平成15年8月20日
東京電力株式会社
当社は、本日、品川火力発電所1号系列第3軸(出力38万kW)の営業運
転を開始いたしました。これにより、平成10年4月以来、鋭意建設を進め
てまいりました1号系列114万kW(38万kW×3軸)の全発電設備が営業運
転に入りました。
当設備は、平成8年3月に発電を停止した、旧品川火力発電所(石油火
力発電:37.5万kW・ガスタービン発電:3万kW)の土地および施設の一部
を効果的に活用し、撤去・新設するというスクラップ&ビルド方式で建設
したものです。
発電方式は、最新鋭の改良型コンバインドサイクル発電(ACC:Advanced
Combined Cycle)[注1]を採用し、総発電出力は旧発電所の約3倍の114
万kW(38万kW×3軸)となり、都心に位置する高効率の火力発電所として
東京都の電力自給率向上に大きく貢献いたします。
品川火力発電所1号系列の特長は次のとおりです。
(1)世界最高水準の熱効率50%[注2]を実現
ガスタービンに最新の耐熱材料と冷却技術を導入し、燃焼温度をこれ
までのコンバインドサイクル発電の1,100℃級から1,300℃級へ上昇させ
たことなどにより、世界最高水準の50%という高い熱効率を実現しまし
た。これにより、従来型の汽力発電方式ガス火力と比較して熱効率が約
2割向上し、大幅に燃料が節約できます。さらに、CO2の発生量も抑
制されるなど、地球環境など環境対策面でも優れています。
(2)最新技術の採用で環境にやさしい発電所を実現
1.景観・緑化対策
発電所内の建物は、天王洲アイルや臨海副都心など周辺の景観に
マッチするよう、デザインや色彩に配慮するとともに、緑ゆたかな発
電所づくりにつとめています。
2.大気汚染防止
燃料にはSOx、ばいじんを排出しないクリーンな都市ガスを使用
し、さらに最新型の低NOx燃焼器および高性能脱硝装置を採用しま
した。
(3)約3割のコストダウンを達成
旧設備の効果的な活用、新技術の導入ならびに仕様の合理化・スリム
化等により、発電所全体で当初計画に比べて約3割のコストダウンを達
成しました。
1.旧設備の効果的な活用
旧発電所のタービン建屋の基礎や、取放水路および煙突(外筒及び
内筒の一部)を活用し、コストダウンを図りました。
2.新技術の導入
従来の蒸気タービンでは、2本のローター(車軸)が使われていま
したが、「傾斜熱処理」[注3]という新技術を用いて、2本のロー
ターを1本にしたことにより、タービン軸長を約6m短縮することが
でき、その結果、タービン建屋のコンパクト化につながりました。
3.仕様の合理化・スリム化
機器・配管のレイアウト変更や、タービン建屋の中間に柱を設ける
ことなどにより強度分散を図った結果、建屋の幅を2m減少させるこ
とが可能となり、鉄骨やコンクリート量を大幅に削減することができ
ました。
また、ボイラー内の純水を作る水処理装置において、品川火力発電
所に隣接する大井火力発電所(石油火力;105万kW)と協調した運用
を行うことにより、建設費の削減を図りました。
建設にあたり、地域の皆さまをはじめ関係各方面の皆さまから多大なご
理解とご協力をいただきましたことに、深く感謝申しあげます。
以 上
[注1]コンバインドサイクル発電(CC)とは、ガスタービンと蒸気ター
ビンとを組み合わせたもので、ガスタービンから排出された高温の
排ガスを再利用して蒸気を作り、蒸気タービンとガスタービンで発
電する。従来までの蒸気タービンだけの火力発電に比べ、熱効率を
上昇させ、出力の増加を図ることが可能。改良型コンバインドサイ
クル発電(ACC)とは、従来のコンバインドサイクル発電の燃焼温
度を1100℃級から1300℃級へ上昇させることなどにより、効率をさ
らに向上させたもの。当社のACCとしては横浜火力発電所7・8号
系列、千葉火力発電所1・2号系列、品川火力発電所1号系列、富
津火力発電所3号系列(15年11月全発電設備営業運転開始予定)が
ある。
[注2]本文中の熱効率50%とは燃料のもつエネルギー(発熱量)を高位
発熱量基準(HHV)で表示したもの。低位発熱量基準(LHV)では約55
%に相当する。両者の違いは、燃料中の水分および燃焼によって
生成された水分の凝縮熱を発熱量として含むか否かによるもので
あり、凝縮熱を含むHHV表示の方が発熱量が大きくなるので、熱効
率は低くなる。
[注3]傾斜熱処理とは、1本のローターに、高中圧部、低圧部でそれぞ
れ必要な材料特性を持たせるため、それぞれの部位に異なった熱
処理を加えることをいう。
高中圧ローターには高温強度の高い特性を持たせ、低圧ローター
には脆性破壊に強い特性を持たせる必要があるため、従来はロー
ターを2本用意し別々に熱処理をしていたが、傾斜熱処理技術に
より、1本のローターの部位ごとに異なった熱処理を施すことが
可能になったもの。
品川火力発電所1号系列の概要
1.発電所の概要
(1)所在地
東京都品川区東品川5丁目6番22号
(2)所長
中島 真幸(なかじま まさき)
(3)敷地面積
約10万m2
(4)出力
114万kW(38万kW×3軸)
(5)設備概要
・発電システム 改良型コンバインドサイクル(ACC)
・熱 効 率 50%
・ガスタービン 開放単純サイクル一軸型
1300℃級ガスタービン
・空気圧縮機 軸流型
・排熱回収ボイラ 排熱回収三圧再熱自然循環型
・蒸気タービン 三圧再熱単流排気復水式
・起動装置 サイリスタ起動装置
・発電機 横軸円筒回転界磁三相交流同期発電機
・ばい煙処理設備 煙突:110m、3筒身集合型
(6)燃料
都市ガス
2.主な建設経緯
平成8年3月14日 第132回電源開発調整審議会
平成8年3月14日 電気工作物変更届
平成10年2月10日 工事計画認可
平成10年4月1日 工事開始
平成13年7月12日 1号系列第1軸(38万kW)営業運転開始
平成14年3月6日 1号系列第2軸(38万kW)営業運転開始
平成15年8月20日 1号系列第3軸(38万kW)営業運転開始
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