ESG担当役員メッセージ

2022年2月に発生したウクライナ情勢により、世界の安全保障・エネルギーを取り巻く環境は一変しました。各国とも自国のエネルギー確保に鎬を削り、それまでのエネルギー政策の見直しを迫られています。
そのなかで、2030年に向けたSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた動きや、パリ協定を踏まえたESG(環境・社会・企業統治)投資の伸びは、ウクライナ情勢をはじめとする混沌とした世界情勢を反映し、先行き不透明な見方もありますが、これまで右肩上がりの成長を遂げてきています。
TEPCOグループは、長年に渡り首都圏を中心にエネルギー事業を担ってまいりましたが、今後どのような社会情勢であっても電力の安定供給を確保し、カーボンニュートラルと防災を軸とした新しい価値を社会・お客さまに提供していくことで企業価値の向上と社会的価値の創造に努めてまいります。

カーボンニュートラルに向けた取り組み

TEPCOグループは、「2030年度までにお客さまに販売する電力由来のCO2排出量を2013年度比で50%削減」という目標を掲げているなかで、2021年に公表した第四次総合特別事業計画(四次総特)において「2050年にカーボンニュートラルを目指す」ことを明記しました。
また2022年4月には「長期的な安定供給とカーボンニュートラルの両立に向けた事業構造変革について」を発表し、供給側の再生可能エネルギー主力電源化を進めていくと同時に、需要側でもお客さまの設備やエネルギーの使用状況にまで入り込み、再エネ電源や蓄電池等の設備サービス事業を主軸としたビジネスモデルへ大きく変換することで、新たな企業価値の創造に挑戦してまいります。

防災への取り組み

2019年の台風15号により、長期の停電を引き起こしてしまった反省を糧に、当社供給設備においては、高経年設備更新を着実に実行するとともに、ドローンやDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した、災害発生時の正確な情報発信・早期復旧に資する仕組みを構築してまいります。
併せて社会全体のレジリエンス力強化の為、再エネ等を中心とする自前電源の確保や蓄電池の設置、電動車両を使ったV2Xなどのご提案に加え、お客さまの施設が災害時における地域のエネルギー供給拠点として活用されることも想定した取り組みもお客さまとともに進めてまいります。

積極的な情報開示と対話の促進

当社はこれまで気候関連を中心に積極的に情報開示を進めた結果、各種のESG格付では国内電力トップ水準に位置づけされ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)新規採用のESGインデックスに採用されました。
今後は人権尊重、人的資本、生物多様性に関する情報開示(TNFD)など、世界の潮流となる取り組みについて、サステナビリティ関連情報開示基準(ISSB基準)も踏まえ先進的な情報開示を進めてまいります。加えて、これら情報開示をもとに機関投資家等の様々なステークホルダーの皆さまとの対話を進めることで、当社事業に対するご理解をよりいっそう深めていただくとともに、社会・お客さまからのご要望を把握・反映したESG経営へとつなげたいと考えています。

私はCFO(最高財務責任者)に加え、この4月から新たにESG担当を拝命いたしました。改めて、財務と非財務(将来財務)を統合的に思考できる立場を活かし、カーボンニュートラル、防災といった社会課題の解決を事業に落とし込むことで、四次総特でお示しした年間4,500億円の利益創出の道筋を示すよう全力を尽くして参ります。

2023年4月
代表執行役副社長
山口 裕之