プレスリリース 2010年

福島第一原子力発電所5号機における保安規定違反(改善指示)について

                             平成22年9月27日
                             東京電力株式会社

 当社は、平成22年9月2日に福島第一原子力発電所5号機(沸騰水型、定格出力
78万4千キロワット)において、原子炉隔離時冷却系*1(以下、当該系統)の定
例試験(毎月1回)を実施したところ、当該系統のタービンが自動停止した事象に
ついて、本日、経済産業省原子力安全・保安院より、本事象が、当社が定め同院が
認可した福島第一原子力発電所原子炉施設保安規定*2に違反しているとして、再
発防止の改善を求める指示文書*3を受領いたしました。

 今回指摘された違反事項は以下のとおりです。

○福島第一原子力発電所5号機における原子炉隔離時冷却系の機能喪失について
  福島第一原子力発電所原子炉施設保安規定には、5号機の原子炉の状態が運転、
 起動および高温停止において(原子炉圧力が1.04メガパスカル以上)、原子炉隔
 離時冷却系が動作可能であることを運転上の制限とする旨規定されているが、平
 成22年8月16日から9月2日までの間、当該系統のタービンへ供給する蒸気の量
 を加減する蒸気加減弁を制御する信号ケーブルを当社当直員が誤って外したこと
 から、同系統が動作可能ではなかったと判断されたこと。

  これらのことが、保安規定第41条(原子炉隔離時冷却系)*4に違反している
 と判断されました。

 当社といたしましては、今回の改善指示を真摯に受け止め、当該事象について根
本原因の究明および再発防止対策の策定を行い、原子力安全・保安院に報告すると
ともに、再発防止対策を確実に実施し、今後とも原子力発電所の安全確保に万全を
期してまいります。

 本事象についての調査状況は以下のとおりです。

1.事象の発生状況
  平成22年9月2日、定格熱出力一定運転中の5号機において、原子炉隔離時冷
 却系の定例試験(毎月1回)を実施したところ、午前11時19分に当該系統のター
 ビンが自動停止しました。
  このため、当該系統が動作可能な状態にないことから、午前11時26分、保安規
 定で定める「運転上の制限」*5を満足していないと判断しました。
  なお、運転上の制限を満足しない場合に要求される措置*6として、高圧注水
 系*7および自動減圧系*8が動作可能であることを確認し、プラントの運転継
 続に問題がないものと判断しました。

  自動停止した当該系統におけるタービン回転速度の上昇を知らせる警報が確認
 されたことから調査を行ったところ、タービンへ供給する蒸気の量を加減してい
 る蒸気加減弁を制御する信号ケーブルが外れていることを確認しました。
  その結果、蒸気加減弁への制御信号が伝わらず、蒸気加減弁が全開状態から制
 御されなかったため、タービン回転速度が上昇し、自動停止に至ったことがわか
 りました。
  そのため、当該系統の他の機器について異常のないことを確認した上で、蒸気
 加減弁を制御する信号ケーブルを復旧しました。
  その後、当該系統の確認運転を実施し、機能に異常がないことを確認したこと
 から、9月3日午後6時4分、当該系統が動作可能な状態に復旧したと判断しま
 した。
                   (平成22年9月2日3日お知らせ済み)

2.調査状況
  調査の結果、以下のことがわかりました。
・5号機の原子炉隔離時冷却系の制御盤を確認したところ、信号ケーブルが取り外
 されており、作業表示札が取り付けられていたこと。
・平成22年8月16日に当該系統のタービンへ供給する蒸気の量を加減する蒸気加減
 弁を制御する信号ケーブルを取り外していたこと。
・取り付けられていた作業表示札は、本来、定期検査中である6号機の原子炉隔離
 時冷却系の点検で使用されるべきものであったが、記載された内容は5号機の信
 号ケーブルを取り外すことを示す内容となっていたこと。
・作業表示札の作成者は、制御盤の信号ケーブルを取り外す作業を検討するために、
 図面を管理するシステムから使用する図面を印刷する際に、本来6号機を選択す
 るところを、誤って5号機を選択し図面を印刷・使用したことから、作業表示札
 の記載内容が5号機の信号ケーブルを取り外す作業内容となったこと。
・5号機と6号機の図面を確認したところ、対象プラントと制御盤の番号以外はす
 べて同一の記載であったこと。
・審査・承認の段階において、ケーブル取り外し箇所の確認は行ったが、違うプラ
 ントの図面とは考えていなかったため、作業対象プラントの誤りには気がつかな
 かったこと。
・現場当直員は、定期検査中である6号機の作業に従事していたが、他の6号機の
 作業において、5号機の設備を隔離した上で作業表示札を取り付けた経験があっ
 たことから、今回の場合も、何らかの理由により5号機のケーブルを取り外すも
 のと考えていたこと。

