プレスリリース 2000年

福島第二原子力発電所1号機の定期安全レビュー報告書の提出について



                                                  平成12年5月29日
                                                  東京電力株式会社


 当社は、本日、福島第二原子力発電所1号機(所在地:福島県双葉郡楢
葉町、沸騰水型、定格出力110万キロワット)の定期安全レビューの報告書
を取りまとめ、通商産業省へ提出しました。
 定期安全レビュー(PSR:Periodic Safety Review)は、自主保安活動の
一環として、既設の原子力発電所の安全性・信頼性のより一層の向上を目
的として、約10年ごとに、発電所での運転経験、技術的知見及び確率論的
安全評価にもとづき、原子力発電所の安全性等を総合的に評価するもので
す。
 今回対象とした福島第二原子力発電所1号機は、昭和57年4月(当社で
7番目)に営業運転を開始した沸騰水型軽水炉です。今回の報告は、平成
4年6月、通商産業省より定期安全レビューの実施について要請もあり、
福島第一原子力発電所1~6号機の6基に引き続いて、これまで自主保安
として実施した活動の成果を、報告書として体系的に評価し、取りまとめ
たものです。

 福島第二原子力発電所1号機で実施した定期安全レビューの概要は、次
のとおりです。

(1)運転経験の包括的評価
  運転管理、保守管理、燃料管理、放射線管理、放射性廃棄物管理、事
故・故障等の対応及び緊急時の措置の各分野ごとに運転開始から現在ま
での各種のデータのトレンド、設備や管理の改善状況等を整理した。こ
の結果、発電所の安全性等を維持向上させる諸活動は、国内外の事故・
故障等の教訓等を適切に反映し、運転開始当初より改善されてきており、
安全性・信頼性は高い水準にあることを確認した。

(2)最新の技術的知見の反映
  運転開始以降、新たに得られた技術的知見が安全性向上のため、適切
に設備へ反映されているかどうかを評価した。この結果、最新の技術的
知見が設備の改善や原子炉の安全性評価手法等に適切に反映され、安全
性の向上が図られてきていることを確認した。

(3)確率論的安全評価
  確率論的安全評価を実施して、炉心及び格納容器の健全性の維持のた
めの安全上の特徴を把握し、本原子炉施設の安全性は原子炉の停止、炉
心の冷却、放射性物質の閉じ込めといった基本的な安全機能により十分
確保されていること、整備されたアクシデントマネジメント策の効果が
十分に認められることを確認した。

 今回の定期安全レビューの結果、福島第二原子力発電所1号機の安全性
・信頼性が高い水準にあることを確認いたしました。これは、厳格な運転
管理や設備の更新・改良等を含む予防保全を基本とした、適切な保守管理
や国内外の事故・故障等の経験に基づく再発防止策の的確かつ継続的な実
施による成果であると考えます。

 当社は、今回の定期安全レビューの結果を踏まえ、さらに原子力発電所
の安全性、ならびに安全に対する取り組みについて引き続き一層努力し、
社会の一層のご理解と信頼を得てまいりたいと考えております。


                                                          以  上
 福島第二原子力発電所1号機の定期安全レビューに関する報告書要旨

1.福島第二原子力発電所1号機について

  福島第二原子力発電所1号機は、昭和57年4月、当社で7番目に営業
運転を開始した定格出力110万キロワットの沸騰水型軽水炉です。
  運転実績としては、営業運転開始から平成10年度末までの平均設備利
用率は76.2%、法律対象の故障・トラブル報告件数は13件、通商産業大
臣通達に基づく軽微な故障等の報告件数は7件、事故・故障等による計
画外停止は9回であります(添付1、2参照)。

