世界のTEPCOへ!東南アジアで次世代型電力網の確立に挑む

2020/10/21

世界のTEPCOへ!東南アジアで次世代型電力網の確立に挑む

東京電力パワーグリッド株式会社、中部電力株式会社および株式会社ICMG Partnersがシンガポールを拠点に設立した合弁会社、GREENWAY GRID GLOBAL社。同社は2019年よりフィリピンのマイクログリッド事業に参画し、パラワン島の未電化地域で太陽光発電と蓄電池による発電~送配電施設の建設・運転・保守に携わっています。このプロジェクトにチャレンジしている社員に、海外で感じた苦労や、本プロジェクトにかける思いを聞きました。

GREENWAY GRID GLOBAL PTE. LTD.
取締役

沼尻 剛

2004年、東京電力に入社。変電保守、広報担当、経営企画などを経験後、2018年、GREENWAY GRID GLOBAL社設立と同時に同社取締役。シンガポールを拠点に、東南アジア各国の電化や新技術導入プロジェクトを進める。

沼尻 剛

※シンガポール在住のため、インタビューはオンラインで実施

東京電力パワーグリッド株式会社
海外事業推進室 海外システム輸出グループ

田中 憲也

2008年入社。設備設計や工事監理、地中化推進などを担当後、2019年より海外事業推進室。GREENWAY GRID GLOBAL社が東南アジア各国で展開するマイクログリッド事業に、東京電力パワーグリッド株式会社の社員5名とともに参画。

田中 憲也

新たな世界を創り出すGREENWAY GRID GLOBAL社

沼尻「日本の人口は減少を続け、電力需要もそれに伴って縮小が予想されています。また、電力自由化によって、太陽光発電や蓄電池など、電力会社以外の企業が電力事業に参入しています。そんな時代において、10年、20年先のTEPCOに必要なものは、新技術導入による次世代型の電力網の確立だと考えています。

しかし、日本国内で電気という大切なインフラに新技術を導入するには規制が多く、導入までに時間がかかります。そこで、未電化地域が多く、人口増加による電力需要の高まりも期待できる東南アジアに新技術を導入し、将来的にその技術を日本にも導入しようと考えました。リバースイノベーションとも呼ばれる考え方ですが、その考えのもと、新たな世界を創り出すためにシンガポールに設立されたのがGREENWAY GRID GLOBAL社(以下、GGG社)です」

GREENWAY GRID GLOBAL社

GREENWAY GRID GLOBAL社ウェブサイト
https://www.greenwaygrid.global/ja/

現地を訪れて決意「ここに電気を届ける」

沼尻「私たちがフィリピンでのマイクログリッド事業に参画した理由は、一言で言えば、電気が無い現地を見て『ここに電気を届け、住民をもっと幸せにしたい』と思ったからです。

東南アジアの中でも、フィリピンは島が多く、大規模な送配電施設を造ることは難しいため、未電化の地域が各地にあります。環境負荷が高く燃料コストも高いディーゼル発電機に頼っても、1日3~4時間しか電気を使えないという地域もあります。漁村なのに村に冷蔵庫が1台もなく、漁獲物がすぐに傷んでしまう現地の状況を見て、私は『TEPCOの送配電の技術があれば、住民の皆さまを助けられる』と考えました。そこで、供給コストと安定供給を考え、太陽光発電・蓄電池・ディーゼル発電機をミックスしたマイクログリッドを選択しました」

田中「私たちが事業を展開したのは、フィリピンの首都マニラから南西に数百キロ離れたパラワン島のサバンという場所です。700世帯ほどが住む漁師町で、リゾートホテルもある観光地でもあります。私は東南アジアに行くのは初めてでしたが、南国の楽園のような風景に心を打たれました。一方で、一般の住民の皆さまに十分に電気が行き渡っておらず、リゾートホテルであっても自家用ディーゼル発電機で電気をまかなっている状態をなんとかしたいと思いました」

現地を訪れて決意「ここに電気を届ける」1

現地を訪れて決意「ここに電気を届ける」2

現地を訪れて決意「ここに電気を届ける」3

社内では学べない、異文化ならではのビジネスノウハウを体当たりで吸収

沼尻「プロジェクトはフィリピンやシンガポールの会社と協働していますが、異なる会社、異なる文化の人が集まってビジネスを進めると、考え方の違いを痛感することが多くあります。

例えば日本でプロジェクトを進めるときは、初期費用と維持費用を含め数年~10年のコストをトータルで考えるのが一般的で、『初期費用が高くついても、10年間の費用がトータルで安いプランを選ぶ』という選択をすることがよくあります。しかし、アジアでは初期費用が大切で、中国や東南アジアで作られた製品の品質も上がってきており、その後のコストのことより、初期費用を抑える選択をします。このような考え方の違いで、議論になることは少なくありませんでした。

社内では学べない、異文化ならではのビジネスノウハウを体当たりで吸収

議論になった際も、日本のようにお互いが歩み寄るというよりは自分たちの主張を通そうとすることが多く、互いに譲らず対立することもありました。しかし、そうした議論がむしろ世界ではスタンダードだと学んだのはいい経験でした。“正しいと思ったことは譲らないこと”、“交渉や説得で相手をリードする力”など、海外でのビジネスでは不可欠な力を身に付けました」

田中「私はこのプロジェクトに参加するまで、技術系社員として送配電の知識や技能を磨いていました。しかし、マイクログリッド事業は発電-送電-変電-配電のみならず、事業遂行に必要な資金調達の手法まで学ぶことができました。普段取り扱うkWhの背景に、どんな資金の流れがあるのかわかるようになり、大変勉強になりました」

沼尻「田中さんが経験した通り、マイクログリッド事業には発電から配電まで全ての工程における知識や技術が必要です。GGG社の事業の現場にTEPCOの社員が関わることで、部門の垣根のない技術を学べるのはTEPCOの将来を考える上でもメリットだと思います」

サバンに建設された太陽光

サバンに建設された太陽光1.4MWp、ディーゼル発電1.2MW、蓄電池2.3MWhからなるハイブリッド発電所

電力網モデルを確立し、世界のTEPCOへ

田中「電気は通して終わりではなく、これからは安定して電気を供給することで信頼度を上げていくことが課題となります。さらに、それを低コストで実現しなければならないのが難しいところです。課題をクリアして、フィリピンに限らず他の国でも通用する分散型電源のモデルを確立していきたいです。
今はコロナ禍の影響で現地に行くことが難しく、設備の様子を直に見られないのが歯がゆく感じることもあります。しかし、『現地に行けない』ということを逆手に取り、設備の遠隔監視制御技術の導入も検討していくつもりです」

電力網モデルを確立し、世界のTEPCOへ

沼尻「GGG社は『世界の人々を幸せにする』ことをビジョンとして掲げています。その言葉どおり、次世代型の電力網を確立することで、世界にエネルギーを届け、世界中の人を幸せにしたいです。フィリピンでのプロジェクトが、そのモデルケースとなればうれしいです。

また、こうした取り組みを通じて、『TEPCOは東京だけでなく、世界で活躍する会社だ』と胸を張れるようにもなりたいですね。さまざまな力を持つ仲間と協力しながら、道を切り開いていくつもりです」

現地企業の皆さんと

現地企業の皆さんと

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