平成18年1月31日
東京電力株式会社
当社は、平成17年9月12日に企業倫理相談窓口注1へ「東電の原子力発電所(福
島第一・福島第二との趣旨の記載)の原子炉給水系流量計測エレメント注2(以下
「エレメント」)に関して、東電から発注を受けた株式会社東芝(以下「東芝」)
が、自社の特定工場で実流量試験を実施した際に、検査データが所定の範囲内に
なるよう恣意的に計器の測定値を読んでいるが、東電は気付いていない。」との
ご指摘が匿名の文書により寄せられたことから、その事実関係を調査してまいり
ました。
このたび、ご指摘いただいたと思われる事案について事実関係が明らかになり
ましたので、この概要および当社の判断についてお知らせいたします。
調査の結果、当社が東芝に発注したエレメントの中で、東芝の当該工場で実流
量試験が行われていたことは過去に4回(4プラント)ありました。
これらの試験において東芝が使用した計測用装置はデジタル表示式であり、測
定値を恣意的に読んでいるという事実はありませんでしたが、平成5年9月から
10月にかけて行われた福島第一原子力発電所6号機のエレメント取替に伴い行わ
れた実流量試験において、東芝の試験担当者は、当社の購入仕様書で定められた
エレメント単体の測定精度(±0.25%以内)を満たす試験データが得られなかっ
たために、測定精度の範囲内に収まるように試験データを当社に無断で修正し、
当社の立会確認時に試験データが測定精度の範囲内となるよう計測用装置の内部
をあらかじめ調整していたことが判明しました。なお、その他の3回については
同様の不適切な行為は確認されませんでした。
当該エレメントを用いて測定される給水流量値は、保安規定で運転上の制限値
として定めている原子炉熱出力の算定根拠となることから、当社は今回、福島第
一原子力発電所6号機の給水流量値について、当該エレメント交換前後の関連す
る運転データ(復水流量等)や、当該実流量試験における修正前の測定値を改め
て評価しました。その結果、同号機の給水流量値は原子炉設置許可申請書添付書
類注3に記載されている測定精度(標準偏差注4で1.76%)を満たしており、原子
炉熱出力は適切に管理されていることから、当社といたしましては法令上ならび
に安全上の問題はないと判断しております。
しかしながら、東芝が合理的な理由もなく当社に無断で当該エレメントの実流
量試験データを修正し、購入仕様書で定めた測定精度に合致しているとして当該
エレメントを当社に納入したことは、不適切な行為であり極めて遺憾であります。
当社は、同社に対してこのような不適切な行為が二度と繰り返されないよう、再
発防止対策を強く求めるとともに、当社としても今後の対応について引き続き検
討してまいります。
当社はこれまで、原子力発電所施設等に関するご指摘を受けた際には、内容が
法令や企業倫理に反していないかどうか等の調査を行い、調査結果の公表に努め
てきておりますが、今後も「ルールの遵守」「誠実な行動」「オープンなコミュ
ニケーション」を基本に一層の透明性向上に努めてまいるとともに、協力企業と
のコミュニケーション強化を図り、一体となった業務品質の向上による安全管理
の徹底に取り組んでまいります。
以 上
注1:企業倫理相談窓口
平成14年10月に社内外から法令遵守や企業倫理に関する申告を受け付け
る目的として開設。
注2:原子炉給水系流量計測エレメント
タービンを回転させるために用いられた蒸気は、復水器で凝縮され再び
原子炉に送り込まれるが、その原子炉に送り込む水の量(給水流量)を測
定する計測器。
注3:原子炉設置許可申請書添付書類
原子力発電所の建設時に事業者が国へ申請手続きを行う原子炉設置許可
申請書に、添付される安全設計に関する説明書等。
注4:標準偏差
基準値に対して一定の割合で値が分布しているものを数値化したもの。
添付資料
・ご指摘いただいた事案の概要および当社の判断について(PDF 19.5KB)
・原子炉給水系流量計測エレメント概略図(PDF 14.5KB)
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