平成16年8月5日
東京電力株式会社
当社・柏崎刈羽原子力発電所1号機(沸騰水型、定格出力110万キロワット)は、
定格熱出力一定運転中のところ、平成16年6月21日午後3時50分頃、復水器の真空度
が低下し、電気出力も約112万キロワットから徐々に約102万キロワットまで降下しま
した。その後、復水器の真空度を回復させるために、午後4時3分、電気出力を約102
万キロワットから約80万キロワットまで手動にて降下させました。これにより復水器
の真空度は正常値に復帰しております。(6月21日お知らせ済み)
今回の事象は、水素・酸素注入設備*1に不具合が発生しバックアップ酸素ボンベ
*2から酸素が自動的に復水器の排気配管へ多量に注入されたことにより、復水器の
真空度低下に至ったものと推定いたしました。原子炉の安全性および運転に影響を与
える系統には異常のないことを確認した上で、7月5日に1号機の出力を定格熱出力
まで復帰しております。(7月5日お知らせ済み)
当該水素・酸素注入設備を調査した結果、酸素流量調節弁2台のうち1台(小弁)
に摩耗および摩耗粉を確認するとともに、同弁の上部と弁棒の連結部との間にわずか
な芯ずれが生じていることがわかりました。
また、バックアップ酸素ボンベから酸素が復水器の排気配管へ多量に注入され、復
水器の真空度低下に至ったと考えられたことから、流量設定時(平成12年)の状況を
調査したところ、バックアップ酸素の流量および供給量を決定した際、バックアップ
酸素が復水器真空度に与える影響を評価していなかったこと、さらに、流量および供
給量が適切に調整されていなかったことがわかりました。このために、バックアップ
酸素が過剰に供給されたものと推定いたしました。
以上のことから、今回の事象の原因は、水素・酸素注入設備が酸素流量調節弁の芯
ずれによる同弁の一時的な動作不良によって緊急停止し、これにともないバックアッ
プ酸素ボンベから復水器の排気配管へ酸素が注入されたものの、流量および供給量が
過大に設定されていたことから必要量を大幅に上回る酸素が注入され、復水器の真空
度低下に至ったものと考えております。
対策として、以下のことを実施いたします。
・当該酸素流量調節弁の弁棒等を新品に交換し、正常に動作することを確認いたしま
す。
・当該酸素流量調節弁と同型弁の点検においては、分解点検後の組み立て時における
注意事項を施工要領書に明記いたします。
・バックアップ酸素の必要供給量(流量および供給時間)を再評価し、適切な酸素供
給量を決定するとともに、適切な流量調整を行います。
以 上
*1:水素・酸素注入設備
1号機は、原子炉圧力容器内構造物の応力腐食割れの予防保全対策のため、原
子炉給水中に水素を注入しています。また、復水器に移行する余分な水素を安全
に処理するため、復水器の排気の配管にこの水素注入量に見合うだけの酸素を注
入して、化学反応により水にしています。
*2:バックアップ酸素ボンベ
原子炉給水系に注入した水素は、一定の時間遅れをもって復水器の排気配管に
到達します。このため、水素・酸素注入設備が不具合により停止した場合、バッ
クアップ酸素ボンベから自動的に復水器の排気配管へ酸素を注入し、水素過剰状
態(可燃範囲の状態)を回避しています。
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