プレスリリース 2002年

(お知らせ)「福島県核燃料税条例」に関する総務大臣へのお願いについて



                                                  平成14年7月17日
                                                  東京電力株式会社


 当社は、本日、総務大臣に対し、「福島県核燃料税条例」に関するお願
い事項をとりまとめた要望書を、別添の通り提出いたしましたので、お知
らせいたします。

                                                              以上





 
                                                        平成14年7月17日

総   務   大   臣
片 山  虎 之 助 殿

               
                                                 東 京 電 力 株 式 会 社
                                                 取締役社長   南  直哉  

             「福島県核燃料税条例」に関するお願いについて

拝啓 平素は当社事業に対し格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
  この度、貴省に協議書が提出されました福島県核燃料税条例は、従来の核燃料
の価額に対する課税の大幅な税率アップに加え、さらに同じ核燃料の重量へも課
税するという、新税の創設にも等しい全く新たな枠組みによるものです。この結
果、当社の税負担は、現行制度と比べて一気に2倍を超える(「激変緩和措置」で
も2倍近い)水準となり、大幅増税と言わざるを得ません。にもかかわらず、この
大幅増税案は、唯一の納税者である当社との間で十分な協議を経ることなく一方
的に議会に提出され、かつ当社に議会での発言機会も与えられないまま可決され
たものであるなど、手続的にも適正さを著しく欠いています。
  従いまして、当社といたしましては、今回の増税は、到底容認することができ
ず、貴省におかれても不同意とされるべき内容であると考えております。
  今回の増税に関する問題点のポイントは別紙に記載のとおりですが、当社は、
福島県に対し、従来から法人事業税や法人県民税等により多大な貢献をしている
ことに加え、昭和52年度以来通算で900億円を超える莫大な核燃料税を納付し
ており、電源立地に伴う財政需要の増加に対しては既に応分の負担を果たしてき
ております。
  こうした事情の詳細については、是非とも当社から貴省及び地方財政審議会に
対して、ご説明する機会を設けていただきたく、何卒よろしくお願い申し上げま
す。
  そもそも電気事業については、法人事業税が収入金課税であることなどにより、
他業種に比べ税負担が重い一方、電力コスト低減の社会的要請を踏まえて徹底し
たコストダウンに努めているなど厳しい事業環境にあること等をご賢察のうえ、
今回の協議においては何卒、適切なご判断を賜りますようお願い申し上げます。

                                                                  敬 具





〔別紙〕

1.納税者への説明責任が果たされていない

  これまで核燃料税の更新にあたっては、唯一の納税者である当社と十分な協議を経て、ある程
度の合意の下で進められてきました。
  ところが、今回の福島県の新条例は、重量を基準とする課税を新設するなど実質的に新税の創
設というべきであり、かつ課税負担を一気に実質2倍超(「激変緩和措置」適用期間中でもほぼ2
倍程度)にまで引き上げるという大幅な増税案であるにもかかわらず、本年4月25日に突然福
島県より提案されたものであり、税負担の根拠となる財政需要の説明を初めて受けたのは5月9
日になってであります。ちなみに、「激変緩和措置」につきましては、新条例案上程の直前であ
る6月17日まで何らの提案も頂いておりませんでした。この正味約1ヵ月半という短い期間に
当社と福島県との間で、財政需要の具体的内容に関する協議は、議会開会までに6回(議会開会
中に1回)実施されましたが、当社からの質問に対し十分な説明も尽くされないまま、6月20日
には新条例案が県議会に上程され、さらに県議会におきまして公聴会などを通じた納税者として
の発言機会を求めましたものの、その機会すら与えられず、7月5日に一方的に可決されてしま
いました。
 このように福島県が説明責任を果たしていないため、今回の大幅増税の裏付けとなる所要の財
政需要に関しましては、その支出項目及び核燃料税により負担されるべき割合につき福島県と当
社との間でいまだ非常に大きな認識の乖離があります。にもかかわらず、福島県がこの非常に大
きな乖離を埋めようとする誠意を全く示さないまま一方的に条例案を採決し、7月9日の総務大
臣への協議申請に至ったことは、当社として誠に遺憾です。
 法定外税の新設・変更が総務大臣の許可制から同意制に移行したことから、地方自治体には従
来以上の重い説明責任があり、とりわけ、唯一の納税者の課税負担を「狙い撃ち」的に従来の2
倍超にまで引き上げるという、今回の福島県の新条例のような場合には、かかる大幅増税の裏付
けとなる所要の財政需要の内容の合理性について十分な説明を尽くし、その納得を得るようにす
ることが不可欠であるものと考えます。
 特に、今回の福島県の新条例による課税負担は、実質税率16.5%(「激変緩和措置」適用期間
中は13.5%)と、核燃料税を有する他道県における実質税率が7%から10%であるのに比べて突
出しており、福島県だけが他道県に比べて原子力発電所立地に伴う所要の財政需要が突出して増
大するような特別の事情があるとは通常考え難いことに鑑みると、同県が、唯一の納税者である
当社に対し、今回の大幅増税の裏付けとなる所要の財政需要の内容の合理性について十分な説明
を尽くさず、その納得を得る努力がなされていないに等しい態度で臨んでいることには、立法上
重大な疑義が存すると言わざるを得ません。


