プレスリリース 2005年

福島第一原子力発電所5号機の手動停止の調査結果について

                            平成17年10月7日
                            東京電力株式会社

 当社・福島第一原子力発電所5号機(沸騰水型、定格出力78万4千キロワット)
は、定格熱出力一定運転中のところ、平成17年8月21日、炉心スプレイ系*1B
系の定例試験において、系統に必要な流量が確保できないことが確認されたため、
保安規定に定める「運転上の制限」*2を満足していないと判断いたしました。
このため、運転上の制限を満足しない場合に要求される措置として、残りのA系
および低圧注水系*3の機能が健全であることを確認しました。
 また、その後の調査状況から、当該系統の定例試験時に使用する流量調整用の
弁に不具合が生じているものと推定しましたが、当該弁はプラント運転中に点検
ができないことから、プラントを停止し詳細な調査を実施することといたしまし
た。
               (平成17年8月21日、8月22日お知らせ済み)

 その後、当該系統については、プラントの停止操作にともない原子炉が冷温停
止*4状態となったことから、8月24日に「運転上の制限」の逸脱から復帰して
おります。

 調査の結果、当該弁の弁棒が折損しており、折損した破面の観察結果から、弁
棒は繰り返し力が加わったことにより疲労破壊した可能性があると推定いたしま
した。また、運転時における当該弁の振動測定を行ったところ、流量を上昇させ
る過程において弁体が弁座から離れ弁体の押さえがなくなる弁開度約21%の時に、
弁棒は最も振動が大きくなることがわかりました。
 このことから、当該弁の弁棒が折損した原因は、流量調整時に弁の開度が約21
%になる際、振動により弁棒へ加わる力が大きくなり、疲労で発生したき裂が進
展して、今回の定例試験において折損に至ったものと推定いたしました。
 弁棒の振動が大きくなった原因は、当該弁を第20回(平成16年度)定期検査に
おいて、他号機の水平展開*5として弁棒の支持構造を変更しましたが、この設
計変更の段階で、弁の開閉時に発生する振動の検討が十分でなかったため、弁体
の振動により弁棒に加わる力が変更前より大きくなる構造となっていたことによ
るものでした。
 また、他号機において弁棒の支持構造の設計変更を行った際に、これまでの技
術的知見に基づく検討がなされていたことから、当該号機においては、他号機に
おける検討内容を確認することで十分と考え、あらためて設計検討会の開催など
の所定の手続きを行っておりませんでした。

 対策として、当該弁および当該弁と同様の設計変更を行ったA系同型弁の支持
構造を従来の構造に戻し、弁体の支持部品の強度を向上させた改良品に交換しま
した。また、念のために弁棒の材質を強度の高いものに変更しました。その後、
弁の妥当性確認を行った結果、弁棒へ加わる力が低減され強度に問題のないこと
を確認いたしました。
 また、設計変更を行うにあたっては、設計検討会の開催などを確実に行うため、
設計管理を行う部署が定期検査の計画立案時に改造・修理工事等の全件名につい
てリスト化し設計管理の要否を判断するとともに、設計管理を行う部署とは別の
部署が設計管理の実施状況を再確認することといたします。さらに、設計管理業
務に関わる関係者に対して設計変更の際に使用するマニュアルの研修を行うこと
といたします。

 なお、これまでに他号機において弁棒の支持構造を変更した弁は、通常運転中
は全開または全閉で使用するものであり、本事象と同様の事象が発生する可能性
はありませんが、今後計画的に対策を実施いたします。
 今後、準備が整い次第起動いたします。

                                 以 上

*1 炉心スプレイ系
    非常用炉心冷却系の一つで、冷却材喪失事故時、炉心の過熱による燃料
   および被覆管の破損を防止するため、炉心上部より冷却水をスプレイし冷
   却するための系統(A系、B系の2系統ある)。
*2 運転上の制限
    保安規定では原子炉の運転に関し、「運転上の制限」や「運転上の制限
   を満足しない場合に要求される措置」等が定められており、運転上の制限
   を満足しない場合には、要求される措置に基づき対応することになる。
*3 低圧注水系
    非常時に原子炉水位を維持する系統(A系、B系の2系統ある)。
*4 冷温停止
    原子炉モードスイッチが「燃料取替」または「停止」位置で、かつ原子
   炉水の温度が100℃未満の状態。
*5 他号機の水平展開
    福島第一原子力発電所6号機第18回定期検査において、原子炉水を浄化
   する系統の弁の弁体を支持する部品に破損が確認された。原因は、弁組み
   込み時の施工不良や支持部品の溶接不良によるものと推定されたため、対
   策として弁体に支持部品を有しない構造に変更した。

添付資料
・5号機炉心スプレイ系調査結果概略(PDF 34.3KB)弁棒折損の推定メカニズム(PDF 31.0KB) 


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