世界初の「コンクリート資源循環システム」を開発・実用化
~解体コンクリートを建物の構造材料として100%リサイクル、循環型社会の実現に貢献~
平成13年3月22日
清水建設株式会社
東京電力株式会社
このほど清水建設(株)<社長 野村哲也>と東京電力(株)<社長 南直哉>は、解
体コンクリートを建物の構造材料として100%リサイクルする、世界初の「コンクリー
ト資源循環システム」を共同で開発・実用化しました。すでに2月から、清水建設技術
研究所 音響実験棟の建築工事において、本システムで製造したリサイクルコンクリー
トの打設を開始しています。なお、開発・実用化にあたっては、北海道大学工学部 友澤
史紀教授の指導をいただいています。
資源のリサイクルに対する社会的な関心が高まっているなか、鉄筋コンクリート造の
建物を解体することによって発生する、コンクリート塊(解体コンクリート)の処理問題
が懸念されています。これは、今後、老朽化した鉄筋コンクリート造建物が順次解体さ
れ、解体コンクリートが大量に発生することが予想される一方で、現在確立されている
路盤材としての再利用方法だけでは処理できる量に限界があり、さらに最終処分場も飽
和状態になりつつあるためです。
こうしたことから、鉄筋コンクリート造建物を多数建設してきた清水建設と、事業所
や電力設備など、大型の鉄筋コンクリート造建物を多数所有する東京電力は、共同で
「コンクリート資源循環システム」を開発・実用化いたしました。
具体的には、解体コンクリートを高品質の再生骨材(砂利と砂)と微粉末 (セメント成
分)とにほぼ完全に分離し、高品質の再生骨材は構造用コンクリート骨材として、微粉
末はセメント原料として建物の建設に再利用するもので、解体、分離・再生、再利用と
いう個々の要素技術を、ひとつのシステムとして構築したという点で画期的といえます。
また、再生骨材の品質は、天然骨材に限りなく近く、JISの生コンクリート用骨材と
しての規格を満足するほか、微粉末は地盤改良材や汚泥処理剤として再利用することも
可能です。
本システムを活用することにより、
(1)解体コンクリートを、建物の構造材料として100%リサイクルできることにより、新
たな天然骨材の採取が抑制でき、環境に優しい循環型社会の構築に貢献できる。
(2)解体と建設がセットになった工事に適用した場合、解体コンクリートから製造した
再生骨材で構造用コンクリート骨材の100%あるいは大部分を補うことができるため、
解体コンクリートの処分費用や新たな骨材の購入費用を削減でき、再生骨材の製造
費用などを差し引いても、解体・建設費用をトータルで削減できる。
などのメリットがあります。
今回、清水建設技術研究所 音響実験棟(東京都江東区)の建築工事へ適用する再生
骨材の大部分は、東京電力旧技術研究所(東京都調布市)の解体で発生した解体コンクリ
ートから製造したもので、微粉末についてはその一部を音響実験棟の汚泥処理剤として
再利用し、残りはセメント工場でセメント原料として再利用しました。実験棟へのリサ
イクルコンクリートの総打設量は約500m3で、建物全体に打設します。今後は、リサ
イクルコンクリートの強度や耐久性に関する学術的なデータを音響実験棟から継続的に
収集するとともに、さらにリサイクルコンクリートを解体・再利用する技術の実現に向
け、研究開発に取り組んでいく計画です。
なお、今回の循環システムの構築にあたっては、新エネルギー・産業技術総合開発機
構(NEDO)の協力を得て、同機構が平成10年度から取り組んできた「廃コンクリート等
建材リサイクル技術の開発」の成果である再生骨材製造プラントを使用しました。
今後とも両社は、「コンクリート資源循環システム」を積極採用して循環型社会の構
築に寄与していくとともに、鉄筋コンクリート造建物の解体・建設にともなう建設費の
削減を図ってまいりたいと考えております。
以 上
<別 紙>
「コンクリート資源循環システム」開発の概要
1.研究主体
○清水建設株式会社
所在地:東京都港区芝浦1-2-3 シーバンスS館 電話:03-5441-1111
社 長:野村 哲也
○東京電力株式会社
所在地:東京都千代田区内幸町1-1-3 電話:03-3501-8111
社 長:南 直哉
2.研究期間
1998年4月~2001年3月
3.費用負担
1億3千万円
4.システム適用の手順 (添付の図解資料参照)
(1)建物の解体前に、コンクリートの塩化物量や骨材のアルカリ骨材反応性の有無など
を調査し、当該コンクリートのリサイクルへの適否を調査する。
(2)リサイクルできる場合、分別解体したコンクリート塊を40mm程度以下の粒度になる
ように破砕する。
(3)破砕したコンクリートは、再生骨材製造プラントにおいて、約300度Cに加熱して中
に含まれるセメント水和物を脆弱化し、これを磨砕・除去することによって、再生
骨材と微粉末とに完全分離する。
(4)分離した再生骨材は、コンクリートの製造管理に必要な吸水率や粒度分布等の特性
を確認した後、生コン工場に供給する。
(5)生コン工場で再生骨材を使って製造されたリサイクルコンクリートは、建物の構造
用コンクリートとして打設する。
(6)微粉末はセメント工場でセメント原料として再利用するほか、新築工事現場の地盤
改良材や汚泥処理剤として再利用する。
5.これまでの経緯
・昨年9月末に東京電力旧技術研究所のコンクリートを調査してリサイクルに適してい
ることを確認
・10月下旬から破砕したコンクリートを解体現場から再生骨材製造プラントに搬送
・11月から解体コンクリートを骨材と微粉末とに分離
・平行してリサイクルコンクリートの調合を検討し、約20m3の試験練りならびに試験
打設を実施して通常のコンクリートと同等の品質が確保できていることを確認
6.東京電力旧技術研究所の建物概要
所在地:東京都調布市西つつじヶ丘2-4-1
規 模:建築面積2,700m2、延床面積9,100m2、4階建て
竣工年:1960年
7.清水建設技術研究所 音響実験棟の建物概要
所在地:東京都江東区越中島3-4-17
規 模:建築面積350m2、延床面積660m2、3階建て
工 期:2000年11月~2001年8月
以 上
|