2.課税自主権の趣旨や憲法上の諸原則からも問題がある

  今回の増税構想は、その地方の自治に関して意思表明することが難しい東京電力という唯一か
つ特定の企業に対して行われるものであり、納税者への説明責任と財政需要の合理性の立証が果
たされない場合は、租税制定権の濫用または租税制定手続上の瑕疵があるとして、憲法違反(憲
法第14条:平等原則、第29条:財産権の侵害及び第31条:適正手続の保障)の疑いが生じる
ものである以上、極めて慎重な取り扱いが必要と考えられます。
  法定外税の新設・変更については、総務大臣との協議を除いては、第三者によるチェックが働
かないうえに、制度上、納税者の弁明の機会が保障されておらず、今回のように課税側が一方的
に手続きを進めてしまうと、特に納税者が選挙権がなく、議会における発言や投票行動による意
思表示の方法が与えられていない企業の場合には、その意思を条例制定過程に反映させる機会が
全くないことから、憲法第84条の趣旨である「代表(同意)無ければ課税無し」という近代民
主主義における基本原理に根本的に反する状態が生じることになります。
 地方分権一括法における地方自治体の課税自主権の尊重に関する立法趣旨は、住民の受益と負
担を明確にして、住民の地方自治への関心や参加意識を高めることと認識しておりますが、今回
の福島県の動きは、この趣旨に則ったものとは到底言えませんし、地方自治体の課税自主権とい
えども憲法の定める諸原則や基本的な法原則に反するものでないことが当然の前提であること
は自明ですから、この点からも、上記で述べたとおり、今回の新条例には極めて重大な疑義が存
します。


3.過重な負担であり且つ実質的な二重課税である

  本条例は、現行条例が核燃料価額に7%の税率を乗じた負担を課すものであるのに対し、その
税率を10%に引き上げたうえ、新たに同じ核燃料の重量1kgにつき11,000円(当面の間は
6,000円)を追加的に課税するもので、これが完全に実施された場合の実質税率は、16.5%にのぼ
ります。この16.5%という実質税率は、現行に比べ2.4倍という著しく過重な負担であるばかり
でなく、核燃料税を有する他道県における実質税率が7%から10%であるのに比べ、著しく突出
しています。同意消極要件にある「著しく過重な負担」とは、担税力との見合いのみならず、受
益の程度や相対的な比較も含めて総合的に勘案されるべきものと考えられますが、そもそも当社
が核燃料税で負担すべき合理的な範囲を逸脱する部分については、本税の法定外税としての趣旨
に照らすと、すべて過重・不当な負担と言うほかありません。この点、今回の増税案による福島
県の核燃料税の実質税率が、納税者の担税力や納税者の受益の程度の点でほとんど同等であると
考えられる他の原子力発電所立地道県における核燃料税の税率に比べて著しく突出しているこ
とは、今回の増税案による負担が、本来合理的に見て当社が負担すべきもの以外の負担まで唯一
の納税者である当社に一方的に転嫁した、「納税者にとって著しく過重」なものに他ならないこ
とを如実に示しています。
  また、核燃料の重量という新たな課税標準の採用は、実質的には「核燃料重量税」とも言うべ
き新税の創設と言い得るうえ、価額課税と重量課税とは、核燃料という同一の対象の「量」を測
定するに際して、従価と従量という異なる角度からの基準を用いたものに過ぎず、実質的に課税
標準を同一にするものであって、同一対象に二重に課税しようとする不合理なものであると言わ
ざるを得ません。


