テトラ・スパー型浮体式洋上風力発電実証プロジェクトへの参画
プロジェクトの概要
2021年2月、当社は、RWE Renewables(以下、「RWE」)、Shell New Energies(以下、「Shell」)、Stiesdal Offshore Technologies A/S(以下、「SOT」)が共同で実施しているテトラ・スパー型浮体式洋上風力発電の実証プロジェクトに参画しました。
本プロジェクトのためにデンマークに設立されたTetraSpar Demonstrator ApS(以下、「TSD」)が実証事業に取り組み、2021年5月、デンマーク王国のグレーノ港において、浮体部分の陸上組立が完了しました。その後、浮体部分を進水させ、陸上クレーンを用いて港湾で風車を搭載、風車・浮体をノルウェー王国スタヴァンゲル近くの水深200mの海洋エネルギーテストセンター(Marine Energy Test Centre:Metcentre)まで曳航、3本の係留索で浮体を海底に固定し、ノルウェー本土の送電網に接続しました。
2021年11月より、本実証機は、実証運転(風車出力3,600kW×1基)を開始し、3~5年の実証運転期間を通じてデータを収集、同型の性能と特性を分析しながら、運用面における技術の早期確立も図ってまいります。
テトラ・スパー型は、他の浮体式のコンセプトと比べ、製造・組立・設置工程の簡略化が可能で、コストを低減するという競争上の重要な利点を有しています。
引き続き、TSDおよび出資4社は、本プロジェクトにて同型のコンセプトを具現化するとともに、更なる改良に努めてまいります。
実証プロジェクト概要
名称 | テトラ・スパー実証プロジェクト |
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地点 | 海洋エネルギーテストセンター(ノルウェー) |
出力(基数) | 3,600kW(1基) |
会社名 | TetraSpar Demonstrator ApS(デンマーク)※ |
事業内容 | テトラスパー浮体式基礎技術に関わる実証実験 |
※本実証プロジェクトのために設立した現地会社
参加企業 | |||
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SOT | Shell | RWE | TEPCO RP |
元シーメンスウィンドパワーCTOのStiesdal氏が設立した企業であり、本技術を創案 | 石油・ガス事業の世界的企業であり、エネルギー事業における成長分野にも注力 | ドイツ第2位の電力会社であり、洋上風力世界第2位 | 銚子沖の実績等を生かし、国内外での洋上風力開発を目指す |
実証プロジェクトへの参画理由
- 当社が掲げる国内外洋上風力事業を推進するにあたり、今後拡大が見込まれる浮体式洋上風力技術を保有することが重要です。
- 浮体式洋上風力技術には、スパー型、セミ・サブ型など複数の形式がありますが、デファクト技術は存在せず、種々の技術開発が実施されている状況です。
- 当社は、テトラ・スパ―型の浮体技術を、浮体式洋上風力技術の一つとして有望であると判断したことから、本実証研究に参画し、技術・ノウハウの早期獲得を目指します。
- テトラ・スパー型は「産業化」を念頭に置いて設計開発されており、既存のサプライチェーンの活用が可能です。このことから、部材を地元の工場で製作するなど、地域のサプライチェーンを構築しやすいと考えます。
- 浮体重量が小さく、組立時に溶接等特殊なプロセスが不要で浮体組立や風車搭載の施工性が良いことなどにより、浮体の製造、組立、設置の低コスト化が期待できます。
- スパー型と同様に、テトラ・スパー型は海水面と浮体の触れる面積が小さく、波や潮流の影響を受けにくく、日本の自然条件下でも適用できる可能性があります。
テトラ・スパー型の特徴
テトラ・スパー型は、円筒形の鋼管で組み立てられた四面体構造の浮体と下部キール(重り)から構成されており、円筒形鋼管という標準的な部材の採用により、浮体の産業化・コスト低減の進展の可能性があります。
風力発電の発電方式の代表例
方式 | 特徴 |
---|---|
陸上 | 陸域に設置される方式 |
着床式 | 水深0〜50m程度の沖合に設置され、風車の基礎を海底地盤に固定する方式 |
浮体式 | 水深50〜200m程度の沖合に設置され、風車を浮体により支持し、浮体の位置を係留索により保つ方式 |
浮体形式の代表例
形式 | 特徴 |
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スパー | 円柱型の浮体形式。 水面貫通部分が小さいため、波浪の影響を受けにくい。 |
セミサブ | 複数の浮体を結合し、半分没水させる浮体形式。 水面貫通部分が比較的小さく、波浪の影響を受けにくい。 |
バージ | 箱型の浮体形式。 うねりの影響を受けた時に比較的揺れやすい。 |
TLP | 海底と浮体を細長な弾性部材で結び、その張力により一保持させる形式。 施工難度が高い。 |
2020年代後半以降に、浮体式洋上風力の日本における大規模WFの実現を目指します。