3月13日付朝日新聞朝刊社説「東電値上げ 燃料費下げる努力は?」について
平成24年3月13日
東京電力株式会社
題記社説について、事実と異なる内容や誤解を招くおそれのある内容が報じられております。事実関係は以下のとおりです。
○冒頭、「家庭向けの電気料金についても約10%の値上げを申請する」とありますが、当社は具体的な値上げ率を決めた事実はありません。
○現在、世界の天然ガス市場は、大きく分けて北米、欧州、アジアに分かれており、パイプライン網やシェールガスの生産など、それぞれ市場環境や需給状況が異なります。短期的には、アジアではLNG需要の急増により、域内のLNG供給力だけでは需要を満たすことができず、もともと欧米向けのLNGをスポットLNGとしてアジアに仕向けています。この場合、価格のベースは基本的に欧州向けと同じですが、輸送距離の差により、産地から遠距離のアジア着価格は割高となっています。現在はLNG船の不足により運賃が高騰していることも価格差に影響しています。したがって、アジアという市場において日本だけが高値のLNGを購入しているわけではありませんし、電力会社固有の問題でもありません。
○また、LNGの購入に当たっては、当然、これまでも他の電力会社やガス会社と共同し購入するなどにより調達価格の低減に努めてまいりました。化石燃料がほとんど存在しない我が国において安定的にLNGを取得するためには、現在の長期契約を基本とする購入は有効であると考えています。
○「震災の前から電力会社を中心とした日本勢が、このLNGを『高値買い』し続けている」とありますが、確かに現在のLNG価格を世界的に比較すると、ヘンリーハブ価格が最も安く、その次に安いのが欧州で、アジアは高くなっています。しかし、過去10年で見れば、アジアが常に高かったわけではなく、日本勢が「継続的に」LNGを高値買いしているとの記述は事実と反します。(別添グラフ参照)
※ヘンリーハブ…米国の主要なガス集積地。この地点における価格はニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引され、米国天然ガス価格の指標となっている。
○「(シェールガスで)先行する米国では劇的に値段が下がり、いまや日本の輸入価格の6分の1ほどで流通している」とありますが、米国で価格が急激に下がったのは米国内でシェールガス等の非在来型ガス生産が急増し(2008年頃)、それが発達したパイプライン網によって市場に供給されたことが要因です。したがって、国内に天然ガス資源やパイプライン網を持たず、売り主に対する牽制材料が少なく、輸入に頼らざるを得ない日本との単純な比較はできないと考えます。また、日本に天然ガスを輸入するためには、液化および輸送のコストが必要であるという条件の違いにも留意することが必要です。
○現在、原子力発電のほとんどが停止し、LNGマーケットがタイト化している状況においては、LNGの売主の姿勢は強硬であり、当社はそうした厳しい状況の中で更なる価格引下げに鋭意努力しており、現在、欧米天然ガス指標価格にリンクした値決め方式などを含め、価格の多様化に向けて複数の売主と協議を行っています。なお、過去ヘンリーハブ価格が常に安かったわけではなく、仮に今後高騰した場合には、ヘンリーハブ価格リンクのLNG価格も連動して上昇することにも留意すべきと考えます。
以 上
別添資料