4.核燃料税収で賄おうとする財政需要のうち合理性に欠けるものが多い

  今日のデフレ経済下において、企業は収益の減少を事業の再構築や徹底したコストダウンとい
った懸命の努力によって補っているところですが、地方自治体の運営においても、自主財源によ
る歳入基盤の確立は行財政の効率化を前提としなければならないことは、経済財政諮問会議によ
る「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(閣議決定)でも明示され
ているところです。従って租税賦課の大前提となる財政需要については、効率化の視点に基づい
て精査されたものである必要があり、法定外税の新設・変更にあたっても、当然、こうした視点
により、財政需要が精査されているべきであります。
  また、「その税収を必要とする財政需要があるか」どうかについては、地方税法の改正により、
総務大臣の同意の積極要件としては法律の明文から削除されていますが、これは決して不必要と
なったものではなく、地方自治体がその合理性について責任を持って自ら判断すべきもので、法
定外税が法定税目で賄い切れない税収を確保するための補完的な税であるという趣旨に照らし
ても、その増税に際しては、当該税目と合理的な関連性を有する財政需要が実際に存在すること
が不可欠の前提であることは当然であると考えられます。それにもかかわらず、福島県が列挙す
る財政需要の中には、例えば、福島空港は災害発生時の医療・物資の受け入れ拠点として利用す
るため、その管理費の二分の一を特別の財政需要として見積もられていますが、その内容は、空
港の土木施設・航空灯火施設等の維持管理費や、空港事務所の警備・消防委託等の管理経費など、
原子力発電所が存在しなくても必要となる経常的な経費であるなど、核燃料税で担うべきかどう
かに大いに疑問がある項目が数多く含まれています。また、合理的に負担割合を算出すべき需要
であるにもかかわらず、全てを核燃料税の負担としているものや、負担割合が合理的でない財政
需要が数多く含まれており、仮に、福島県が核燃料税と合理的な関連性を有する財政需要が現実
に存在するというのであれば、その立証責任は、あげて県側にあると言う他ありませんが、本件
では、福島県は、そのような立証はもとより、財政需要の合理性に関する説明責任を果たしてい
ないに等しいと言わざるを得ません。


5.原子力発電施設等立地地域振興特別措置法の活用が先決

  財政需要については、核燃料税創設時の立法経緯からも、すでに設けられている国の支援制度
をまずもって最大限に活用し、それにもかかわらず不足分が生じる場合にのみ、補充的に核燃料
税の活用が検討されるべきことになるものと考えられます。したがって、本件でも、仮に、福島
県が、核燃料税と合理的な関連性を有する財政需要が現実に存在するというのであれば、まずも
って昨年4月に施行された「原子力発電施設等立地地域振興特別措置法」に基づく支援措置を十
分に活用し、それにもかかわらず賄い切れない財政需要が生じる場合にのみ、核燃料税の増税に
関する検討を開始するのが本来の筋道であります。本件では特に、福島県が示している財政需要
は、立地町を中心とした道路整備などがその大半を占めておりますので、昨年4月に施行された
「原子力発電施設等立地地域振興特別措置法」に基づく支援措置を活用すればかなりの財政需要
を吸収できるものと考えられますが、福島県は未だ、同特措法に係わる地域指定すら受けておら
ず、利用可能な財政支援制度を最大限活用していないため、核燃料税で賄うべきものとされてい
る財政需要は必要以上に過大に見積もられております。


6.国の経済施策との整合性を欠く

  原子力発電は、「電源開発促進法」、「電源三法」、「原子力基本法」、「原子力発電施設等
立地地域振興特別措置法」などにおいて国の基幹エネルギーとして位置づけられ、さらに、温室
効果ガス排出抑制の重要な手段として、「地球温暖化対策推進大綱」にも盛り込まれております。
また、石油代替エネルギーとしての原子力発電の重要性と原子力発電所の新設・整備の必要性は、
本年3月22日に閣議決定された「石油代替エネルギーの供給目標について」でも改めて確認され
ているところです。
  今回の福島県のような他の道県では見られない突出した増税が行われれば、原子力発電に関す
る税負担を大幅に増加するものであることから、原子力発電所の新・増設に向けた事業意欲を損
なわせるものと受け止めざるを得ず、その影響が直ちに他の原子力発電所立地道県に波及するこ
とは必至であり、そればかりか、全国の立地地域における課税競争を誘発する可能性が高まると
考えられ、実際にいくつかの自治体では福島県の増税内容に強い関心を示しています。このよう
な増税競争が起きれば、エネルギーの長期的安定供給と地球温暖化への対応のための原子力発電
の推進に大きな障害が生じることになり、国の重要なエネルギー政策が大きく阻害されることに
なります。こうしたエネルギー政策に与える影響については、その所管官庁である経済産業省も
懸念を表明しています。
  本年6月14日に公布・施行された「エネルギー政策基本法」第6条では、「地方公共団体は、
(エネルギーの需給に関する施策についての)基本方針にのっとり、エネルギーの需給に関し、国
の施策に準じて施策を講ずるとともに、その区域の実情に応じた施策を策定し、及び実施する責
務を有する」とされているところでもあります。
 また、「経済構造の変革と創造のための行動計画(閣議決定)」において、電力コスト低減によ
る産業の活性化は、重要な経済施策と位置づけられております。当該増税構想は、大幅な負担増
を課すことになりますが、この負担増は、安易に料金へ転嫁できる状況にはないどころか、一層
の料金低減を求められている中で大きな足かせとなり、国の施策を大きく阻害すると考えており
ます。
 以上のとおり、今回の福島県の他の道県では見られない突出した核燃料税の増税案が、国の重
要な経済施策やエネルギー政策に反することは明らかです。

                                                                                以 上

























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