火力発電の主力燃料「LNG」の正体って?

2016/04/01

ガスなのに?!
船で運ばれてくるエネルギー

東京電力フュエル&パワー株式会社 4月1日発行

LNG=液化天然ガス(Liquefied Natural Gas)。
最近話題のシェールガスもその一種ですが、詳しくご存じの方は少ないのでは?そこで今回は、火力発電の重要な燃料を担うLNGについて燃料部の齋藤瑞穂がお伝えします。

東京電力フュエル&パワー株式会社
燃料部 LNG調達第三グループ
齋藤瑞穂

燃料部 LNG調達第三グループ 齋藤瑞穂

燃料部 LNG調達第三グループ 齋藤瑞穂

火力発電全体の約7割を担うLNG

LNG基地(富津基地)

LNG基地(富津基地)

当社火力発電所の燃料は主に液化天然ガス(LNG)、石油、石炭の3種類。中でもLNGは全体の約7割を占めていて、次いで石炭、石油となっています。なぜ、LNGを多く使っているのか?LNGは火力発電の燃料としてさまざまなメリットがあるからです。まずは環境面。火力発電燃料の中で、燃焼時のCO2排出量が最も少ないのがLNGです。石炭と比較した排出量はなんと約6割。また窒素酸化物(NOx)は約4割、硫黄酸化物(SOx)は排出ゼロで、ばいじんもほとんど発生しないことからクリーンな燃料とも言われています。また、天然ガスは埋蔵量が豊富で、世界各地で産出されていることから、安定的に入手できることも重要なメリットです。なお、環境面のメリットは、火力発電所を消費地である都市の近郊に建設でき、送電ロスを軽減できるという利点にもつながっています。
当社はLNGのこのような特徴に加え、石炭の経済性、石油の調達柔軟性など、それぞれの利点を活かした最適な燃料の組み合わせを追求しています。

-162℃に冷やされた無色透明の液体

LNGの正式名称は「Liquefied Natural Gas(液化天然ガス)」で、メタンを主成分とした天然ガスを-162℃に冷却した液体です。超低温で無色透明、匂いもほとんどありません。油田やガス田から産出される天然ガスは"ガス状"ですが、これを沸点(-161.5℃)以下に冷却して液化させています。周囲を海に囲まれた日本では、産出地からパイプラインを引くことが難しいため、燃料の輸送は船が担います。天然ガスは液化することで体積を1/600程度にまでできるため、輸送時や保管時の効率を飛躍的に高められるというわけです。こうして液体として運ばれてきた天然ガスを常温の海水で温めることで気化させ、燃料として利用しています。

世界で初めてLNGを発電用燃料として利用

当社は早くより発電事業における環境対策の観点からLNGに着目し、1969年、南横浜火力発電所において世界で初めてLNGを発電用燃料として利用しました。その後、二度にわたるオイルショックを契機にエネルギーの多様化、脱石油を進め、 現在ではLNGが主要な燃料となっています。
従来は、石油分が多く含まれるガスを原料に生産された重質LNGが主でしたが、北米を中心にシェールガス等、従来のLNGに比べて単位容積あたりの熱量の低い軽質LNGの開発が進み、取引が増えていくと見込まれており、当社はこの軽質LNGの導入に向けた調達のための交渉やLNG基地内の設備の増設などに取り組んでいます。

世界で初めてLNGを発電用燃料として利用し始めた南横浜火力発電所

世界で初めてLNGを発電用燃料として利用し始めた南横浜火力発電所

LNG基地における設備の増設工事の状況(富津火力発電所)

LNG基地における設備の増設工事の状況(富津火力発電所)

LNG船1隻で5000万世帯分

LNG船は魔法瓶のような保温構造で、-162℃という超低温を維持しながら運搬しています。1隻のLNG船の容量は6~7万トン。この量で、おおよそ一般世帯5000万世帯が1日で使用する電気を発電することができます。LNGを基地へ移送して離桟するまでには24時間程度を要します。当社では東扇島、富津、袖ケ浦、根岸にあるLNG基地をフル稼働させて、世界各国からLNGを運んでくる船を毎日のように受け入れています。 

LNG船が基地に着桟している様子

LNG船が基地に着桟している様子

船だからこそいろんな国から調達できる

LNGの取引には、長期・短期・スポット契約などがありますが、そのメインは長期契約です。中東、アジア、オセアニア、ロシアなど、当社では世界9か国14プロジェクトの長期契約(受け渡し開始前のもの含む)を締結しており、短期・スポット契約も含め、今後もその多様性を広げていくことを目指しています。こうしてさまざまな国からLNGを調達できるのも、LNGをパイプラインなどの固定された設備ではなく、船で運ぶからこそ可能になります。調達先がいずれかの国に偏っていると、トラブルが生じた際には、その影響を直接受けることになってしまいます。さまざまな地域から調達することで、戦争や紛争、事故などのリスクにも対応できる弾力性を持たせられるのです。どれくらいのボリュームをどの地域からどういったタイミングで調達するかは、価格や政治情勢、国内需要など、さまざまな要素を分析して予測判断。こうして最適な燃料ポートフォリオを構築することを目指して、日々努力を続けています。

LNGの調達先

LNGの調達先

粘り強い交渉が欠かせない

LNG調達でもっとも重要なのは、LNG売主とどのような契約を締結するかです。何年間の契約とするのか、どれくらいの数量を取り引きするのか、価格はどうするかといったことから、LNGの性状、配船スケジュールや荷役の方法、各種トラブルの対処ルールなど、契約条項は数十におよび、契約書は多いものでは100ページ程度にもなります。
多くの契約は20年程度の長期契約ですが、契約締結後も数年ごとに価格を見直すのが一般的です。交渉相手が国営石油会社やオイルメジャーというケースもあり、厳しい交渉を担当者レベルからトップまで、人、形式、場所を変えながら、時間をかけて詰めていきます。契約をよりスムーズに運び、理想の条件を得るためには、ビジネス本位で進めるだけではうまくいきません。国の風習や文化の違いなども含めて、お互いに相手をしっかり理解し、尊重し合うことも大切にしています。当社では1円でも安く発電するために、燃料費の削減に取り組んでいますが、この契約はそれを左右する重要な要素。責任は重大ですが、それだけにやりがいを持って臨んでいます。

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