平成22年度入社式挨拶（要約）

平成22年４月１日
東京電力株式会社
社長　清水　正孝

　最初に、東京電力を取り巻く事業環境についてお話しする。
　近年、低炭素社会の実現に向けた社会の動きが加速しつつある。具体的な政策の導入に向けた検討も山場を迎えるが、これらの政策はいずれも電気事業に直結するものであり、当社の経営に大きな影響を及ぼす可能性がある。
　このほか、いわゆるスマートグリッドに関する国内外の議論も活発化してきており、電気自動車や蓄電池などの新技術が社会を大きく変える可能性もある。こうした流れの中、電気事業は低炭素社会の実現に向け、社会から大きな役割を果たすことが期待されている。
　また、人口が減少していく中、国内需要の高い伸びが望めないとの前提で日本は生きていく道を考えていく必要があるが、成長著しいアジア地域を中心として、日本が誇る環境・エネルギー技術で成長を実現していくことが期待されている。具体的には、社会インフラを、アジア地域を中心に展開していこうというものである。
　このように、当社を取り巻く事業環境は、大きな転換期にある。

　こうした中、東京電力グループの将来像について少しお話しする。
　まず申し上げたいのは、お客さまに安定して電気をお届けするということは、時代が変わっても私たちの事業の基本的使命であるということ。そのためには、地域に密着し、お客さまをはじめ社会からの信頼を得ていくことが必要不可欠である。あわせて、それらをベースにしつつ、新たな社会・環境貢献のあり方など、時代の変化とお客さまニーズに的確に対応していく必要がある。

　そのような視点を踏まえた方向性として、３点お話しする。
　第一には、「東京電力グループが、電化を通じて低炭素社会の実現をリードしていきたい」ということ。低炭素社会を実現するためには、エネルギーの「つくる側」と「つかう側」の両面からの取り組みが必要不可欠だが、電気事業は、エネルギーの「つくる側」と「つかう側」の全般にわたり、低炭素社会の実現に貢献できる唯一の産業と言っても過言ではなく、そうした強みを活かして低炭素社会をリードしていきたい。
　第二には、「活躍の『場』を拡げていく」ということ。これまで培った技術やノウハウなどの「強み」を活かしながら、海外に『場』を拡げていくことで、東京電力グループの成長や収益の確保のみならず、環境・エネルギー技術によって国際的な貢献も果たしていきたい。
　そして、このような取り組みを支えるのは社員一人ひとりの「力」であることは言うまでもない。
　従って、第三には、社員一人ひとりの技術や技能をさらに高めつつ、仕事のやり方を継続的に改善あるいは改革することで、現場力の強化を図り、一人ひとりが活き活きと働き、持てる能力を最大限発揮できる環境づくりを進めていきたい。

　このような、東京電力グループの新しい時代を担う皆さんに期待することを、２点申し上げたい。
　１点目は、「変化をチャンスと捉えて何事にも前向きにチャレンジして欲しい」ということ。大きな時代の転換期にあたり、電気事業や当社の経営、私たちの仕事には、これまで前例が無く、初めて直面するような変化が訪れる可能性がある。しかし、この変化は「危機」ではなく、当社が大きく変わる「チャンス」だと考えている。当社はこれまで様々な困難を克服してきたが、そのような困難に立ち向かった時、「人」や「技術」の力をベースとして努力や工夫を重ねることにより、それを追い風に変えて成長してきた。できない理由を考えるよりも、どうすれば克服できるか、成長できるチャンスだと前向きに考えたい。これから先、直面するであろう様々な変化に対して、新しい発想で果敢にチャレンジして欲しい。
　２点目は、「東京電力の電気事業を支える基礎力をしっかり身につけていただきたい」ということ。皆さんが今後配属される第一線の職場には様々な仕事がある。それらの仕事を支える技術やスキルは、当社の安定供給を支え、究極的には電気を通じて低炭素社会実現への貢献につながる。
　まずは皆さん一人ひとりが、自身の「足元」をしっかり見つめ、第一線の職場で基礎的な技術・スキルをしっかり身につけ、着実に自分を磨いて欲しい。一人ひとりのそうした積み重ねが東京電力の組織として大きな力となる。

　電気事業は、個人プレーだけでは決して成り立たない。様々な第一線職場で、チームや部門の垣根を越えて協力しあうことで、はじめて最高の成果を生み出せる。
　今後、皆さんが当社の一員として、自分自身の持つ能力や様々な個性を、チームの中で仕事を通じて切磋琢磨し、活躍していくことを心から期待している。
　初心を忘れずに、何事も前向きに頑張って欲しい。

以　上