資料館

それぞれのフィールドにおいて、自然との共生や環境保護活動などに精力的に取り組んでいらっしゃるオピニオンリーダーの方々との対談内容をご紹介いたします。

養老孟司さんに自然と人とのかかわりについて聞く~感性は自然の中で磨かれる~

<東京大学名誉教授>養老孟司(ようろうたけし)×<東京電力・永年尾瀬保護活動担当>竹内純子(たけうちすみこ)

今回のゲストは、大ベストセラー「バカの壁」の著者である、東京大学名誉教授の養老孟司さん。自然と人間との関わりというテーマのもと、日本の総都会化の問題や子供の教育論などを独特の”養老節”で展開していただきました。「子供は外に出なければいけない!」と力説されていたのが印象的でした。

<東京大学名誉教授>養老孟司(ようろうたけし)

<東京大学名誉教授>養老孟司(ようろうたけし)

1937年、神奈川県鎌倉市出身。東京大学名誉教授。解剖学者であり、脳科学や生物学などにも精通する。『バカの壁』をはじめ多数の著書がある。趣味は昆虫採集で世界中を飛び回るが、とくにブータンやラオスがお気に入り。

「仕方がない」が通用しない社会

竹内
御著書の中に「日本人はどんどん都市化・意識化していて、全てのことが管理できて当たり前と思うようになっている」という表現がありました。東京電力は、社会貢献活動として木道や公衆トイレの整備など、尾瀬の保護活動に長年取り組んでいるのですが、最近「木道が滑りやすかったから転んだ」というようなお叱りを受けることが出てきて。もちろん、法律的な義務ではなくとも、やるからには安全面も含めしっかりやらなければと思いますが、自然を相手に仕事をしていると100%管理することが無理だということも実感しています。「自然の中なんだから仕方ないよね」が通用しなくなってきていることになんとなく違和感を感じていたところだったので、「あー、これだ!」と声が出ちゃいました(笑)。
養老
都会では「仕方がない」と言ったら負けですから。そうやって人のせいにして生きるというのが、都会の生き方。仕方のないことと、そうでないことの区別がつかなくなっちゃったんですね。
竹内
自分自身も気をつけないといけないと思いますが、街で生活していると、すべては誰かの管理下にあって、責任者が必ずいて、という考え方になりますよね。加速度的にそうなっている気がします。
養老
よくいう「ポジティブ・フィードバック」というヤツですね。きちんとしはじめると、際限なくきちんとしようとする。できるだけやるけど、仕方ないこともある、という適当な部分がなくなっちゃった。そんなに物事が考えたとおりきちんといくと思うんだったら、自分の命日を書いて背中に貼っておけばって言いたくなります(笑)。
別荘の壁に描かれている「馬」と「鹿」の絵は南伸坊氏作
箱根の別荘には膨大な昆虫のコレクションが
ゾウムシの電子顕微鏡写真。その精緻さにびっくり
箱根湿生花園を散策しながらお話をおうかがいする
竹内
先生は「ひとと動物のかかわり研究会」というNPOを立ち上げられたんですよね。子供たちが、動物と付き合うことはどんな意味があるとお考えですか?
養老
動物は思い通りにはならないですからね。今は動物を思うようにしようと訓練しちゃうけど。
竹内
思い通りにならないものの存在を知るというのは大切なことですよね。今もそうですが、私は尾瀬の保護活動担当になったときは尾瀬も自然も全くわかっていなかった、ゼロからのスタートだったんです。でも、父という身近な人の死を経験して、泣いてもわめいてもどうにもならないことがある、もっと言えば自然に対して畏れを持つということを教わっていたので、それは良かったかなと思います。自然相手の仕事は思う通りにいきませんし、全てがバランス感覚というか、一つ一つしっかり考えないといけない、といつも思います。でも今は、動物や昆虫にほとんど触ったことがないという子供もたくさんいますよね。
養老
都会の子供だけでなく、田舎の子供まで外に出なくなっています。価値観が暗黙のうちに都会のほうを向いているんですね。だから親が気をつけて外に連れ出さなければいけないんです。
竹内
本当ですね。尾瀬などは2000メートル級の山岳地帯でありながら、初心者でも行きやすいですから、お子さんを連れてきて、自然を体験してもらえるといいと思っているんですが…
養老
昔は自然の中に入っていくことに必然性があったんですよ。今はそれが目的になってしまい、生活から切れちゃっているんです。教育のためにわさわざ行くとなるとなんかウソ臭くてね。僕は、東南アジアの田舎に子供を1、2年放り込んじゃえば良いと思う。
竹内
とはいえそれも難しいでしょうから、2、3日でも尾瀬に来ていただく、そんなことでも役に立つと思っていいんでしょうか?
養老
そりゃそうですよ。外に出るということは、五感を刺激されているということなんです。1時間外にいたら、お日さまの位置も風の吹き方も、すべてが微妙に変化してきます。そういうのを感じ取る能力、感性は外に出なきゃ磨かれません。人間の本来の能力ってすごいんですよ。文明が人間をバカにしているだけです。例えばブータンの人は真っ暗な夜でもちゃんと歩く。僕は子供を相手にするときはただ一緒に歩くだけで、何も教えません。
竹内
なるほど。「環境教育」なんて難しいことではなく、尾瀬に来て自然に囲まれて座っているだけでいいんですね。尾瀬に来た子供たちに「楽しかった」と言ってもらうと喜びも格別です。そういうお手伝いを少しでもできたら、尾瀬の価値をより生かすことになるのかもしれませんね。

尾瀬に来て、「自然に生かされている」と感謝する気持ちを思い出してほしいですね。

萩原始 3代目富士見小屋主。

関野吉晴さんに文化人類学と大自然についてお話いただく

関野吉晴 武蔵野美術大学教授。

岩崎元朗さんに尾瀬の本当の魅力について聞く

岩崎元朗 登山インストラクター。

夢見る力 楽しむ力

三浦雄一郎 プロスキーヤー。

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