【火力発電所に潜入!】電気はこうして作られる
2016/06/17
LNG基地と発電所を併せ持つ東扇島火力発電所の内部に迫る
現在首都圏に供給される電気の約9割は、火力発電によって作り出されています。火力発電所のこと、みなさんはどれくらいご存じですか?火力発電所はどのような場所で、そこでどのように電気が作られているのか?火力部の沖浦功一が、入社以来13年間を過ごした東扇島火力発電所(神奈川県川崎市)をご案内します。
東京電力フュエル&パワー株式会社
火力部火力運営グループ
沖浦功一
70万世帯分の電気を作り出すためのボイラー
東扇島火力発電所は、神奈川県の京浜工業地帯の一角に位置します。東扇島火力発電所では「汽力発電」という発電方式を採用しています。ボイラーで燃料(LNG)を燃やして蒸気を発生させ、その力で蒸気タービンを回して発電する方式です。2基の発電設備で合わせて最大200万kWの電気を作り出しています。200万kWとは首都圏全体の電力需要の5%程度、約70万世帯分の電気を賄える発電量です。200万kW分の電気を作るためには、大量の蒸気が必要です。ボイラーは、ビル18階建て相当の巨大なもので、直径約1mの大きなバーナーが48個も備わっています。ボイラー内部は500℃以上・200気圧以上にもなります。水が一瞬にして蒸気となる温度です。
蒸気を再利用するため複数台並ぶ蒸気タービン
蒸気タービンは、ボイラーの隣に建つタービン建屋に収められています。当社の発電所では、複数の蒸気タービンを組み合わせて電気を作り出しています。高圧蒸気タービンで使用した蒸気を再利用して中低圧蒸気タービンを回す仕組みです。複数台のタービンを使うことで、効率性を高めています。
通常、複数の蒸気タービンと発電機が全て1本の軸上に並んでいますが、東扇島火力発電所のように、出力が100万kWにも上る大型の発電所においては、蒸気タービンが横に並ぶ「クロスコンパウンド方式」を採用しています(下、右側の写真)。横に並べることによって、省スペースや振動を小さくできるなどのメリットが得られます。
マイナス162℃のLNGを貯蔵する地下タンク
燃料であるLNGは、世界各地からマイナス162℃に液化され専用のLNG船で運ばれてきます。LNGは、当社の専用バースにおいて受入をし、約3km離れたLNG基地まで専用配管を通って送られ、外から熱が入り込みにくい地下式のタンクに貯蔵されます。タンクの内壁には、温度変化によるタンク材料の収縮を考慮して、「コルゲーション」と呼ばれる「しわ」が格子状に設けられています。なぜマイナス162℃の状態で保管するかというと、ガスの状態と比べて体積が600分の1で済むからです。タンクに貯蔵されたLNGは海水をかけて暖めて気化させたのち、専用配管を通ってボイラーへ送られます。
ほぼ毎日、稼動&停止を繰り返す
東扇島火力発電所は、「DSS(Daily Start &Stop)」と言って、ほぼ毎日のように稼動・停止を繰り返しています。季節にもよりますが、一般的に電力需要は日中午後にピークを迎え、深夜はその7割程度まで減少します。そのため、東扇島火力発電所は需要変動に合わせて、昼間に稼働させて夜間に停止させることが多いのです。
これだけ稼働と停止を繰り返す忙しい発電所では、日々の点検が欠かせません。所員は毎日、設備のひとつひとつが正常に稼働しているかどうか点検を行います。巨大な施設内を徒歩で移動して点検を行うため、1日1万歩以上も歩くことがあります。「部署が変わったら太った」という社員の声を聞くことも少なくありません。
24時間体制で電力供給を支える所長と約120名の所員たち
東扇島火力発電所では、総勢約120名の所員が24時間体制で働いています。大きく分けると、中央操作室と呼ばれる場所で、発電所の運転を管理・操作するチームや燃料管理に携わるチームが約70名、ボイラーやタービン、燃料関連の設備の点検やメンテナンスに携わるチームが約30名、その他の業務をこなす所員が約20名。
これだけの人数の所員をまとめ、電力供給が途絶えないようにするのは並大抵のことではありませんが、発電所長がトップに立ち、その責任を担っています。所長を務める熊澤は、技術者としてこの発電所の設計にも携わり、発電所を知り尽くしているだけでなく、所員をまとめあげるエキスパートでもあります。積極的に現場に足を運び、所員とともに考え・悩み・解決していく。所員たちはそんな所長の下で、技術とチームワークを結集させ、今日も電気を送り続けています 。