平成12年2月24日
東京電力株式会社
英国原子燃料会社(BNFL社)による関西電力(株)高浜発電所3号機及び4号
機のMOX燃料のデータ改ざん問題に関連して、通商産業省から当社に対し、福島第
一原子力発電所3号機に装荷する予定のMOX燃料についても、異なった製造者(ベ
ルゴニュークリア社)ではあるが、念のためデータの確認を再度行うように指示があ
りました。
このため、当社は、昨年9月にMOX燃料ペレット外径寸法データに加え、他の品
質管理データについて信頼できることを確認しておりますが、再度現地に社員を派遣
し、福島第一原子力発電所3号機並びに柏崎刈羽原子力発電所3号機に装荷する予定
のMOX燃料について再確認を実施しました。
昨年9月には品質管理データを取り扱う方法に重点を置き、品質管理データに疑義
がないことを確認しましたが、今回の再確認ではさらに製造管理、品質保証体制、品
質管理データの取扱いについて入念な確認を実施いたしました。
この結果、当社福島第一原子力発電所3号機並びに柏崎刈羽原子力発電所3号機に
装荷する予定のMOX燃料に関しましては、品質管理データの信頼性は極めて高く、
十分な品質管理の下で製造されていることを、再確認いたしました。
本日、当社は、これらの再確認結果を取りまとめ、通商産業省に報告いたしました
のでお知らせいたします。
再確認結果の概要は以下の通りです。
1.MOX燃料の製造・検査
ベルゴニュークリア社は、燃料製造を専門とするメーカーとしてMOX燃料製造に
関して長い経験と多くの良好な実績を有している。
ペレット成型加工については、製造部門において焼結ペレットを砥石により精密に
研削し、外径寸法として10.35±0.02mm仕様に仕上げられる。
研削後、外径寸法については、製造部門が、全数レーザー計測装置で測定し、製造
管理上の管理値(仕様公差0.02mmよりも小さい値)を超え た場合には、研削機を微
調整し、十分仕様値を満足するペレットを製造 するとともに、万一、仕様値から外
れたペレットが発生した場合には製 造ラインから除外している。
製造部門における研削が終了した燃料ペレットは、製造部門とは独立した品質部門
においてデジタル式マイクロメーターにより抜取りで外径 検査を行う。この抜取り
率は、国際規格(ISO2859,MIL- STD-105D)に基づいて設定されたもの
である(注)。
(注)一つの混合容器で混ぜ合わされたMOXブレンダー(約7000個のMOXペ
レットができる)あたり、32個以上を抜取り検査し、仕様値を外れるペレッ
トが1個でもあれば、当該ブレンダーを不合格とする(0,1判定)。
2.品質管理状況
ベルゴニュークリア社の品質管理に関する組織、文書体系、教育・訓練、不適合処
置、内部監査、社外機関による認証・監査について再確認した結果、品質保証システ
ムがIAEAの基準を満足していること、製造部門と品質部門の責任が明確になって
いること、作業員の教育・訓練が適切に実施されていること、ISO9002の認証を受
けていること等から十分な品質保証体制を有していることを確認した。また同社は、
フラジェマ(仏)、シーメンス(独)といった原子力プラントメーカーやEDF(仏)
といった電力会社等、多数の顧客による品質監査を受けている。
3.MOX燃料の製造実績
ベルゴニュークリア社は燃料製造を専門とするメーカーとして、25年以上の長期に
わたって、商業ベースで安定した製造実績を積み重ね(約21万本以上のMOX燃料棒
を製造、1999年9月末現在)、良好な品質保証レベルを維持していることを確認した。
4.当社及び設計メーカーの品質管理
福島第一原子力発電所3号機並びに柏崎刈羽原子力発電所3号機に装荷する予定の
MOX燃料の製造にあたっては、当社並びに設計メーカー自らが実際の製造に先立っ
て工場の品質監査・調査及び製造確認試験を実施し、また製造期間を通じて、当社並
びに設計メーカーが3人1組となって両号機合わせて約1年間にわたり立会検査を実
施した。
5.品質管理データの信頼性の再確認
(1)MOX燃料ペレットの外径測定について
製造部門で仕様値内と測定されたペレットは、次に品質部門において抜取り検査
が行われる。
・MOX燃料ペレットの外径測定方法に関して、ペレットの抜取り、測定、評価が
それぞれ別の人間によって行われていること、測定データは自動的にコンピュータ
に伝送・記録されること、品質管理担当者はコンピュータ内のデータを読み取るこ
としかできず測定データの変更ができないこと等からデータをねつ造する余地がな
いことを確認した。
・ペレット外径寸法に関して、当社が立ち会った外径寸法データとこれに相当する
ベルゴニュークリア社の品質管理データとの比較(類似の分布形状となっている)
や、品質管理データの分布と燃料設計上想定している統計分布の比較(品質管理デ
ータの分布のばらつきが小さい)、品質管理データの中における同一パターンの数
列の並びのチェック(不自然な同一パターンの並びは生じていない)を行い、不自
然なデータのばらつきや繰り返しがないことを確認した。
(2)その他の品質管理データ
MOX燃料ペレットの他の品質管理データ(不純物、化学成分、等価核分裂物質
濃度、プルトニウム均一度)についても、その元データが記載されている記録シー
トを確認することにより、元データが適切に管理されていることを確認した。
なお、本確認作業の実施にあたっては、確認作業の客観性を確保するため、ベルギ
ーの第三者認証機関であるAIB-Vincotte International(エーアイビーバンソットイ
ンターナショナル)のチェックを受けています。
以上
(別紙)
○ベルゴニュークリア社の概要
(1)設立 1957年
(2)事業内容 MOX燃料棒の製造(1973年以降)
(3)従業員 ブリュッセル本社 約100人
デッセル工場 約250人
(4)資本金 約20億円
ベルギー政府50%、ベルギー電力等50%
(5)製造能力 35tHM/年(最大40tHM/年)
(6)製造実績 約410tHM(1999年末実績)
(7)品質保証システムの認定、監査等を実施した機関等
第三者機関:TUEV(ドイツ技術検査協会)
DSIN(フランス原子力施設安全局)
メーカー :フラジェマ(仏)、シーメンス(独)、
東芝、日立、JNF 等
電力会社 :EDF(仏)、PE(独)、KKP(独)、
東京電力 等
なお、1995年にISO9002認証取得、1998年に認証更新。
○AIB-Vincotte Internationalの概要
(1)設立 1998年
(2)事業内容 作業環境の安全や機器の信頼性の検査、ISO9000(EN290
00)に則った品質システムの認証、適切な非破壊検査の提案と
いった業務
(3)従業員 約350人
(4)資本金 約1.5億円
AIB-VincottecInternationalは、AIB(1890年設立)、Vincotte1872年設立)が
中心となり1989年に設立されたAIB-Vin otteグループ(ベルギー)のメンバー会
社の一つであり、従業員は350人を擁する。主に民間企業が自主的に行う検査の
チェックを行っており、その活動範囲は日本を含め約40カ国に及んでいる。AIB
-Vincotte International自身の検査機関としての独立性は、出資元にメーカー
等利害関係を有する会社等が含まれていないことに加え、ベルギー認証当局、欧
州検査・認証機構、国際認証ネットワークからも認められている。
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