プレスリリース 1997年

第6回世界電力首脳有志の会議(E7)について


                                                  平成9年6月4日
                                                  東京電力株式会社
                                                  関西電力株式会社

  第6回「世界電力首脳有志の会議(E7)」が、6月3日(現地時間)
にカナダのトロントにおいて開催されました。

  この有志会議は、世界の主要な電気事業者(6ヵ国・8事業者)が、電
気事業に関するグローバルな問題について意見交換を行い、必要に応じて
広く世界に問題提起・提言していくことを目的に、1992年に設立されまし
た。日本からは東京電力(会長  那須翔)と関西電力(会長  小林庄一郎)
が参加しています。

  今回の会議は「持続可能なエネルギー開発(注1):変革期における電
力業界の焦点」をテーマとして開催されました。これは、本年が1992年の
リオデジャネイロにおける地球環境サミットから5周年にあたり、6月の
国連地球環境特別総会や、12月の京都における気候変動枠組条約締約国会
議など地球環境保全に関する重要な会議が数多く開催されることや、その
一方で電力分野における競争と規制改革をめぐる動きが活発化しつつある
ことを踏まえ、E7が積極的に発言していくためにふさわしいテーマとし
て、今回の主催会社であるオンタリオ・ハイドロから提唱されたものです。
  今回の会議に先立ち、環境とエネルギーセキュリティーに配慮した持続
可能なエネルギー開発を、会議メンバー各社を含め世界の電気事業者が継
続的に行っていることを示す事例がとりまとめられ報告されました。東京
電力からは「原子力発電によるCO2削減とエネルギー安全保障の確保」、
関西電力からは「高効率コンバインド・サイクル火力発電」を事例として
提出いたしました。

  これらの事例を踏まえて今回の会議のテーマについて議論した結果、先
進国、途上国を問わず、環境やエネルギーセキュリティーに配慮した電気
事業経営を行うことが、社会的にも必要であることに加え、各社の中長期
的競争力の向上にも大きく貢献するとの結論に達しました。
  E7はこのたびインターネット上にホームページを開設しましたが(ア
ドレスは http://www.e7.org/ 英語版のみ)、今回集められた事例は今後
ホームページ上でも公開していく予定です。
[E7のホームページはこちら]

  また、東京電力からの提唱により、「電力部門における競争の拡大と規
制改革」について各社首脳の2時間にわたる意見交換が行われました。
  まず各社首脳から、各国、地域の現状と各社の対応が報告された後、電
力部門における規制改革がいかにあるべきかについて活発な議論が交わさ
れました。
  その結果、電力部門での競争の形態および規制改革の方向性は各国、地
域の事情により異なるものの、発送配電一貫体制をはじめとする何らかの
統合された電気事業者の経営形態は、様々な利点を有すること、さらに、
E7各社はそれぞれの地域において、より競争的な市場であらゆる機会を
とらえつつ、持続可能なエネルギー開発に積極的に貢献していく用意があ
ることが確認されました。

  さらに、E7の目的の一つである地球環境保全のために途上国との協力
プロジェクトを推進していくことについても、その重要性が確認されまし
た。特に、温室効果ガス削減のための共同実施(注2)に引き続き積極的
に取り組んでいくこととしました。

  このほか、関西電力からは、原子力が地球環境保全に果たす役割の再評
価、原子力安全のための国際的な活動の重要性、原子力への社会的信頼確
保のための理解活動の推進に関する報告が行われ、参加各社の賛同を得ま
した。

  なお、次回の有志会議は、来年6月にEDFの主催で、フランスのパリ
で開催される予定です。
                                                            以  上

(注1)「持続可能なエネルギー開発」
    未来の世代のエネルギー需要を満たすために必要な資源・環境を損な
  うことなく、我々の現在のエネルギー需要を満たしていくようなエネル
  ギー開発。「持続可能な開発」の考え方をエネルギー分野に適用したも
  の。
(注2)「温室効果ガス削減のための共同実施活動」
    気候変動枠組条約で定められた温室効果ガスの排出量の削減あるいは
 吸収を、費用対効果を考慮しながら、共同で実施していくための条約締
 約国間の協力形態。1995年の「気候変動枠組条約第1回締約国会議」に
 おいてその試験的実施が合意された。



                           (資料-1)

       世界電力首脳有志の会議(E7)の概要

1.開催日  平成9年6月3日(現地時間)

2.開催地  カナダ  トロント

3.参加者
  フランス電力公社(EDF)
    会長        エドモンド・アルファンデリ
  イタリア電力会社(ENEL)
    会長        エンリコ・テスタ
  ドイツ・ラインヴェストファーレン社(RWE)
    会長        ディエトマール・クーント
  カナダ・ハイドロケベック社
    会長        ジャック・メナー
  カナダ・オンタリオハイドロ社
    社長        アラン・カプシス
  アメリカ・サザンカリフォルニアエジソン社(SCE)
    会長        ジョン・E・ブライソン
  関西電力
    会長        小林  庄一郎
  東京電力
    会長        那須  翔

4.内容
  主な議題
  ・電気事業者による持続可能なエネルギー開発事例の収集と広報の展開
  ・電力部門における市場化の進展と規制改革についての意見交換
  ・地球環境保全のための途上国との協力プロジェクトの推進
  ・原子力が地球環境保全に果たす役割の再評価と理解活動の推進