  また、今回の事例のように、対象プラントや制御盤の番号が誤って記載した作
 業表示札の有無を確認しましたが、当該作業札以外にはないことを確認しました。

3.推定原因
・作業表示札の作成者は、6号機の制御盤の信号ケーブルを取り外す検討を行うた
 めに、図面を管理するシステムから使用する図面を印刷する際、誤って5号機の
 図面をシステムから印刷していましたが、その間違いに気づかなかったことから、
 制御盤の信号ケーブル取り外しの作業表示札が5号機の制御盤の記載内容で作成
 されました。
・審査者・承認者は、作業表示札の記載内容を審査・承認する際に、対象プラント
 と制御盤の番号以外はすべて同一の記載の図面であったこと、また、プラントの
 間違いはないとの思いこみから、作業を実施するプラントの誤りに気付きません
 でした。
・現場当直員は、6号機の作業において、5号機の設備を隔離した上で作業表示札
 を取り付けた経験があったことから、記載内容が誤った作業表示札に従い、5号
 機の制御盤で信号ケーブルを取り外しました。

  これらの原因により、5号機の原子炉隔離時冷却系の定例試験を実施した際、
 タービンが自動停止したものと推定しました。

4.対策
  今後、システムから図面を印刷し、その図面を用いて作業表示札を作成する場
 合は、作業対象プラントについても複数の審査者による確認を行うこととします。
  また、作業対象プラントとは異なるプラントを隔離する作業は基本的にはない
 ことから、対象プラントとは異なるプラントを隔離する作業がある場合は、現場
 当直員は、中央操作室へ連絡の上、作業場所の確認を必ず行うことを周知します。

5.今後の対応
  今後引き続き、根本原因の究明および再発防止対策を検討してまいります。

                                  以 上

*1 原子炉隔離時冷却系
    何らかの原因により、通常の原子炉給水系が使用できなくなり、原子炉水
   位が低下した場合等において、原子炉の蒸気を駆動源にしてポンプを回し、
   原子炉の水位確保および炉心の冷却を行う系統。なお、本系統は非常用炉心
   冷却系ではない。

*2 原子炉施設保安規定
    原子炉等規制法第37条第1項の規定に基づき、原子炉設置者が原子力発電
   所の安全運転を行ううえで遵守すべき基本的事項(運転管理・燃料管理・放
   射線管理・緊急時の処置など)を定めたもので、国の認可を受けている。

*3 指示文書
    「福島第一原子力発電所5号機原子炉隔離時冷却系の機能喪失における保
   安規定違反について(指示)」
                        (平成22・09・17原院第6号)

 原子力安全・保安院(以下「当院」という。)は、平成22年9月2日に福島第一
原子力発電所第5号機において、運転上の制限の逸脱が発生したことについて報告
を受けました。その内容を精査したところ、福島第一原子力発電所原子炉施設保安
規定(以下「保安規定」という。)の違反が認められたため、当院は、貴社に対し、
下記の対応を求めます。

                 記

 以下の保安規定違反に関し、違反が発生した根本原因を究明し、再発防止策を策
定の上、12月27日までに、当院に報告すること。

1.違反が認められた条項
  保安規定 第41条(原子炉隔離時冷却系)

2.事実の内容及び保安規定第41条に違反すると認める理由
  保安規定第41条第1項では、「原子炉の状態が運転、起動及び高温停止におい
 て(原子炉圧力が1.04メガパスカル以上)、原子炉隔離時冷却系が動作可能であ
 ること」を運転上の制限とする旨が規定されている。本事象では、発電所当直員
 が当該系統のタービン蒸気加減弁(駆動蒸気を制御する弁)への制御信号を誤っ
 て解線するなど、事業者自らの不適切な保安活動によって、一定期間、当該系統
 の機能喪失が継続したことは、保安規定の該当条項に違反する。

*4 保安規定第41条(原子炉隔離時冷却系)
  原子炉の状態が運転、起動および高温停止(原子炉圧力が1.04MPa以上)に
 おいて、原子炉隔離時冷却系は表41−1で定める事項を運転上の制限とする。

 表41-1
表41-1
*5 運転上の制限   保安規定では原子炉の運転に関し、多重の安全機能を確保するために必要な動  作可能機器等の台数や原子炉の状態ごとに遵守すべき温度・圧力などの制限が定  められており、これを運転上の制限という。保安規定に定められている機器等に  不具合が生じ、一時的に運転上の制限を満足しない状態が発生した場合は、同制  限からの逸脱を宣言し、予め定められた時間内に修理などの対応を行うことが求  められている。 *6 運転上の制限を満足しない場合に要求される措置   保安規定第41条では、原子炉隔離時冷却系が動作可能な状態でない場合(運転  上の制限を満足しない場合)の措置として、高圧注水系が動作可能であることお  よび自動減圧系の窒素ガス供給圧力が正常であること、10日以内に正常な状態に  復旧することが定められている。 *7 高圧注水系   非常用炉心冷却系の一つで、配管等の破断が比較的小さく、原子炉圧力が急激  には下がらないような事故時に、原子炉の蒸気を駆動源にしてポンプを回し、原  子炉に冷却水を注入することのできる系統。 *8 自動減圧系   非常用炉心冷却系の一つで、原子炉水位が異常に低下した場合に、原子炉の圧  力を強制的に下げ、低圧の非常用炉心冷却系による原子炉への注水を促進するた  めの設備。 添付資料 ・別紙:原子炉隔離時冷却系制御系統概略図(PDF 33.5KB)



	

	



			
			
		

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