2.福島第二原子力発電所1号機の定期安全レビュー報告書の要旨

(1) 運転経験の包括的評価
  福島第二原子力発電所1号機の運転経験について運転管理、保守管理、
燃料管理、放射線管理、放射性廃棄物管理、事故・故障等の対応及び緊
急時の措置の各分野ごとに運転開始から現在までの各種のデータのトレ
ンド、設備や管理の改善状況等を整理し、発電所の安全性等を維持向上
させる諸活動の実施状況及び今後取り組むべき点について検討しました。
また、国内外の事故・故障等の教訓の反映状況も確認しました。
  運転管理については、運転体制、運転業務、教育・訓練の調査を行い
ましたが、米国スリーマイルアイランド発電所の教訓を反映した運転マ
ニュアルの改善をはじめとして適時広範な改善を重ね、運転管理の充実
が図られています。
  保守管理については、これまでの定期検査の結果、設備の改善・取替
状況及び保守管理体制等について調査を行いましたが、定期点検・検査
の結果に基づき適切な予防保全対策を実施し、アクシデントマネジメン
ト策等の計画的改造・取替による設備の信頼性の維持向上が図られてい
ます。
  燃料管理については、燃料の健全性確保及び信頼性向上への取組状況
について調査を行いましたが、燃料、炉心に係る運転上の制限の遵守、
燃料設計の改良等が適切に行われ、運転実績は極めて良好なものとなっ
ています。
  放射線管理については、線量当量管理状況の調査を行いましたが、定
期検査における放射線業務従事者の線量当量は、大型の改造工事等があ
る時を除き年々減少してきています(添付3参照)。
  放射性廃棄物管理については、放射性廃棄物の処理状況の調査を行い
ましたが、放射性気体及び液体廃棄物の放出量ならびに放射性固体廃棄
物の発生量は着実に減少してきています(添付4、5参照)。
  緊急時の措置については、組織の整備、資機材の整備、緊急時演習も
適切に行われています。
  事故・故障等の経験反映状況については、国内外の事故・故障から得
られた経験が設備面の改善や運転マニュアルあるいは教育・訓練等の管
理面の改善に適切に反映されています。
  今後とも運転経験から得られた教訓を反映して、発電所の設備及び管
理の改善を図っていくこととします。

(2) 最新の技術的知見の反映 
  軽水炉の安全性に関連する重要な技術的知見を安全研究成果、国内外
の原子力発電所で生じたさまざまな事象、新技術の開発成果等から抽出
し、これらの最新の技術的知見が適切に反映され、安全性の向上が図ら
れてきているか、また更なる改善の余地はないかを調査・評価しました。
  安全研究成果としては、日本原子力研究所等で行われた実験に代表さ
れる原子炉の安全性に関する研究により、原子炉の異常時の現象がより
詳細に把握されるようになってきましたが、これらの知見に照らしても
当該号機は十分な安全性を有しています。
  国内外の原子力発電所で生じた様々な事象から得られた知見としては、
スリーマイルアイランド発電所の事故からマン・マシンインターフェイ
スの重要性が認識されたこと等がありますが、これらについても当該号
機の中央制御室の重要計器類に対して、カラーコーディングを行う等の
改善が実施されてきています。
  新技術の開発成果としては、燃料の信頼性向上や使用済燃料発生の低
減を目的とした設計の改良、管理区域内の線量当量率を低減するための
復水ろ過装置の開発等が行われていますが、これら成果も最新の原子力
発電所と同様当該号機に取入れられています。また、信頼性向上のため
に計算機技術の進歩を反映したプラントパラメータを集約表示する装置
(CRT)を中央制御室に設置する等の改善を行っており、放射性固体廃棄物
の発生量低減についても、プラスチック固化装置、雑固体廃棄物焼却設
備等を順次導入してきています。
  これらの結果、当該号機は、最新の技術的知見が原子炉施設の安全を
確保する上で重要な施設に適切に反映され、安全性の向上が図られてき
ていることを確認しました(添付6参照)。

(3) 確率論的安全評価
  原子力発電所の安全性を定量的に評価するために有効な手法である確
率論的安全評価は、原子力発電所で発生する可能性のある異常事象を想
定し、その後の事象進展の確率を設備構成や故障率等をもとに推定、評
価するものです。
  確率論的安全評価の結果、本原子炉施設の炉心損傷頻度は10-8/炉
年程度であり、例えば「原子力発電プラントの基本安全原則(INSAG-3)」
(IAEA国際原子力安全諮問委員会、1988)が示す目標(既設炉に対して
10-4/炉年以下、新設炉に対して10-5/炉年以下)に対して、これ
を十分に下回るものです。
  また、炉心及び格納容器の健全性の維持のための安全上の特徴に関す
る知見が得られ、本原子炉施設では原子炉の停止、炉心の冷却、放射性
物質の閉じ込めといった基本的な安全機能に対して種々の安全設備を多
重に設け、また、定期的に検査を行っていること等で、これら安全機能
が高い信頼性を確保していることが示されました。これまでにも、本原
子炉施設の安全性は十分確保され、炉心が大きく損傷するような事態は
現実に起こるとは考えられませんでしたが、アクシデントマネジメント
策の整備により、この高い安全性が一層向上したことを確認しました。


                                                          以  上
  



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