                           (資料-2)

  E7内外から提出された持続可能なエネルギー開発の主な事例

EDF(フランス):料金政策
  ピーク抑制型の料金体系を通じてDSMを行い、公平性と効率性を確
  保。

ENEL(イタリア):クリーン燃焼技術
  メーカーと協力して低NOxバーナーを開発。欧米で特許を取得。

RWE(ドイツ):DSMプログラムKesS
  省エネ型冷蔵庫など高効率家電製品に補助金。KesS(ドイツ語で
  「顧客エネルギー効率プログラム」の頭文字)という名のキャラクター
  を作り、DSMプログラムのPRに活用。

ハイドロ・ケベック(カナダ):絶縁油の再生と配電用変圧器の再生利用
  PCBが入っていた変圧器も、絶縁油からPCBを分離除去して再利
   用。

オンタリオ・ハイドロ(カナダ):自社内エネルギー効率の向上
  94年から発電効率の向上、送配電ロス率の低減と社内電力消費量の削
  減運動を展開。

SCE(アメリカ):電力を利用したセラミックフィルターの活用
  普及開発の一環。ジュース製造工程に電力利用セラミックフィルター
  を利用することをサンキスト社に提案、実施。腐食性廃棄物(使用済み
  パイプ洗浄液)のリサイクルにも成功。

関西電力:高効率コンバインド・サイクル火力発電
  コンバインドサイクル火力発電の導入による熱効率向上とCO2削減。

東京電力:原子力発電によるCO2削減とエネルギー安全保障の確保
  原子力発電を採用しなかった場合に比較して温室効果ガス排出量を半
  減。エネルギー源のベストミックスによりエネルギー安全保障を確保。
  稼働率の向上、標準化、ABWRの開発によりコストダウンも達成。

中国電力工業部:中国における排煙脱硫プロジェクト
  湿式や乾式の脱硫装置を石炭火力に導入しつつある。政府融資を活用。

PLN(インドネシア):水力発電用ダム湖の再開発
  水力発電用ダム湖を地域開発に利用。魚の養殖、観光、交通、灌漑に
  活用し、ダム建設で影響を受けた地域の再生につなげた。

ESKOM(南アフリカ):電力化プログラム
  電力化の推進により生活水準の向上とSOx、CO2、粉塵の削減を
  実現。

ZESA(ジンバブエ):マニュチダムプロジェクト
  灌漑用ダムにミニ水力を取り付け、未電化地域の電化に活用する計画。
  E7共同実施活動の一つ。

Eletrobras(ブラジル):国家電力政策の形成と実行
  設備形成の費用とDSMの費用を比較しつつ、経済合理的な電力化政
  策を形成し実行。

ICE(コスタリカ):森林再生プログラム
  1956年から実施。累計植林80万本。水力が80%を占めており、保水の
  ためにも森林再生プログラムが重要。電力料金に15%課税し、税収の半
  分を森林再生に支出。スウェーデンとの共同実施活動あり。

EEGSA(グァテマラ):太陽光発電低利融資基金の創設
  ロックフェラー財団と協力して基金を創設。オフグリッドでの太陽光
  発電導入需要家に低利融資。電力化率(現在40%)の向上に貢献。

電力エネルギー省(ポーランド):ピッチ・タール用パイプラインの温度管
               理への電力利用
  ピッチ、タール用パイプラインの温度管理に電力を利用しエネルギー
  効率を向上。再加熱の必要性を減らすことでSOxなどの排出量を削減。
 


                            (資料-3)

「電力部門における競争の拡大と規制改革」の議論における、東京電力
会長の那須の発言要旨は、次の通りです。

・ 競争と市場主義の進展に基づく規制改革については、お客さまに、よ
  り多様な選択肢を提供することを可能にするという点で大いに歓迎する
  ところ。また、既存の電気事業者にとっても、新たな事業機会の創出に
  つながる可能性がある。

・ しかし、電力分野の規制改革論議において忘れてはならない視点は、
  改革の名の下に電気事業者の活力を削ぐような規制強化が行われるとい
  った事態は絶対に避けるべきであるという点。

・ 電力需要の推移、エネルギー資源の賦存状況、供給セキュリティー、
  隣接国との送電線系統接続の有無など、各国、地域の置かれた状況によ
  って、規制のあるべき姿が異なってくるのは当然のこと。

・ 重要なのは、電力システム全体としての信頼性維持、環境保全、短期
  ・長期双方に配慮したコスト削減、お客さまへの多様な選択肢の提供な
  どといった目標をバランスよく実現するために、電気事業者自らの創意
  工夫を可能とする改革が、各国、地域の事情を踏まえて行われること。

・ エネルギーセキュリティーの確保、電力設備の立地、環境保全、経営
  効率化を同時に達成するためには、発送配電一貫体制を基本としつつ、
  これに可能な限りの競争を導入していく枠組みが、日本にとっての最適
  解であると考える。


ページの先頭へ戻ります

公式アカウント:
  • 東京電力 公式Xアカウントのご案内ページへリンクします
  • facebook公式アカウントサイトへリンクします
  • Instagram公式アカウントサイトへリンクします
  • youtube公式アカウントサイトへリンクします
  • 東京電力 公式LINEアカウントのご案内ページへリンクします