富津火力発電所3号系列(第4軸)の営業運転開始について
~世界最高水準の熱効率50%を実現するとともに、 建設費の約3割のコストダウンを達成~
平成13年7月9日
東京電力株式会社
当社は、平成10年5月より、富津火力発電所3号系列の増設工事を進めてまい
りましたが、本日、初軸にあたる第4軸(38万kW)の工事が完了し、営業運転を
開始いたしました。
この度運転を開始する3号系列は、既設の1・2号系列(コンバインドサイク
ル発電、100万kW×2)にさらなる技術革新を加えた改良型コンバインドサイクル
発電(ACC:Advanced Combined Cycle)(注1)で、当社としては横浜火力発電所
7・8号系列、千葉火力発電所1・2号系列に続いて3番目の採用となります。
今後は、残りの各軸ごとに順次運転を開始し、平成17年6月には3号系列の全
てが営業運転を開始する予定で、合計出力は152万kW(38万kW×4軸)となります。
富津火力発電所3号系列の特長は次のとおりです。
(1)世界最高水準の熱効率50%を実現
ガスタービンに最新の耐熱材料と冷却技術を導入し、燃焼温度をこれまでの
コンバインドサイクル発電の1,100℃級から1,300℃級へ上昇させたことなどに
より、世界最高水準の50%という高い熱効率を実現しました。これにより、従
来型のガス火力と比較して約2割効率が向上し、大幅な燃料の節約となります。
さらに、CO2の発生量も抑制され、地球環境など環境対策面でも優れています。
(2)約3割のコストダウンを達成
新技術の導入や、設備仕様のスリム化・合理化などにより、設計当初に比べ
建設費の約3割のコストダウンを達成いたしました。
1、新技術の導入
従来の蒸気タービンでは、2本のローター(車軸)が使われていましたが、
「傾斜熱処理」(注2)という新技術を用いて、2本のローターを一体化し
たことにより、タービン軸長を約5m短縮することができ、その結果、ター
ビン建屋のコンパクト化につながりました。
2、設備仕様の見直し
機器・配管のレイアウト変更や、タービン建屋の中間に柱を設けることな
どにより強度分散を図った結果、建屋側壁の厚みを2m減少させることが可
能となり、鉄骨やコンクリート量を大幅に削減することができました。
(3)最新技術の採用で環境にやさしい発電所を実現
1、大気汚染防止
燃料にはクリーンなLNGを使用し、SOx、ばいじんの排出をなくすと
ともに、最新型の低NOx燃焼器および高性能脱硝装置を採用しました。
さらに、3・4号系列増設後もこれまでの発電所全体のNOx量を維持す
るため、既設1・2号系列の燃焼器及び脱硝装置を改造するなどの対策を行
いました。
2、景観・緑化対策
建物や煙突などの形状、色彩を発電所周辺の環境と調和させる景観対策を
実施したほか、常緑広葉樹・落葉広葉樹等による発電所構内の緑化に努めて
まいります。
建設にあたりましては、地域の皆さまをはじめ関係各方面の皆さまから多大な
ご理解とご協力をいただきましたことに、深く感謝申しあげます。
(注1)コンバインドサイクル発電とは、ガスタービンと蒸気タービンとを組み
合わせたもので、ガスタービンから排出された高温の排ガスを再利用し
て蒸気を作り、蒸気タービンとガスタービンで発電する。従来までの蒸
気タービンだけの火力発電に比べ、熱効率を上昇させ、出力の増加を図
ることが可能。改良型コンバインドサイクル発電(ACC)とは、従来
のコンバインドサイクル発電の燃焼温度を1100℃級から1300℃級へ上昇
させることなどにより、効率をさらに向上させたもの。
(注2)傾斜熱処理とは、1本のローターに、高中圧部、低圧部でそれぞれ必要
な材料特性を持たせるため、それぞれの部位に異なった熱処理を加える
ことをいう。高中圧ローターには高温強度の高い特性を持たせ、低圧ロ
ーターには脆性破壊に強い特性を持たせる必要があるため、従来はロー
ターを2本用意し別々に熱処理をしていたが、傾斜熱処理技術により、
1本のローターの部位ごとに異なった熱処理を施すことが可能になったもの。
以 上
富津火力発電所3号系列の概要
1.発電所の概要
(1)所在地
千葉県富津市新富25
(2)所長
吉田 政人
(3)敷地面積
約116万m2(うち3号系列・4号系列は22万m2)
(4)出力
152万kW(38万kW×4軸)
(5)設備概要
・発電システム 改良型コンバインドサイクル(ACC)
・熱 効 率 50%
・ガスタービン 開放単純サイクル一軸型
1300℃級ガスタービン
・空気圧縮機 軸流型
・排熱回収ボイラ 排熱回収三圧再熱自然循環型
・蒸気タービン 三圧再熱単流排気復水式
・起動装置 サイリスタ起動装置
・発電機 横軸円筒回転界磁三相交流同期発電機
・ばい煙処理設備 煙突:150m 7筒身集合型(3・4号系列共通)
(6)燃料
LNG(液化天然ガス)
(7)総工事費(3号系列)
約1,700億円
2.主な建設経緯
平成9年12月15日 第136回電源開発調整審議会
平成10年1月23日 電気工作物変更届
平成10年3月10日 工事計画認可
平成10年5月26日 着工
平成12年12月26日 試運転開始(初並列)
平成13年7月9日 3号系列第4軸営業運転開始
3.今後の運転開始予定
3号系列:3軸 平成13年12月
2軸 平成16年12月
1軸 平成17年6月
<参考>既設1・2号系列の概要
◆1・2号系列(既設)
・出力 1号系列:100万kW(16.5万kW×7軸)
2号系列:100万kW(16.5万kW×7軸)
・発電システム コンバインドサイクル(CC)
・熱効率 42.7%
・燃料 LNG(液化天然ガス)
・運転開始 1号系列:昭和61年11月(全軸運転開始)
2号系列:昭和63年11月( 〃 )
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