鉄骨構造の既設建築物を耐震補強する新工法の開発と耐震工法としての公的認定の取得について
~施工が容易で工期が短く、しかも低コストな「ボルト調整方式による座屈補剛ブレース工法」という新開発の工法が信頼性の高い有効な耐震工法として評価される~
平成12年5月15日
東京電力株式会社
東電設計株式会社
株式会社竹中工務店
東京電力(株)、東電設計(株)、(株)竹中工務店の3社は約1年半をかけて、
鉄骨構造の既設建築物への耐震補強工事を短工期・低コストで実現する新工法「ボル
ト調整方式による座屈補剛ブレース注)工法」を開発(現在特許申請中)いたしまし
たが、このたび同工法について(財)日本建築センターから耐震工法としての公的認
定を受けました。これによって当工法採用についての許可手続きが容易になり、今後
広く一般に鉄骨構造建築用耐震補強工法として適用されることが見込まれます。
これまで既存の鉄骨構造建物の耐震性を向上する方法としては、
・既存のブレース(筋かい)を取り外して耐力の高いものに取り替える
・新たにブレースを増設する
・新たに鋼板壁を設ける
などの方法が採用されていました。しかし、これらの方法は、工事が大規模となり、
コストアップや工事長期化が避けられないなどの問題がありました。
このほど開発した新工法は既存のブレースのまわりに鋼管補剛材を巻いて補強する
という比較的簡単な方法で、長さ10m程度のブレースまで幅広く適用でき、電力設備
はもとより、大規模ショッピングセンターやオフィスビルなど各種鉄骨建築物のほと
んどの事例に採用可能であることが特徴です。
また、この工法を採用するメリットとしては次の点が挙げられます。
・鋼管補剛材が軽量であり、取付けが容易。従って、簡単な補強工事で済むため、
施工期間が短い
・市販の鋼材を利用するためコスト低減が図られる
・新たなブレースや鋼板壁を設けないため、工事エリアの縮小が図られる
・既設ブレースを活用するため資源の有効利用につながる
なお、この新工法は東京電力・大井火力発電所2号機本館建屋など東京電力の火力発
電所建物3棟(大井、横須賀、鹿島)の耐震補強工事にすでに採用しており、従来の耐
震補強工法(耐力の高いブレースを新たに取り付ける場合)に比べ、ブレース部分の補
強工事を約半額に削減でき、しかも工期を約半分以下に短縮することができました。今
後も引き続きこの工法を採用することにより、東京電力では年間5千万円程度の設備投
資額の削減を見込んでおります。
以 上
注)ブレース:地震や台風による建物の変形や倒壊を防ぐために開口部などに斜交にわ
たす補強材(筋かい)のこと。95年の阪神・淡路大震災では、ブレースの有無だけ
でなく、強度でも明暗を分けたケースがあるとの報告がある。地震でブレースがた
わみすぎると、力が建物の柱・梁に直接伝わり倒壊しやすくなることから、たわみ
にくくするブレースの補強は耐震性向上に大きく寄与する。
<参 考>「ボルト調整方式による座屈補剛ブレース工法」3社共同開発の概要
1.開発主体
○東京電力株式会社<役割:企画立案及び性能試験総括>
・所在地:東京都千代田区内幸町1-1-3
・電 話:03-3501-8111
・取締役社長:南 直哉
○東電設計株式会社<役割:設計手法の構築>
・所在地:東京都台東区東上野3-3-3
・電 話:03-5818-7777
・取締役社長:石井 清
○株式会社竹中工務店<役割:性能試験の計画及び実施>
・所在地:大阪市中央区本町4-1-13
・電 話:06-6252-1201
・取締役社長:竹中 統一
2.開発期間
平成10年8月~平成12年2月(共同研究)
3.開発費用
2千万円
4.特許申請日
平成11年5月18日
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