平成17年2月17日
東京電力株式会社
当社・福島第一原子力発電所2号機(沸騰水型、定格出力78万4千キロワット)
は、定格出力にて運転中のところ、平成16年12月8日、タービン建屋地下1階の
給水加熱器室内にある湿分分離器*1から湿分分離器排水タンク*2につながる
配管付近より水が滴下し、床面に水たまりがあることを、パトロール中の当社社
員が発見いたしました。当時微少の漏えい(約3秒に1滴)は継続していました
が、増加傾向はなく、仮設容器にて漏えい水を受けておりました。
本事象は直ちに運転に影響を及ぼすものではありませんが、点検および原因調
査のため、同日よりプラントを停止いたしました。
床面に漏れた量は約0.8リットル、放射能量は約3.6×104ベクレル(ラジウム
温泉の約0.36リットルに相当する量)でした。
(平成16年12月8日お知らせ済み)
漏えい箇所を調査した結果、湿分分離器から湿分分離器排水タンクにつながる
配管より分岐し復水器に通じる小口径配管の付け根溶接部に、約5mmの線状の指
示模様が確認されたことから、当該溶接部の詳細調査を行ったところ、貫通割れ
による漏えいであることが分かりました。また、割れ部の破面観察*3の結果、
金属疲労*4の特徴である模様が確認されました。
そのため、当該溶接部における振動解析*5を行い評価した結果、貫通割れの
原因は、配管に流体が流れることによる振動にともない、力が繰り返し加わった
ことによる高サイクル疲労*6と推定いたしました。なお、高サイクル疲労の原
因は、以下の要因によるものと推定しております。
○ 漏えい配管の振動抑制のため設置している配管支持を固定するボルト・ナ
ットのナット側に、廻り止め溶接がされておらず、このナットの緩みにより
振動が起こりやすくなったこと。
○ 当該溶接部下部に設置されている弁を第2回定期検査にて型式の異なる弁
に交換した際、弁の重心位置が変わったため、振動により当該溶接部に繰り
返し加わる力がわずかに大きくなったこと。
○ 当該溶接部については、建設施工時における溶接金属のわずかな溶け込み
不足があり、金属疲労に対する強度が若干低下していたこと。
さらに、今回のような事象は、プラントの運転時間が長くなることにより顕在
化しやすくなることが分かりました。
対策として、当該溶接部については、金属疲労に対する強度の高い溶接方法に
変更いたします。配管支持については、固定用ボルトが緩まないようナットの廻
り止め溶接を実施するとともに、類似箇所の点検を行い、緩みがないことを確認
いたします。また、今後、点検等で配管支持を取り外した際は、固定部の廻り止
め溶接等が適切に実施されていることの確認を行うよう要領書に反映いたします。
なお、他プラントについても、配管支持における類似箇所の点検を順次実施い
たします。
また、今後、計画的に配管支持の点検を実施いたします。
以 上
*1 湿分分離器
高圧タービンと低圧タービンの間に設置され、蒸気中に含まれる水分を
除去する装置。
*2 湿分分離器排水タンク
湿分分離器で除去した水分を回収するためのタンク。
*3 破面観察
破断原因に関する情報を得るため、顕微鏡を使用して破断面の表面状態、
模様等を観察すること。
*4 金属疲労
金属に繰り返し力を加えると比較的小さい力で破壊する現象。
*5 振動解析
配管の振動データに基づき、当該部にかかる力を算出するとともに、破
壊にいたるまでの繰り返し回数を求めること。
*6 高サイクル疲労
金属疲労の一つであり、比較的小さい力が早い周期で繰り返し加わるこ
とにより破損にいたるものをいう。
添付資料
・参考:2号機タービン建屋内における水漏れの概要図(PDF 60.8KB) |