平成12年3月9日
東京電力株式会社
当社は、高品質な電気を必要とする精密機器をお持ちのオフィスや病院などのお客
さまに対して、停電や瞬時電圧低下(注)などの影響を防ぐために、バックアップ電
源装置(UPS)を設置するなどの自衛措置を講じていただくようお願いしておりま
すが、このたび、低コストで省エネルギータイプの新型UPSを開発いたしました。
当社はかねてより、電力供給に対する落雷などの影響を小さくするため、避雷器や
架空地線の設置や各種設備の多重化などをすすめるとともに、自動制御の保護リレー
システムなどによって、影響の発生する範囲・時間を最小限に抑える努力を重ねてま
いりました。その結果、電気の品質は既に技術的にも経済的にもほぼ限界といえる水
準に達しており、それだけに雷の影響や予測できないトラブルなどによって、停電や
瞬時電圧低下の影響を受けるコンピュータなどの機器については、必要に応じてお客
さまの方で自衛措置を講じていただくようお願いしております。
これまでのUPSは、交流である商用電源を一旦直流に変換した後、交流に再度変
換し直して供給するため、電力変換装置が2台必要で、イニシャルコスト(製造コス
ト)は約20万円/kVAと割高でした。
これに対し新開発のUPSは、電源側に事故があった場合に、0.002秒以内の超高
速で切替えできる高速スイッチを設け、電力変換装置を1台のみとしたため、イニシ
ャルコストを約2~5割低減することができました。(1kVAあたり約10~15万円程
度となり、100kVAの新型UPSで500~1,000万円の低下)
また、通常時には商用電源から直接電気を供給するため、電力損失を既存のUPS
(10~15%)と比べて低損失(約2%)に抑えることが可能となり、その結果、UP
Sのランニングコスト(電気代)を約80%削減することができます。(1kVAあたり
1.2万円/年から0.2万円/年へ、100kVAの新型UPSでは年間100万円の電気代の節約)
当社はこの新型UPSを、既存UPSでは対応が困難とされたモーターを保有する
産業用のお客さまをはじめ、幅広いお客さまへPRしてまいる予定です。
電力小売自由化の下で当社は、今後とも総合エネルギー・サービス企業として、さ
まざまなお客さまニーズにお応えできるよう、サービスの充実やそのための技術開発
に積極的に取り組んでまいります。
以 上
(注) 瞬時電圧低下は、停電と異なり広い範囲のお客さまに影響を与える。発生原因
のほとんどは雷や雪によるもので、概ね年間2~10回程度発生する。継続時間は2万
ボルト以上の特別高圧系統で0.2秒未満、高圧系統では0.3秒程度。
<参考>
低コスト・省エネ型の高速バックアップ電源装置(UPS)の概要
1.研究体制
(1)研究期間:平成6年8月~平成12年3月
(昨年7月から、技術開発センター内の系統シミュレータを負荷とし
て実証試験を実施)
(2)研究箇所:技術開発センター・電力技術研究所
所在地:横浜市鶴見区江ヶ崎町4-1、Tel 045-613-1111(代表)
(3)研究費用:約3.9億円
2.実証試験機主要諸元
(1)容 量:100kVA
(2)電 圧:210V(50Hz)
(3)性 能:停電や瞬時電圧低下などに影響を受けやすい敏感な重要負荷に対して、
通常時は商用電源から直接供給する一方、電源に異常が発生した場合
は、0.002秒(50Hzの場合は0.1サイクル)以内の高速で商用電源から
切り離すとともに、蓄電池と電力変換装置によってバックアップを行
う。また、既存のUPSでは不得意であった起動時に大電流を必要と
する工場などのモーターにも活用できる。
(4)価 格:約10~15万円/kVA(既存UPSは約20万円/kVA程度、将来は量産化に
より約10万円/kVAまで値下げできる見通し)
(5)大きさ:2.4 m(幅)× 0.7 m(奥行き)× 1.9 m(高さ)
以 上
|