資料館

それぞれのフィールドにおいて、自然との共生や環境保護活動などに精力的に取り組んでいらっしゃるオピニオンリーダーの方々との対談内容をご紹介いたします。

野口健さんのライフワーク 富士山清掃活動の現場で~環境問題は現場から-考え込むより行動しよう!~

<アルピニスト>野口健(のぐちけん)×<東京電力・永年尾瀬保護活動担当>竹内純子(たけうちすみこ)

昨年は第1回アジア・太平洋水サミットの運営委員として活躍し、今年の北海道洞爺湖サミットにも積極的に働きかけるなど、いまや環境問題のオピニオンリーダーとして揺るぎない存在となった野口健さん。対談という形でお話を伺うのは2回目ですが、さらに活動の幅を広げた野口さんに、これまでの苦労や今伝えたいことをうかがいました。

<アルピニスト>野口健(のぐちけん)

<アルピニスト>野口健(のぐちけん)

1973年、アメリカ・ボストン生まれ。アルピニスト。25歳のときに7大陸最高峰世界最年少登頂記録を樹立。現在は、2000年より始めたエベレストや富士山でのゴミ拾いを柱として、小中学生を主な対象とした「野口健・環境学校」の運営、地球温暖化による氷河の融解防止活動など、積極的に環境問題に取り組んでいる。

尾瀬に学んだこと

樹海でのゴミ拾いを終えて。10年前とは比較にならないほど富士山はきれいになった
竹内
野口さんに尾瀬の保護活動を実際に見ていただいたのが3年前で、その翌年、一緒に尾瀬自然学校をやったんですよね。
野口
尾瀬は、地元の県や市町村、地主である東電さんが、尾瀬保護財団を立ち上げてうまく連携しているじゃないですか。初めて行ったとき、それが一番印象的だったんですよ。同じ国立公園特別保護地区ですが、富士山はなかなかこういう協調体制が整わなかったから。
竹内
尾瀬でできるのだから、富士山でもできるはずだとおっしゃってましたよね。
野口
でも尾瀬はレベル高いですよ。環境対策、例えばゴミの全量区域外搬出もコストがかかって大変でしょうが、山小屋の方は「尾瀬を残していくためには今が踏ん張りどころだから」って。酔っぱらってたのにそう言ったから本心だよね(笑)
竹内
彼らは尾瀬に惚れていて、尾瀬がなくなったら経済的にも干上がるけど、心も干上がってしまうということをわかっているんですよね。
野口
もうひとつ嬉しかったのは、山小屋が若い人に引き継がれていることです。あとはもうちょっと若い人が来るようになるといいですね。
竹内
最近は若い人も増えてきましたよ。また、群馬県が今年から「群馬県内の小中学生は学童の間に必ず1回は尾瀬に行くようにしよう」という取り組みを始めたんです。子供たちが郷土の誇りを知るという点でもすごく良いことだなあと思います。

大事なのは“現場感覚”

今回は152名のボランティアが参加
ゴミ拾いは体力勝負!
竹内
洞爺湖サミットの時点でも訴えておられましたが、「ヒマラヤの氷河湖が決壊したら大変なことになる」ということを以前からおっしゃっていますね。
野口
南極や北極に比べて、ヒマラヤの氷河が融ける問題はなかなか認知されていなかったんです。サミットでこの問題を伝えられたのはそれなりに効果があったと思います。
竹内
まず問題を認識しないと、アクションは起こりえませんものね。
野口
ただ、知識として知るのと、実際にそこに行って知るのとでは大きなギャップがあります。ヒマラヤの氷河が融けて氷河湖が決壊したら、下にある村の人たちが万単位で死ぬわけです。現場へ行くと、彼らの恐怖や危機感を身近に感じることができ、そこから「やらなきゃ」っていうところにつながっていくんです。だから環境問題って現場が大事ですよね。
竹内
心の痛みや動きが、身体を動かしますからね。現場にどれだけ足を運んだかで、モチベーションの強さも、思いつく対策案の数も変わります。
野口
ところが、あんまり現場に来ない人が頭で考えると“環境原理主義”になってしまう。例えば富士山や尾瀬を入山禁止にしたらたしかに汚れませんが、人間と自然との接点が絶たれちゃいますよね。それが長期的に見てどうか。だから自然を楽しみながらどう守っていくかを“現場”で考える方が良いと思いますね。

考え込まず、まず行動を

東京電力卒業後、NPO法人富士山クラブで活躍する鈴木さんを囲んで
昨年東京電力の尾瀬戸倉山林植林ボランティアに参加した方と
竹内
ここ10年で自然保護や環境問題への意識が高まりました。“伝える”ことを大切にしてきた野口さんの貢献は大きいと私は思っているんです。
野口
最初は富士山の清掃活動だって全然関心を持ってもらえなかった。でも言い続け、やり続けるとだんだん広がってくるんですよね。
竹内
有言実行ですね。この前ある高校で講演した時、「どうしたらエコの活動にみんなの賛同を得られる?」という質問を受けたので、以前野口さんが言った「自分たちが活動を楽しんで、かつ格好よくやっていれば、自然と真似されるようになる」という言葉をそのまま伝えたんです。野口さんに「だから俺たちは格好良く楽しもう。竹ちゃんは、おしゃれな尾瀬保護活動担当になれ」って言われた時は、「難しい宿題をもらっちゃったなぁ」と思いましたよ(笑)。でもその通りで、楽しんでいる姿、我慢だけじゃなく格好良さがあるってことを伝えたいと思っています。
野口
だから髪も伸ばしておしゃれにしてるのね。エライエライ(笑)。環境問題は人間社会の問題。だからカギは、人から人にどう伝えるかってことです。伝える人には責任があるしね。
竹内
ところで今いちばん伝えたいことは?
野口
流行語大賞になった「関係ない」という言葉、あれは好きじゃない。誰もが地域や周囲の人々に関わって生活しているわけで、その中で何ができるのかを考えてもらいたいですね。結局みんなでどんな社会をつくっていくのか、ということなんですから。
竹内
今はあまりに人が多すぎて、自分が社会の一員であり、それを変える力もあるという認識が持てないのかな。
野口
ゴミ拾いもそうですけど、アクションをおこしたぶん変化があって、そこにやりがいなり喜びなりを感じられますよね。だから、頭で考えないでまず行動。やってみてダメだったらまた考えればいいんですよ。
竹内
現場に来たら勝手に身体が動きますものね。
野口
そうそう、だから今度はエベレストの清掃も手伝ってね(笑)

2008年9月13日更新

C.W.ニコルさんが癒されながら育ててきた森で

C.W.ニコル 作家。

2008年6月11日更新

益戸育江さんに育江流ネイチャーライフを聞く

益戸育江 女優。

尾瀬の生き証人が、故郷の子供たちに託す想いく

松浦和男 片品山岳ガイド協会会長。

畠山重篤さんと「漁師山に木を植える」の理由を聞く

畠山重篤 養殖業。

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