福島第二原子力発電所1号機の原子炉隔離時冷却系隔離弁不具合に伴うプラント点検停止に係る調査状況およびプラントの起動について
平成22年6月9日
東京電力株式会社
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<概要>
(事象の発生状況)
・平成22年6月2日、福島第二原子力発電所1号機において、非常時に原子炉内
に水を入れる設備(以下、「当該設備」)の定例試験を実施していたところ、
当該設備の弁に不具合があることを確認いたしました。
・本事象による外部への放射能の影響はありませんでした。
(平成22年6月2日お知らせ済み)
・当該弁を点検するため、同日プラントを停止いたしました。
(調査状況)
・当該弁本体を動かす金属の棒(以下、「弁棒」)が折損しており、折損面には、
繰り返し力がかかって割れた際に見られる特徴的な波状の模様がありました。
・当該弁の材質や製造時の加工に問題はなく、また過去に実施した分解点検にお
いても異常は確認されていませんでした。
・弁棒以外の部品・機能について異常はありませんでした。
・当該弁の弁棒に、当該設備の定例試験時等に発生する振動の力が繰り返しかか
っていました。
(推定原因)
・振動による力が弁棒に繰り返しかかったことにより、亀裂が発生・進展し、今
回の操作で折損に至った結果、当該弁の不具合が発生したものと推定いたしま
した。
(対策)
・当該弁の弁棒を新品に取り替え、当該弁の開閉試験を行い、正常に動作するこ
とを確認いたしました。
また、今後準備が整い次第、プラントを起動するとともに、設備信頼性の一層
の向上の観点から、より詳細な調査を行い、最終報告としてとりまとめることと
いたします。
詳細は以下のとおりです。
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1.事象の発生状況
平成22年6月1日午後10時26分頃、定格熱出力一定運転中の福島第二原子力発
電所1号機(沸騰水型、定格出力110万キロワット)において、原子炉隔離時冷
却系*1(以下、当該系統)の定例試験(毎月1回)を実施していたところ、当
該系統の蒸気管内側隔離弁*2(以下、当該弁)が全開にならないことを確認い
たしました。
その後、当該弁の電源等の調査を行った結果、当該弁に異常の可能性があるも
のと判断し、当該系統が動作可能な状態にないことから、6月2日午前2時5分、
保安規定*3で定める「運転上の制限」*4を満足していないと判断いたしまし
た。
また、運転上の制限を満足しない場合に「要求される措置」*5として、高圧
炉心スプレイ系*6が正常に動作すること、および自動減圧系*7の窒素ガス供
給圧力が正常であることを確認したことから、プラントの運転を継続することに
問題がないことを確認いたしました。
保安規定では、当該系統を10日以内に復旧することが求められておりますが、
当該弁が原子炉格納容器内にあることから、プラントを停止して当該弁を点検す
ることといたしました。
本事象による外部への放射能の影響はありません。
(平成22年6月2日お知らせ済み・公表区分I)
その後、6月2日午前11時10分よりプラントの停止操作を開始し、同日午後7
時58分にプラントを停止いたしました。
また、プラント停止操作の過程において、原子炉隔離時冷却系に要求される原
子炉圧力が保安規定に定める値(1.03メガパスカル)未満となったため、同日午
後10時12分に「運転上の制限」を満足していない状態から復帰いたしました。
2.調査状況
当該弁について点検・調査した結果、現時点において以下のことがわかりまし
た。
・当該弁の分解点検を実施した結果、当該弁本体(配管内の蒸気の流れを仕切る
板)を上げ下げする弁棒が折損していたこと。
・折損した弁棒の破面を目視にて観察した結果、何らかの力が繰り返し加わった
時に見られる特徴的な波状の模様(疲労破壊)が確認されたこと。
・当該弁はプラント建設時から使用しており、当該弁の製造時の記録を確認した
ところ、弁棒の材質不良や加工不良は確認されなかったこと。
・前回実施した当該弁の分解点検(第17回定期検査時:平成16年9月〜平成17年
6月)において、弁棒に異常は確認されなかったこと。
・当該弁本体(弁体)や弁の駆動機構など、弁棒以外の部品・機能については特
に異常は確認されなかったこと。
・当該弁の弁棒に、当該系統の定例試験時等に発生する振動の力が繰り返し加わ
っていたこと。
3.推定原因
プラント建設時に当該弁を設置して以降、原子炉隔離時冷却系の定例試験等の
際に、弁棒と弁体の接合部付近において、振動による繰り返し応力が作用し、こ
の繰り返し応力が疲労限度を超えたことにより弁棒に亀裂が入り、さらに弁棒内
部へ亀裂が進展したことにより折損に至った結果、当該弁の弁体が脱落し、全開
できなかったものと推定いたしました。
4.対策
当該弁の弁棒を新品に取り替え、新しい弁棒を組み込んだ弁で開閉試験を行い、
正常に動作することを確認いたしました。
また、今後準備が整い次第プラントを起動するとともに、設備信頼性の一層の
向上の観点から、平成22年6月下旬より開始する次回定期検査までの定例試験時
に、原子炉隔離時冷却系のより詳細な運転データを測定し、その評価結果につい
て最終報告としてとりまとめることといたします。
以 上
*1 原子炉隔離時冷却系
何らかの原因により、通常の原子炉給水系が使用不可となり、原子炉水位が
低下した場合等において、原子炉の蒸気を駆動源にしてポンプを回し、原子炉
の水位確保および炉心の冷却を行う系統。なお、本系統は非常用炉心冷却系で
はない。
*2 原子炉隔離時冷却系蒸気管内側隔離弁
原子炉隔離時冷却系を流れる蒸気を遮断するための弁の一つ。原子炉格納容
器内に設置されている。
*3 保安規定
原子炉等規制法第37条第1項の規定に基づき、原子炉設置者が原子力発電所
の安全運転を行ううえで遵守すべき基本的事項(運転管理・燃料管理・放射線
管理・緊急時の処置など)を定めたもので、国の認可をうけている。
*4 運転上の制限
保安規定では原子炉の運転に関し、多重の安全機能を確保するために必要な
動作可能機器等の台数や原子炉の状態ごとに遵守すべき温度・圧力などの制限
が定められており、これを運転上の制限という。保安規定に定められている機
器等に不具合が生じ、一時的に運転上の制限を満足しない状態が発生した場合
は、同制限からの逸脱を宣言し、予め定められた時間内に修理などの対応を行
うことが求められている。
*5 要求される措置
保安規定第41条では、原子炉隔離時冷却系が動作可能な状態でない場合、高
圧炉心スプレイ系と自動減圧系が動作可能であることを確認すること、10日以
内に正常な状態に復旧することが運転上の制限を満足しない場合の措置として
定められている。
*6 高圧炉心スプレイ系
非常用炉心冷却系の1つで、原子炉水位が異常に低下した場合に、原子炉内
に水を補給するための系統。
*7 自動減圧系
非常用炉心冷却系の1つで、原子炉水位が異常に低下した場合に、原子炉の
圧力を強制的に下げ、低圧の非常用炉心冷却系による原子炉への注水を促進す
るための設備。
添付資料
○原子炉隔離時冷却系 系統概略図・原子炉隔離時冷却系蒸気管内側隔離弁断面図・
折損した弁棒の破面状況(PDF 172KB)
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