を加えた評価会議による評価を行う。
3.当該き裂の存在を踏まえた当該配管の健全性評価
以下のとおり、取替済みの当該配管の継手の健全性について評価いたし
ました。
(1)残材を調査した結果、ほぼ全周にわたってひびが確認され、新た
に確認されたひびの深さは最大8.8mmであった。
(2)技術基準における周方向の許容値(全周の60度長さ)を満足しな
いものと評価した。
また、当該継手以外で、各プラントで過去に2次クリーピング波法で信号が
確認され、裏波部と判断している箇所について改めて検査記録などを確認しま
したが、当該継手のように全周から信号が検知されているものはありませんで
した。
なお、超音波探傷検査の知見を拡充する観点から、現在定期検査中である柏
崎刈羽原子力発電所1号機の原子炉再循環系配管2継手の検証調査注6を行い、
検査の改善に資するデータ注7を採取いたしました。採取したデータは、配管
の健全性に影響を与えるものではないと判断しておりますが、当該の2継手に
ついては、今後の定期検査においても計画的に調査し、引き続き検査データの
蓄積に努めてまいります。
今回の事象を鑑み、一層の検査における信頼性向上の観点から、超音波探傷
検査の改善を図ってまいります。
以 上
注1:新たにひびが確認された事象
福島第二原子力発電所3号機において、今定期検査にて原子炉再循環系
配管にひびが確認されたことから、当該配管について取り替えを実施した。
その後、取り替えた当該配管について、健全性評価のための知見を拡充
するため、試験片の切り出しによる断面調査を実施していたところ、当初
超音波探傷検査により確認していた箇所以外にひびを確認した。当時、今
回の断面調査で新たに確認されたひびによる信号は、配管溶接時の形状の
変化によるものと判断していた。(平成18年2月7日お知らせ済み)
注2:原子力安全・保安院からの指示(平成18年2月8日)
以下について、その判定に当たっての根拠を明らかにした上で、速やか
に報告すること。
・新たに見つかったき裂を定期検査期間中の超音波探傷検査で特定でき
なかった経緯、誤認要因等の事実関係
・誤認の再発防止策
・当該き裂の存在を踏まえた当該配管の健全性評価
注3:形状変化部
配管と配管の溶接部に形成される溶接金属による配管内面の凹凸部。
注4:2次クリーピング波法
超音波が表面近くを這う性質を利用して、配管内面の開口部を検出する
手法。
注5:溶接中心
配管と配管の溶接部の中心
注6:検証調査
全周にわたり2次クリーピング波法により検査を実施し、有意な信号を
確認した箇所についてより詳細な検査(縦波端部エコー法・フェーズドア
レイ法)を実施。
注7:検査の改善に資するデータ
検証調査を実施したところ、当該継手にて超音波の信号の反射源が確認
された。(当該継手を含む同配管は今回の定期検査で溶接時の熱の影響に
より内部に残る引張力を改善する措置を実施していることから、当該配管
に超音波の信号による反射源があっても配管の健全性に影響はない)
添付資料
・福島第二原子力発電所3号機にて使用していた原子炉再循環系配管調査状況(PDF 45.1KB)
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