品川火力発電所1号系列(第1軸)の営業運転開始について
~高効率で環境にやさしい、都心に最も近い最新鋭火力(ACC)が完成~
平成13年7月12日
東京電力株式会社
当社は、平成10年4月より、品川火力発電所1号系列の新設工事を進めてまい
りましたが、本日、初軸にあたる第1軸の工事が完了し、営業運転を開始いたし
ました。
この発電所は、老朽化に伴い平成8年3月に発電を停止した、旧品川火力発電
所(石油火力発電:37.5万kW・ガスタービン発電:3万kW)の土地および施設の
一部を効果的に活用し、撤去・新設するというスクラップ&ビルド方式で建設し
たもので、当社としては横浜火力発電所7・8号系列、千葉火力発電所1・2号
系列、富津火力発電所3号系列に続く、4番目の改良型コンバインドサイクル発
電(ACC:Advanced Combined Cycle)(注1)となります。
1号系列は3つの軸で構成され、全ての設備が完成すると旧発電所の約3倍に
あたる出力114万kW(38万kW×3軸)となり、都心に最も近い発電所として、東京
都の電力自給率向上に大きく貢献いたします。今後は、各軸ごとに順次運転を開
始し、平成15年11月には1号系列の全てが営業運転を開始する予定です。
品川火力発電所1号系列の特長は次のとおりです。
(1)世界最高水準の熱効率50%を実現
ガスタービンに最新の耐熱材料と冷却技術を導入し、燃焼温度をこれまでの
コンバインドサイクル発電の1,100℃級から1,300℃級へ上昇させたことなどに
より、世界最高水準の50%という高い熱効率を実現しました。これにより、従
来型のガス火力と比較して約2割効率が向上し、大幅な燃料の節約となります。
さらに、CO2の発生量も抑制され、地球環境など環境対策面でも優れています。
(2)約3割のコストダウンを達成
旧設備の効果的な活用、新技術の導入ならびに仕様の合理化・スリム化等に
より、発電所全体で約3割のコストダウンを達成しました。
1、旧設備の効果的な活用
旧発電所のタービン建屋の基礎や、取放水路および煙突(外筒及び内筒の
一部)を活用し、コストダウンを図りました。
2、新技術の導入
従来の蒸気タービンでは、2本のローター(車軸)が使われていましたが、
「傾斜熱処理」(注2)という新技術を用いて、2本のローターを一体化し
たことにより、タービン軸長を約6m短縮することができ、その結果、ター
ビン建屋のコンパクト化につながりました。
3、仕様の合理化・スリム化
機器・配管のレイアウト変更や、タービン建屋の中間に柱を設けることな
どにより強度分散を図った結果、建屋側壁の厚みを2m減少させることが可
能となり、鉄骨やコンクリート量を大幅に削減することができました。
また、ボイラー内の純水を作る水処理装置において、品川火力発電所の近
傍に位置する大井火力発電所(石油火力;105万kW)と協調した運用を行う
ことにより、建設費の削減を図りました。
(3)最新技術の採用で環境にやさしい発電所を実現
1、景観・緑化対策
発電所内の建物は、天王洲アイルやレインボーブリッジなど周辺の景観に
マッチするよう、デザインや色彩に配慮するとともに、緑ゆたかな発電所づ
くりにつとめています。
2、大気汚染防止
燃料にはクリーンな都市ガスを使用し、SOx、ばいじんの排出をなくす
とともに、最新型の低NOx燃焼器および高性能脱硝装置を採用しました。
建設にあたりましては、地域の皆さまをはじめ関係各方面の皆さまから多大な
ご理解とご協力をいただきましたことに、深く感謝申しあげます。
(注1)コンバインドサイクル発電とは、ガスタービンと蒸気タービンとを組み
合わせたもので、ガスタービンから排出された高温の排ガスを再利用し
て蒸気を作り、蒸気タービンとガスタービンで発電する。従来までの蒸
気タービンだけの火力発電に比べ、熱効率を上昇させ、出力の増加を図
ることが可能。改良型コンバインドサイクル発電(ACC)とは、従来
のコンバインドサイクル発電の燃焼温度を1100℃級から1300℃級へ上昇
させることなどにより、効率をさらに向上させたもの。
(注2)傾斜熱処理とは、1本のローターに、高中圧部、低圧部でそれぞれ必要
な材料特性を持たせるため、それぞれの部位に異なった熱処理を加える
ことをいう。高中圧ローターには高温強度の高い特性を持たせ、低圧ロ
ーターには脆性破壊に強い特性を持たせる必要があるため、従来はロー
ターを2本用意し別々に熱処理をしていたが、傾斜熱処理技術により、
1本のローターの部位ごとに異なった熱処理を施すことが可能になった
もの。
以 上
品川火力発電所1号系列の概要
1.発電所の概要
(1)所在地
東京都品川区東品川5丁目6番22号
(2)所長
青柳 孝治
(3)敷地面積
約10万m2
(4)出力
114万kW(38万kW×3軸)
(5)設備概要
・発電システム 改良型コンバインドサイクル(ACC)
・熱 効 率 50%
・ガスタービン 開放単純サイクル一軸型
1300℃級ガスタービン
・空気圧縮機 軸流型
・排熱回収ボイラ 排熱回収三圧再熱自然循環型
・蒸気タービン 三圧再熱単流排気復水式
・起動装置 サイリスタ起動装置
・発電機 横軸円筒回転界磁三相交流同期発電機
・ばい煙処理設備 煙突:110m、3筒身集合型
(6)燃料
都市ガス
(7)総工事費
約1,500億円
2.主な建設経緯
平成8年3月14日 第132回電源開発調整審議会
平成8年3月14日 電気工作物変更届
平成10年2月10日 工事計画認可
平成10年4月1日 着工
平成13年1月30日 試運転開始(初並列)
平成13年7月12日 1号系列第1軸営業運転開始
3.今後の運転開始予定
1号系列:2軸 平成14年3月
3軸 平成15年11月
<参考>旧品川火力発電所の概要
・出力 石油火力発電:37.5万kW(12.5万kW×3)
カ゛スターヒ゛ン発電: 3万kW
・熱効率 37.2%
・燃料 原油
・運転開始 昭和36年10月(全ユニット運転開始)
(一次休止:昭和57年11月~昭和63年6月)
・発電停止 平成8年3月
・撤去工事 平成8年7月~平成10年3月末
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